25 / 72
Main story
雨降ってさらに地固まる
しおりを挟む「そうだね、あたしのワガママみたいなところもあるから、いっちゃんには先に説明しなきゃいけなかったね」
俺視点で考えると、俺と羽那子は幼馴染みではない。ある日突然降って沸いたようなものだ。
でも自分から見れば俺は幼馴染みである事に変わりはない、とは羽那子は考えなかった。
俺と十数年過ごし、二人の距離感がないようであるようで、付き合ってはいるが進展しない。
ならば俺の記憶がなくなってしまったのをきっかけに、新たな信頼関係を築けば良いじゃないか。
生まれた時から一緒だからこれからも一緒に過ごす、という暗黙の了解はなくなった。ならば、一から始めなければならない。
そんなタイミングで美紀が俺達の前に現れた。
これは神様が与えた試練である。美紀に奪われるのであれば、そもそも自分達は運命の赤い糸では結ばれていなかったのだろうと思う。
そんな事を、羽那子は伊千香へつらつらと語った。
「そっか、やっと分かった。はなちゃんの気持ち、分かったよ。
そうだね、もしお兄ちゃんと上手く行かなかったとしても、私とはなちゃんは変わらないんだよね!」
伊千香の中で納得がいったらしい。とても晴れやかな表情をしている。
ところで、俺はここに呼ばれる必要あったんだろうか。
羽那子が伊千香にどういうつもりなのかという思いを伝えればそれで良かったんじゃないのか?
その、運命だとか赤い糸だとか、自分の話として語られると小っ恥ずかしいんだが……。
「それでもね、いっちゃん。あたしはそう簡単にみっきーにいっくんを渡す気はないからね!」
「うんうん、もちろん私ははなちゃんを応援するよ!
何があってもはなちゃんと私の関係が変わらないとはいえ、はなちゃんにはやっぱり今まで通りお兄ちゃんと一緒にいてほしいんだもん!!」
だもんと言われてもね、まぁいいけど。
「その気持ちはすごく嬉しいし、応援してほしいんだけどね、でもみっきーとも仲良くなってくれたら嬉しいんだよ。
実は明日、いっくんの部屋でみんなで勉強会しよって話してて。
みっきーは転校する前の学校でまだ習ってなかった範囲がテストに出るっぽいんだよ」
羽那子はしっかりと自分の思い全てを伊千香へ伝える。伊千香は自分を応援してくれる。それだけではよしとしない。
伊千香にも美紀と仲良くなってほしいという思いをちゃんと伝えている。
「……そうだね、今日はちょっと態度悪かったからちゃんと謝らないとね」
そしてその思いを受け止めて、しかりと反省する伊千香。
なるほど、これが女の子同士の幼馴染みの関係か。
「でもあくまで私ははなちゃんの味方だから。
決めた、私はお兄ちゃんとはなちゃんをもう一度くっつける為に頑張る! 何たって信頼と実績があるからね、経験に裏打ちされた丁寧な仕事をしてみせるよ!」
何だその建築会社のコマーシャルみたいなセリフは。
ってか俺と羽那子が付き合うようになったのは伊千香の功績みたいな言い方だな。
「ふふふっ、それはそれで頼りにしてるからね」
そして羽那子も否定はしないのな。
「そうと決まったら作戦会議だねっ!
ほらお兄ちゃん出てって!! 今からはなちゃんととっても大事なお話があるんだから!!!」
「そーだーそーだー♪」
それにしてもこの二人、自分勝手過ぎやしないかい?
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる