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お坊ちゃまの心配事

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 カーニャを返さないと連合全体と戦争、という事か。

「それはまた物騒ですね」

 エテピシェ伯爵家があの娘を返してほしいのなら、直接うちに言って来る前にヴォワザン子爵家へ協力するなり圧力を掛けるなりするのが先だろう。
 うちとヴォワザン子爵家との協議で金なり土地の分割なり、敗戦後の交渉をするのが普通だと思うが。
 特使が捕虜に拘っているのを見抜いた父上から強気な条件を突き付けられて、逆上したのか?

「いや、うちとしてはすぐに返してもいいんだけどね……」

 義兄上が苦笑を浮かべる。
 義兄上も一般的な貴族と同じく髪の毛を伸ばしている。
 湯船に髪の浸からないようタオルで巻いているから、パッと見は幸薄そうな女性に見えなくもない。

「お母様とお父様はどう仰っているのですか?」

 父上は俺に初体験の相手としてカーニャはどうだと提案して来たが、それはあくまで俺が望めばという前提がある。
 外交上の戦略としては、すぐに返しても特に問題のない存在だ。
 もちろん面子的にすんなり返すのはよろしくないのだろけど。

「お義母様はお義父様に一任すると仰っていてね。
 ……お義父様からお話はあったよね?」

「ええ、好きにして良いと言われました」

 昼寝した後、目を覚ましながら少し考えたが、カーニャに手を出すのは少し怖い。
 前世・今世を含めて初めて誰かと致すという事に対して及び腰になっているのもあるが、それとはまた少し違った悩みというか、不安があるのだ。

 俺、ベッドの上でも感情を制御し切れるかどうか、不安なんだよな……。
 あぁいうのってさ、無言で無表情無感動にするもんじゃないじゃん?
 やった事ないから分からないんだけど。

 激しく求めるが故に、魔力が暴走して部屋が吹き飛んだりしないか?
 赤ん坊の時のように、大変な事になったりしないだろうか。
 それだけが本当に不安だ。
 普段からあまり股間が存在感を主張しないので、いざと言う時にどんなパッションがほとばしるのかが想像出来ないでいる。

 いや、もちろん今後の人生においては避けて通れない事ではあるんだけど。
 だから、悪い言い方ではあるが今のうちにカーニャで予行演習しろ、という事なんだけど……。

 この世界の男性はどういった性生活を送っているのだろうか。
 両親はもちろん姉達にも家庭教師にも王立学院の教師にも教わらなかった。
 男友達でさえ話題に挙げない。

 だからこそ余計にとても繊細な問題なのだろうと思って誰にも聞けないでいる。
 まさかポーシェに聞く訳にもいかないしな。

 ポーシェに聞いたとして、真面目に答えてくれるだろうか。
 ……いや止めておこう。
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