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妹の愛が重たい
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大急ぎで屋敷に戻り、母上へ帰還の挨拶をしようとすると父上にいいから早くエティーのところへ行けと怒鳴られた。
テラスで仁王立ちしているエティーを発見。
母上譲りの真っ赤な髪の毛が風になびいてメラメラと燃えているようだ。
おー怖い怖い。
ツンとすました顔のまま、両手を俺へ突き出すエティー。
俺にお姫様抱っこをせがむ時によくやるのだが、決まって素直に甘えられない時にやる。
怒っている、けれど甘えたい。
そういう時に無言で俺に両手を差し出すのだ。
「ただいま、お姫様」
お兄ちゃん歴十三年である俺の、妹と接する時の秘訣。
不用意にゴメンなどと謝ってはならない!!
あくまで堂々と、そして自然に、エティーを抱き上げなければならないのである。
「その前に私に言わなければならない事があるのではなくって?」
「ごめんなさい遅くなりました!!」
……というやり取りの後、家族用の居間にあるソファーに移動し、鎧を外した後からずーっとお姫様抱っこのままの体勢で座っている。
かれこれ一時間ほど経ったのだが、未だ開放してもらえない。
今回の戦へ向かう際、付いて行きたいと言うエティーを説得して置いて出て行ったのだ。
父上の仰る通りに真っ直ぐに屋敷に戻るべきだったのだ。
後で父上に謝っておこう。
「本当に、本当に怪我がなくって良かったですわ」
機嫌はまだよろしくないが、エティーはずっと俺に癒やしの魔法を掛けてくれている。
気分を落ち着ける効果があり、ちょっとした体調不良であれば治る程度の魔法。
「姉様やエティーが任されるような大きな戦じゃなかったから平気だよ」
そう言ってエティーの頭を優しく撫でる。
「えへへ、お兄様の手……。
コホン、そんなことで私は絆されませんわよ!」
簡単に許してはくれないらしい。
夕食の時にデザートを分けてやるか、それともお休みのハグをしてやるか。
迷うところだ。
兄の俺よりも、妹のエティーの方が初陣は早かった。
いや、男である俺が戦場に立つ方が珍しいんだけど。
うちは王国でも端っこ、国境を治めている。
ユニオーヌ連合は小さな領地を持つ領主達の集まりで出来た寄せ集めの国であり、うちの領地と隣接している貴族家が複数ある。
その中でも特に小さい相手が今回ちょっかいをかけて来たヴォワザン子爵家だ。
あそこが相手なら俺の出陣を認めると母上からの許しが出たんだけど、エティーは自分が護衛として付いて行くとうるさかった。
俺が信じられないのか、負けると思っているのか、そんな頼りない兄なのか俺は、自分一人でどこまでやれるか試してみたいんだ、などなど思い付く限りの言葉を並べて説得した訳だ。
俺の実力を疑っている訳ではなく、純粋の俺の身を案じてくれていた訳だから、素直に感謝しておこう。
「もう二度とお兄様が戦場に立たなくてもいいようにしないと。
私がユニオーヌの田舎者共を根絶やしにして差し上げますわ!」
ハハハ、はぁ……。
妹の愛が重たい。
テラスで仁王立ちしているエティーを発見。
母上譲りの真っ赤な髪の毛が風になびいてメラメラと燃えているようだ。
おー怖い怖い。
ツンとすました顔のまま、両手を俺へ突き出すエティー。
俺にお姫様抱っこをせがむ時によくやるのだが、決まって素直に甘えられない時にやる。
怒っている、けれど甘えたい。
そういう時に無言で俺に両手を差し出すのだ。
「ただいま、お姫様」
お兄ちゃん歴十三年である俺の、妹と接する時の秘訣。
不用意にゴメンなどと謝ってはならない!!
あくまで堂々と、そして自然に、エティーを抱き上げなければならないのである。
「その前に私に言わなければならない事があるのではなくって?」
「ごめんなさい遅くなりました!!」
……というやり取りの後、家族用の居間にあるソファーに移動し、鎧を外した後からずーっとお姫様抱っこのままの体勢で座っている。
かれこれ一時間ほど経ったのだが、未だ開放してもらえない。
今回の戦へ向かう際、付いて行きたいと言うエティーを説得して置いて出て行ったのだ。
父上の仰る通りに真っ直ぐに屋敷に戻るべきだったのだ。
後で父上に謝っておこう。
「本当に、本当に怪我がなくって良かったですわ」
機嫌はまだよろしくないが、エティーはずっと俺に癒やしの魔法を掛けてくれている。
気分を落ち着ける効果があり、ちょっとした体調不良であれば治る程度の魔法。
「姉様やエティーが任されるような大きな戦じゃなかったから平気だよ」
そう言ってエティーの頭を優しく撫でる。
「えへへ、お兄様の手……。
コホン、そんなことで私は絆されませんわよ!」
簡単に許してはくれないらしい。
夕食の時にデザートを分けてやるか、それともお休みのハグをしてやるか。
迷うところだ。
兄の俺よりも、妹のエティーの方が初陣は早かった。
いや、男である俺が戦場に立つ方が珍しいんだけど。
うちは王国でも端っこ、国境を治めている。
ユニオーヌ連合は小さな領地を持つ領主達の集まりで出来た寄せ集めの国であり、うちの領地と隣接している貴族家が複数ある。
その中でも特に小さい相手が今回ちょっかいをかけて来たヴォワザン子爵家だ。
あそこが相手なら俺の出陣を認めると母上からの許しが出たんだけど、エティーは自分が護衛として付いて行くとうるさかった。
俺が信じられないのか、負けると思っているのか、そんな頼りない兄なのか俺は、自分一人でどこまでやれるか試してみたいんだ、などなど思い付く限りの言葉を並べて説得した訳だ。
俺の実力を疑っている訳ではなく、純粋の俺の身を案じてくれていた訳だから、素直に感謝しておこう。
「もう二度とお兄様が戦場に立たなくてもいいようにしないと。
私がユニオーヌの田舎者共を根絶やしにして差し上げますわ!」
ハハハ、はぁ……。
妹の愛が重たい。
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