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Main story
窓から入ってくるのは幼馴染みだけではない
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夕食が終わり、俺はいつも通り食器を洗う。
美紀は気を遣って自分が洗うと申し出てくれたが、あくまでこれは俺の仕事。
家には家のルールがあり、郷に入っては郷に従えという言葉をもって申し出を受け流し、伊千香と羽那子に連れられて羽那子の家へ向かった。
羽那子はお風呂を覗きに来ていいよ、と言っていたが、バカじゃないのという伊千香の冷たいツッコミで流されていた。
そして父さんと母さんは仲良く二人でうちの風呂に入っている。伊千香が羽那子にツッコミを入れた後に堂々と混浴出来るのだから、うちの両親も割と図太いんだなと思った。
まぁ、両親の仲が良いのは良い事なんだけど……、正直複雑な気分ではある。
食器を洗い終え、一人で部屋に戻る。
羽那子と美紀用にミニテーブルの用意をした後、学習机に向かって一人で勉強を始める。
三人で入っているのだから、風呂から帰って来るのは時間が掛かるだろう。
今日はこの部屋で勉強会をするのはいいが、明日の朝も美紀はここで勉強をするつもりだろうか。
よく考えるとそのあたりを詰めていなかった。
いや、俺が主催した訳ではなく、羽那子がノリで美紀を呼んだだけであり、そこまできっちりとした会ではないから何となくのスケジュールで構わないんだけども。
そんな事を考えながら勉強を進めていると、窓が開く音がした。
また羽那子か、と相手にしないでいると、後ろから目隠しされた。
「だーれだ」
声は伊千香。しかし複数の気配が窓を乗り越えたのを俺は知っている。
そう、羽那子だけでなく伊千香も美紀も窓越しに俺の部屋に入って来たのだ。
羽那子か美紀か伊千香。声を掛けたのが伊千香だから伊千香ではないか?
しかし羽那子の企みに今の伊千香が協力するだろうか。
となるとこの手は美紀か。いや、それとも声も手も伊千香という線もなくはないか。
いやいや、羽那子が俺の後ろで何かやろうとしたのを制して、伊千香が俺の目を隠したという可能性は?
それはさすがに、むしろこういう場合は、しかしそれはないだろう、はたまた……。
「いや考え過ぎやろ!」
答えないでいると、美紀からツッコミが飛んで来た。
目隠ししていた手が離れ、後ろを振り向くと湯上がりで火照った顔の美紀がいた。
いつもはふわふわのショートカットが濡れ、ぺったんこになっている。
「な、何やさ。そんなじっと見んといてや……」
同じく髪の毛が濡れた羽那子と伊千香。何でドライヤーで乾かしてから戻って来なかったのか。
Tシャツの上からパーカーを羽織り、下は七分丈のジャージ姿。
そう言えば風呂上がりだから……。
「メイクしてなくてもそんなに顔、変わらないんだな」
思わず口に出してしまった。
瞬間、美紀が首に掛けていたタオルで顔を隠して俺から離れた。
「お兄ちゃん、それはないわ……」
何がないのかよく分からん。
「いっくん、あたしのノーメイク何度も見てるよね? あたしは顔が変わるって言いたいのかな?」
いやそんなん言われても知らんし。今、美紀に対してそう思っただけで、羽那子に対して何か言いたい事がある訳でもない。
というか風呂に入ってから勉強をするのであれば、必然的にノーメイクになる、んだろう?
わざわざ風呂上がった後に再度メイクする人も中にはいるのかもしれんが、ノーメイクで俺の前に現れた限りは今さら照れる事ないだろうに。
「あえて言うべき事じゃないって言う事だよ、分かってても触れないのがマナーなの」
妹にマナーを説かれた。もう少し先に言っておいてほしかった。
「とりあえず髪の毛乾かして来たら?」
その後、三人同時にドライヤーで髪の毛を乾かし始めた。
何で俺の部屋でするんだ? めちゃくちゃうるさかった。
美紀は気を遣って自分が洗うと申し出てくれたが、あくまでこれは俺の仕事。
家には家のルールがあり、郷に入っては郷に従えという言葉をもって申し出を受け流し、伊千香と羽那子に連れられて羽那子の家へ向かった。
羽那子はお風呂を覗きに来ていいよ、と言っていたが、バカじゃないのという伊千香の冷たいツッコミで流されていた。
そして父さんと母さんは仲良く二人でうちの風呂に入っている。伊千香が羽那子にツッコミを入れた後に堂々と混浴出来るのだから、うちの両親も割と図太いんだなと思った。
まぁ、両親の仲が良いのは良い事なんだけど……、正直複雑な気分ではある。
食器を洗い終え、一人で部屋に戻る。
羽那子と美紀用にミニテーブルの用意をした後、学習机に向かって一人で勉強を始める。
三人で入っているのだから、風呂から帰って来るのは時間が掛かるだろう。
今日はこの部屋で勉強会をするのはいいが、明日の朝も美紀はここで勉強をするつもりだろうか。
よく考えるとそのあたりを詰めていなかった。
いや、俺が主催した訳ではなく、羽那子がノリで美紀を呼んだだけであり、そこまできっちりとした会ではないから何となくのスケジュールで構わないんだけども。
そんな事を考えながら勉強を進めていると、窓が開く音がした。
また羽那子か、と相手にしないでいると、後ろから目隠しされた。
「だーれだ」
声は伊千香。しかし複数の気配が窓を乗り越えたのを俺は知っている。
そう、羽那子だけでなく伊千香も美紀も窓越しに俺の部屋に入って来たのだ。
羽那子か美紀か伊千香。声を掛けたのが伊千香だから伊千香ではないか?
しかし羽那子の企みに今の伊千香が協力するだろうか。
となるとこの手は美紀か。いや、それとも声も手も伊千香という線もなくはないか。
いやいや、羽那子が俺の後ろで何かやろうとしたのを制して、伊千香が俺の目を隠したという可能性は?
それはさすがに、むしろこういう場合は、しかしそれはないだろう、はたまた……。
「いや考え過ぎやろ!」
答えないでいると、美紀からツッコミが飛んで来た。
目隠ししていた手が離れ、後ろを振り向くと湯上がりで火照った顔の美紀がいた。
いつもはふわふわのショートカットが濡れ、ぺったんこになっている。
「な、何やさ。そんなじっと見んといてや……」
同じく髪の毛が濡れた羽那子と伊千香。何でドライヤーで乾かしてから戻って来なかったのか。
Tシャツの上からパーカーを羽織り、下は七分丈のジャージ姿。
そう言えば風呂上がりだから……。
「メイクしてなくてもそんなに顔、変わらないんだな」
思わず口に出してしまった。
瞬間、美紀が首に掛けていたタオルで顔を隠して俺から離れた。
「お兄ちゃん、それはないわ……」
何がないのかよく分からん。
「いっくん、あたしのノーメイク何度も見てるよね? あたしは顔が変わるって言いたいのかな?」
いやそんなん言われても知らんし。今、美紀に対してそう思っただけで、羽那子に対して何か言いたい事がある訳でもない。
というか風呂に入ってから勉強をするのであれば、必然的にノーメイクになる、んだろう?
わざわざ風呂上がった後に再度メイクする人も中にはいるのかもしれんが、ノーメイクで俺の前に現れた限りは今さら照れる事ないだろうに。
「あえて言うべき事じゃないって言う事だよ、分かってても触れないのがマナーなの」
妹にマナーを説かれた。もう少し先に言っておいてほしかった。
「とりあえず髪の毛乾かして来たら?」
その後、三人同時にドライヤーで髪の毛を乾かし始めた。
何で俺の部屋でするんだ? めちゃくちゃうるさかった。
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