46 / 122
妹は出陣したい
しおりを挟む
「とりあえず面倒なのでカーニャは送り返してはいかがでしょうか。
私はあの娘に執着はございません」
俺はダメ元で父上へ進言してみる。
カーニャを送り返し、ヴォワザン子爵家は喜ぶ。
エテピシェ伯爵家も息子の婚約者が帰って来て喜ぶ。
俺も面倒な奴が帰ってくれて喜ぶ。
皆が嬉しい。
「そうもいかんのだ、向こうが攻めて来たのにすんなり捕虜を返してやる訳にはいかん。
お母様の面子に関わる。
当家として、あの娘を手元に置いておく必要があろうがなかろうが、簡単に返してやる事は出来ない」
ですよねー、知ってた。
ホント貴族の面子って面倒。
女性優位社会だから面子だとか対面だとかプライドとかあんまり意識しないのかと思いきや、内政や外交は主に男性が主に携わってるもんだから普通にある。
「そしてもう一通のこの書状。
これのせいで母様だけでなくお前の面子にも影響が出て来る。
もはやあの娘を返してやるという選択肢はほぼない」
誰かの手によってクシャクシャにされた書状。
先の二通は特使を遣わしたエテピシェ伯爵家以外からの書状だ。
となると、最後の一通はエテピシェ伯爵からの追加の書状と考えるのが自然だろう。
「これはあの娘の婚約者からの書状だ。
読んでみなさい」
「読む必要などございませんわ!
お母様、私が皆殺しにして参ります。
お兄様はこの屋敷で私の帰りを待っていて下されば良いのですわ。
さぁ、ご許可を!!」
クシャクシャにしたであろう犯人、エティーがその書状をさらにクシャクシャに掴んで立ち上がり、母上に出陣の許可を求める。
そんな事をされると逆に読みたくなるじゃないか。
「なりません。
すでにアヴィを先行させたのです。
あなたまで行く必要はありません。
まずはアルティが現状を正確に把握する事が最優先。
お父様のお考えに従いなさい」
次期当主である姉上がこの場にいないのは、先に軍を率いてエテピシェ伯爵軍、いやユニオーヌ連合軍として来るかもしれない先方を牽制する為か。
父上が次にどう動くおつもりなのか、あの書状を読めば分かるのだろうか。
ポーシェがいない状況で、俺がどこまで父上のお考えを理解出来るかどうか分からないが、読んでみない事には判断しようがない。
「エティー、貸してくれるかな」
「ですが……」
「いいから」
エティーに向けて手を差し出すと、嫌々ながらも渡してくれた。
さて、何が書いてあるというのか。
書かれている貴族言葉の真意を間違えないようしっかりと読み解かないと。
私はあの娘に執着はございません」
俺はダメ元で父上へ進言してみる。
カーニャを送り返し、ヴォワザン子爵家は喜ぶ。
エテピシェ伯爵家も息子の婚約者が帰って来て喜ぶ。
俺も面倒な奴が帰ってくれて喜ぶ。
皆が嬉しい。
「そうもいかんのだ、向こうが攻めて来たのにすんなり捕虜を返してやる訳にはいかん。
お母様の面子に関わる。
当家として、あの娘を手元に置いておく必要があろうがなかろうが、簡単に返してやる事は出来ない」
ですよねー、知ってた。
ホント貴族の面子って面倒。
女性優位社会だから面子だとか対面だとかプライドとかあんまり意識しないのかと思いきや、内政や外交は主に男性が主に携わってるもんだから普通にある。
「そしてもう一通のこの書状。
これのせいで母様だけでなくお前の面子にも影響が出て来る。
もはやあの娘を返してやるという選択肢はほぼない」
誰かの手によってクシャクシャにされた書状。
先の二通は特使を遣わしたエテピシェ伯爵家以外からの書状だ。
となると、最後の一通はエテピシェ伯爵からの追加の書状と考えるのが自然だろう。
「これはあの娘の婚約者からの書状だ。
読んでみなさい」
「読む必要などございませんわ!
お母様、私が皆殺しにして参ります。
お兄様はこの屋敷で私の帰りを待っていて下されば良いのですわ。
さぁ、ご許可を!!」
クシャクシャにしたであろう犯人、エティーがその書状をさらにクシャクシャに掴んで立ち上がり、母上に出陣の許可を求める。
そんな事をされると逆に読みたくなるじゃないか。
「なりません。
すでにアヴィを先行させたのです。
あなたまで行く必要はありません。
まずはアルティが現状を正確に把握する事が最優先。
お父様のお考えに従いなさい」
次期当主である姉上がこの場にいないのは、先に軍を率いてエテピシェ伯爵軍、いやユニオーヌ連合軍として来るかもしれない先方を牽制する為か。
父上が次にどう動くおつもりなのか、あの書状を読めば分かるのだろうか。
ポーシェがいない状況で、俺がどこまで父上のお考えを理解出来るかどうか分からないが、読んでみない事には判断しようがない。
「エティー、貸してくれるかな」
「ですが……」
「いいから」
エティーに向けて手を差し出すと、嫌々ながらも渡してくれた。
さて、何が書いてあるというのか。
書かれている貴族言葉の真意を間違えないようしっかりと読み解かないと。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる