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父上は懐かしむ
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朝食後、父上の書斎で再度詳しい打ち合わせをする事になった。
昨日はとりあえず俺がカーニャと会う事に対する拒否感を持っていないかの確認だったのだろう。
そして、俺が特に嫌がっているようではないと確信し、姉夫婦からの報告も受けて、俺とカーニャを会わせても問題ないだろうと父上は予想した訳だ。
その上で今、具体的にカーニャと会う際の注意点を聞かされている。
ちなみにポーシェはまた外してもらっている。
「収容所全体が魔力の強い貴族を捕らえておく為、堅牢に出来ている。
通常、強力な魔法でも崩壊する事はない」
強力な魔法で崩壊、何か聞いた事があるな。
「ちなみにアルティの私室は全体的にその収容所と同じく堅牢な作りになっている」
何それ怖い、初めて聞いた。
「まだお前が生まれて間もない頃、オムツが気持ち悪いと泣いた時の事だ」
何か昔話が始まったぞ?
父上が懐かしそうな表情を浮かべている。
「大きな声で泣いたんだ。
もうそれはそれは大人顔負けの大絶叫だった。
お母様が何事かとお前を抱き上げると、聞いた事もないような泣き声を上げ、そしてお前の部屋が吹き飛んだ」
聞いた事もないような泣き声?
あぁ、あの時は確か日本語で叫んだような気がする。
もちろん赤ん坊だから言葉にはなっていなかったと思うけど。
「生まれながらに才能の片鱗を見せる赤ん坊は少なくない。
魔法の素質、魔力量の多さ。
教育や訓練で伸ばしてやる事は出来るが、持って生まれた者には敵わない。
問題は例え女の子であったとしても、生まれてすぐに部屋を吹き飛ばすほどの魔法を使う赤ん坊など聞いた事がないという点だ」
腕を組み、俺を見つめる父上。
俺にそんな事を言われても困るんだけど。
もしかしてお前、前世の記憶でもあるんじゃね? って聞かれたら何と答えようか。
「その日からお前の育て方を変えた。
男の子は乳母を雇って育てさせる事が多いが、上の二人と同じく直接お母様が母乳を与え、私達の寝室で寝かせるようにした」
乳母か、この世界でもいるのね。
男兄弟がいないから、他の男がどのような育て方をされているのか気にもしていなかった。
「……貴族の寝室、特に夫婦が共にする寝室は魔法に耐えるような素材と作りになっている。
理由は分かるか?」
理由、つまり俺が一番恐れているあれか。
性的興奮による感情の増幅で、魔力が制御出来なくなるのではないか。
もし魔法を暴発させてしまったとしたら、また赤ん坊だったあの時のように部屋が吹き飛ぶんじゃないかという恐怖。
それを防ぐ為に貴族の寝室は堅牢な作りにしてある、という事だろうか。
「もし感情が昂ぶり、魔力が抑え切れなくなったとしても、部屋が吹き飛ばないようになっているという事でしょうか」
昨日はとりあえず俺がカーニャと会う事に対する拒否感を持っていないかの確認だったのだろう。
そして、俺が特に嫌がっているようではないと確信し、姉夫婦からの報告も受けて、俺とカーニャを会わせても問題ないだろうと父上は予想した訳だ。
その上で今、具体的にカーニャと会う際の注意点を聞かされている。
ちなみにポーシェはまた外してもらっている。
「収容所全体が魔力の強い貴族を捕らえておく為、堅牢に出来ている。
通常、強力な魔法でも崩壊する事はない」
強力な魔法で崩壊、何か聞いた事があるな。
「ちなみにアルティの私室は全体的にその収容所と同じく堅牢な作りになっている」
何それ怖い、初めて聞いた。
「まだお前が生まれて間もない頃、オムツが気持ち悪いと泣いた時の事だ」
何か昔話が始まったぞ?
父上が懐かしそうな表情を浮かべている。
「大きな声で泣いたんだ。
もうそれはそれは大人顔負けの大絶叫だった。
お母様が何事かとお前を抱き上げると、聞いた事もないような泣き声を上げ、そしてお前の部屋が吹き飛んだ」
聞いた事もないような泣き声?
あぁ、あの時は確か日本語で叫んだような気がする。
もちろん赤ん坊だから言葉にはなっていなかったと思うけど。
「生まれながらに才能の片鱗を見せる赤ん坊は少なくない。
魔法の素質、魔力量の多さ。
教育や訓練で伸ばしてやる事は出来るが、持って生まれた者には敵わない。
問題は例え女の子であったとしても、生まれてすぐに部屋を吹き飛ばすほどの魔法を使う赤ん坊など聞いた事がないという点だ」
腕を組み、俺を見つめる父上。
俺にそんな事を言われても困るんだけど。
もしかしてお前、前世の記憶でもあるんじゃね? って聞かれたら何と答えようか。
「その日からお前の育て方を変えた。
男の子は乳母を雇って育てさせる事が多いが、上の二人と同じく直接お母様が母乳を与え、私達の寝室で寝かせるようにした」
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「……貴族の寝室、特に夫婦が共にする寝室は魔法に耐えるような素材と作りになっている。
理由は分かるか?」
理由、つまり俺が一番恐れているあれか。
性的興奮による感情の増幅で、魔力が制御出来なくなるのではないか。
もし魔法を暴発させてしまったとしたら、また赤ん坊だったあの時のように部屋が吹き飛ぶんじゃないかという恐怖。
それを防ぐ為に貴族の寝室は堅牢な作りにしてある、という事だろうか。
「もし感情が昂ぶり、魔力が抑え切れなくなったとしても、部屋が吹き飛ばないようになっているという事でしょうか」
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