肩に顔乗せ笑う子は……?

なつのさんち

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再会

誰なのかな?

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「真鍋さん。今、のーって、言った……?」

「えっ!? はいっ。
 私は昔、先輩の事を、“のー”と呼んでいました、よね?」

 ここまで言って、あぁやってしまったと気付いた。伝えたい事だけ伝え、しっかりと説明出来てない。
 そもそも、私はのーの、東奥あちおく南朋なおの認識が間違っている事を指摘していないんだ。

「あっ、そっか。誤解を解いていませんでしたね。好きだったって言われて舞い上がって、今の今までその直前の言葉を忘れていました……。
 私、死んでなんかいないんです。亡くなったのは、母の方で」

 のーは幼馴染が亡くなったと思っていた。けれど、のーの幼馴染である真菜まなが死んだのではなく、真菜の母親が亡くなったのが本当で。

「母親同士が仲が良くて、互いの家を行き来して遊んでいて。
 子供だけで遊べるようになってからは、毎日のように公園で遊んで。日が沈みだして、夕暮れ空になった頃に母達が迎えに来て」

 実はその前後の事、私は詳しく覚えている訳じゃない。後から父や祖父母に聞いて知った話。

「のー……。いえ、先輩が小学校に上がられて、前ほど頻繁には遊ばなくなって。それと時を同じくして、母が亡くなったんです。
 それで、父1人では私を育てられないからって、父の地元の関西へ引っ越したんです」

 当時の私は、大好きな母が亡くなった事、生まれるはずだった妹がいなくなってしまった事、地元を離れて遠くへ引っ越しした事。それらでとても混乱し、ほとんど泣いて過ごしていたらしい。

「先輩のお母さんは、先輩を気遣って私が遠くに行ったと説明した訳ではなく、そのままの意味で遠くに行ったと話されたんだと思います。
 先輩は当時、小学校2年生だったのかな? 私の母が亡くなったと伝えるにしても、原因は何だと聞かれれば答えにくかったんだと思うんですよね」

 理由が理由だから。小さかったのーには、とても説明しにくかったのだと思う。

「母は、妊娠中の急変で亡くなったんです。妹と共に」

 何が起こったのか、のーに詳しく説明する必要はないと思う。ただ妊娠中に母が急変し、搬送先の病院でお腹の中の妹と共に亡くなったというのが事実だ。
 父も未だにその時の状況を思い出すのが辛いらしく、詳しい状況を聞いたのは1回のみ。それ以来、私も父から聞き出そうとは思わなかった。

「生まれるはずだった娘と、妻と。同時に亡くして、父もどうしていいか分からなかったそうです。父の実家へ半ば無理矢理帰らされて。
 だから、先輩のお母さんもあまりの突然の事でちゃんとした状況を把握されてなかったんじゃないでしょうか。
 これは私の想像ですが、母が亡くなっただいぶ後に事情を知ったんじゃないかと。恐らく落ち着いた頃に父から連絡をしたのだと思います。電話か、もしくは手紙で。
 母の地元も父と同じでしたから、お葬式は向こうでしたそうなので」

 やっぱり先にのーのお母さんとお話すれば良かっただろうか。突然存在すら忘れていた幼馴染が現れて、私があなたの初恋の相手ですっ! なんておかしな話だと思う。うん、気付くのが遅い……。

「真鍋さん、何で僕と再会した時に、憑いてますよなんて、言ったの?」

 ぐっ……!? 痛い所を突いて来なさる……。いや、私はちゃんと説明しないと、説明責任があるんだっ。おかしな事を言い出したのは私だ。あれは違うんだと言わないと。

「その……。私の事、分からないんだって。忘れられてるんだって思ったら悲しくなって。
 咄嗟に変な事、言っちゃったんです」

「それで女の子が憑いてるって?」

「はい。
 でも、5歳の女の子って言えば、私の事を連想して、思い出してくれるかもって、思ったんですけどね」

 ここは可愛くテヘペロをすべきシーンなのではっ!? いや、人生で一度もそんなバカなごまかし方した事ないけど。
 でもさらっと流してほしいし、何なら「そんなアホな話あるかいなっ!」って超絶ベタにツッコミを入れてほしいところではあるんやけど。
 いやいや、きちんと頭を下げて悪かったと思っている事を伝えるべきか? いや、それはさすがに真面目過ぎないだろうか。そこまでバカ丁寧にして、逆に「俺の事バカにしてんの?」って思われても嫌だし……。


「じゃあさ、今君の背中におぶさって、肩に顔を乗せている女の子は、誰なのかな?」

 ……、んっ?

「僕が君に指摘されてから見えるようになった、僕が今まで幼馴染のみなちゃんだと思ってたその女の子、誰なのなか?」

 んんっ!?
 ゾクゾクゾクっ、背中に悪寒が走る。のーの目つきが怖い。怒ってる? 口調は変わらず、けど声質が低くて鋭い気がする。
 嫌やわぁ、私が口を滑らせて変な事言うた仕返しやろか。そやんな? 仕返しにそんなん言うてんにゃんなぁ?

「ほら、右肩に顔を乗せてるんだけど、分かる?」

「キャァーーーーー!!!」

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