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Main story
有耶無耶うにゃむにゃ
しおりを挟む「一緒のテントで寝るのもアカンて言われたのに同じ浴槽に浸かってるなんてなー。しかも小学生やなくて昨日の話やしなー。世の中不公平やわー」
もういいだろう!? いい加減許してくれ!!
いや許しても何もないはずなんだ。
俺はただ風呂に入ってただけ。あとから羽那子が入って来た。それだけだ。
「うちも鈴井家のお風呂借りに行こかなー」
ぶつぶつぶつぶつ言いながら弁当を食べる美紀。
微妙に声を抑えていて、クラスメイトには聞こえないようにしてくれている事だけが救いだ。
「あ、いいね! お泊りで勉強会する?」
こいつは声を抑えるという気遣いをしないのでひやっとするが、周りの奴らにはただ美紀と羽那子が泊りで勉強会をするらしい、というピンポイントでしか伝わっていないだろうからまぁ良しとしよう。
「ええの? はなちゃんのご両親はお泊りとか許してくれるタイプ?」
「うち? うちは……、どうかな? 伊千子ちゃんならオッケーしてくれると思うけど」
何でナチュラルに俺の家で泊まる事になるんだ。
美紀はちゃんと泊まるなら俺の家じゃなくて藤村家だろうと常識的に考えて話しているというのに。
「あ、伊千子ちゃんっていうのはいっくんのお母さんの事ね!」
「鈴井家でお泊り会!?」
「彼氏の母親を名前呼びって強いな」
「誰か鈴井の家を知ってる奴いるか!?」
「何しに行くんだよ……」
「もちろん一晩中監視するに決まってるだろうが!!」
クラスがざわつきだした。羽那子のせいで全部伝わっている。
民人と林さんは素知らぬ顔で弁当を食べている。
巻き込まれないようにしているが、林さんは状況を楽しんでいるのが表情で分かる。
「うちで泊まりで勉強会なんてしないぞ。各自家でしろ家で!
何なら放課後残ってこの教室でしてもいいんだ、わざわざうちの家でする必要ない!」
この前うちに集まって勉強会を開いたので、今さら各自家でしろと言っても説得力がない。
しかしこの言葉は俺達のやり取りを聞いているクラスメイトに向けて発した言葉なので問題ない。
各自家でするんだな、という事が伝わればそれでいい。
「えっ!? ゴメン、こないだ寄せてもらったん、迷惑やった……?」
俺の意図は美紀に伝わらなかったようだ……。めっちゃ瞳をうるうるさせて今にも泣きそうな表情。
「いや、そういう訳じゃないんだけどな、周りの目があるから、な?」
「そんなのあたし達には分からないよー。本音と建て前だなんて言われても言葉通り受け取っちゃうじゃん」
お前は黙れ! そもそもお前が大声でクラスメイトに聞こえるように言うからだろうが!!
「……じゃあイチローの家で勉強会、またしてもええの?」
「いいよ! いいけどその事を大声で言うなって」
「やった! じゃあ明後日がお休みだから明日の夜にしよう!!」
羽那子が立ち上がってガッツポーズをしながら叫ぶ。
「だから大声で言うなって言ってんだろうが!!」
何なんだこいつ……。俺を困らせるのが一番の目的なんじゃないだろうな!?
「いいなぁお泊り会。私は用事があるから参加出来ないけど。あー残念だなー」
「お、俺もその日は無理だわ。あー残念だなー」
今机の下で林さんが民人の足を蹴ってなかったか?
俺達三人にさせてややこしくなっていくのを楽しもうと思ってないか!?
いや、俺もその日に用事がある事にすればいいんだ!
そうすればうちで開催出来なくなるしな、そうしよう!!
「あ、明日はダメなんだよな。どうしても外せない用事があってな、うん」
「え? どんな用事? いっくん習い事とかしてないよね?
部活も入ってないしこれといった趣味もないし。
何の用事?」
「えっ、と……」
「……もしかして、うちを家に呼ばん為に嘘ついたとか!?」
美紀がわなわなと震え始める。それはオーバーリアクションでは!?
「あーあー、伊千郎君がなーかしたー」
「うわぁ……」
林さんが煽り、民人がこの状況に引いている。
いや引きたいのは俺の方だよ、どうにかしてくれよ……。
あーもう仕方ない!
「分かった分かった! 勉強会はする、泊まるのは羽那子の部屋。おっけー?」
震えていた美紀が一瞬で表情を変えて笑顔になる。
こいつ……、羽那子だけじゃなく美紀まで俺を弄んでやがる!?
「テストは週明けからだからちょうど良いじゃん。私は家でやるけど」
くそ……、今さら二人を巻き込むのは無理か。
いや、余計にややこしそうになるからもういいや。あとはなるようになるだろう……。
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