8 / 12
08:四天王と今後の対応を検討
しおりを挟む
「戻ったぞ」
「ただいまぁ~」
魔王城の玉座へと戻り、再び肩車玉座になってマオリーを座らせる。
四天王は私達が戻ったのに気付くまで、あぁだこぉだと騒いでいたようだ。
「お戻りニャさいませ、陛下。筆頭魔術師殿」
お戻りなさいませ、と揃って頭を下げる四天王。
表情から察するに、あまり話は進んでいないような気がするな。
「此度の勇者による侵攻についてですが、前例と突き合わせるとおかしな点が多くございまして。
相違点をどう捉えるかについて、意見が分かれておったところでございます」
岩がゴツゴツしながら報告をして来た。
意見が分かれている、というのはどういう事だろうか。
詳しく聞かせてもらおう。
「前回の勇者侵攻までの共通点として、大規模な戦闘がいくつも起こった後に本丸であるここ、魔王城へと攻め込まれるという流れがございました。
我々も無力ではございません。ジュモーグスの軍勢を押し返し、王国の領土を奪った戦いもございます」
“ジュモーグスとは人間の国、勇者の国の事です”
「つまり、今回は勇者パーティーが4人だけでこちらの本丸である魔王城へと直接奇襲を掛けて来た、という事か?」
「はっ、その通りにございます」
なるほど、いつもであれば大規模な戦闘の後に勇者と魔王による頂上決戦が行われる、と。
しかし、今回の狙いは魔王の、マオリーの首のみ。
ふと、勇者ちゃん達の話していた内容を思い出す。
『いいんですよ姫様、勇者様は魔王を殺してこそ勇者様ですもの』
『ですです~、これで勇者様こそが真の勇者であると認められるでしょう。
姫様と勇者様が結ばれて、私達も側室として迎えてもられば人生安泰ですわ~』
う~ん、本来魔王国へと攻める必要のないタイミングで、自分こそが勇者であると認められたいが為にマオリーの命を狙って来たような気がするが。
“可能性としては十分にございます”
「勇者がいた国にこちら側の内通者はおらんのか?」
「それが……」
何やらトカゲが言い辛そうにしている。
舌をチロチロさせているのを見ながら、トカゲの言葉を待つ。
「先代魔王様がお亡くなりになってしばらくの後、ジュモーグス国内の魔族の血を引いた者が次々に粛清されて行きまして……。
こちらの手の者はほぼ殺されてしまったのです」
“ジュモーグスは人族の王家を頂く国家です。
元々は差別等ございませんでしたが、情勢が変わって人族以外の者を可能な限り排除しようとしたのではないでしょうか”
なるほど、魔王国の脅威に怯えた為に国民すらも手に掛けて行ったという事か。
魔法があり、人以外の人種が多くいるこの世界。
自分よりも筋力・魔力の高い人種や亜人達を排除して行ったのだろう。
気持ちは分からなくもないが、そんな事をすればどんどん自分の首を絞めて行くようなものだと思うんだけどな。
“その為の異世界召喚だったのではないでしょうか”
あ、そう言えばジュモーグス王国が私の存在を複製し、この世界に召喚したんだった。
思い出してしまった。さて、どうやってあの国を滅茶苦茶にしてやろうか。
「メェッ!?」
おっと、感情が顔に出てしまっていたらしい。黒ヤギが怯えている。
そうそう、マオリーとスカイダイビングを楽しんでいた時に目にした、軍隊について伝えておかなければ。
「そう言えば、ジュモーグスからだと思われる軍隊が魔王国へと向かって進軍して来ているようだ。
勇者達が先行して魔王を狙い、その後魔王国王都を落とすという段取りだったのではないか?」
肩に乗せられたマオリーの太ももがギュッと締め付ける。
自分の命を狙われたという話を聞きたくないって気持ちは分かるけど。
ごめんね、どうしても今確認しておかなければならない事だから。
「勇者のみ先行して魔王都へ攻め入るという作戦、前例はござ……、ごニャいません」
……ワザと猫訛りにする必要ないからな?
「そうか……、ちょっと行って話を聞いてこようか」
私は今、どこから見ても魔王だろっていう身体になってはいるが、元々は人族、人間だ。
その人間の姿へは簡単に戻れるので、ちょっと飛んで行って、ジュモーグス軍にぶつかる前に人間の姿へと戻れば、警戒される事なく話が出来るんじゃないだろうか。
“自ら斥候の役割を果たそうという事ですね?”
そういう事。
「え? パパ人族の軍隊に会いに行くの?
マオはちょっと怖いなぁ……」
「パパが1人で行くから大丈夫だ。安心して待っていなさい」
「本当? もういなくなったりしない?」
「ははは、パパはマオリーがいるこの魔王城に帰ってくるさ、必ずね」
「約束だよ?」
“フラグですか?”
違う。
「では、ちょっと行って来る」
「「「「ははぁぁぁ~~~」」」」
また歩いて魔王城の外へ出て、翼を広げてさぁ飛ぼうかと思ったところへ、レイラさんとエリナさんがケンタウロスが引く馬車に乗って登城して来た。
レイラさんが昨日のゆっくりした動作は何だったのかと言うほどの素早い動きで私の前へとやって来て、
「生きとったんかワレぇぇぇ!!?」
と叫んだので、王国軍への斥候は中止となったのだった。
「ただいまぁ~」
魔王城の玉座へと戻り、再び肩車玉座になってマオリーを座らせる。
四天王は私達が戻ったのに気付くまで、あぁだこぉだと騒いでいたようだ。
「お戻りニャさいませ、陛下。筆頭魔術師殿」
お戻りなさいませ、と揃って頭を下げる四天王。
表情から察するに、あまり話は進んでいないような気がするな。
「此度の勇者による侵攻についてですが、前例と突き合わせるとおかしな点が多くございまして。
相違点をどう捉えるかについて、意見が分かれておったところでございます」
岩がゴツゴツしながら報告をして来た。
意見が分かれている、というのはどういう事だろうか。
詳しく聞かせてもらおう。
「前回の勇者侵攻までの共通点として、大規模な戦闘がいくつも起こった後に本丸であるここ、魔王城へと攻め込まれるという流れがございました。
我々も無力ではございません。ジュモーグスの軍勢を押し返し、王国の領土を奪った戦いもございます」
“ジュモーグスとは人間の国、勇者の国の事です”
「つまり、今回は勇者パーティーが4人だけでこちらの本丸である魔王城へと直接奇襲を掛けて来た、という事か?」
「はっ、その通りにございます」
なるほど、いつもであれば大規模な戦闘の後に勇者と魔王による頂上決戦が行われる、と。
しかし、今回の狙いは魔王の、マオリーの首のみ。
ふと、勇者ちゃん達の話していた内容を思い出す。
『いいんですよ姫様、勇者様は魔王を殺してこそ勇者様ですもの』
『ですです~、これで勇者様こそが真の勇者であると認められるでしょう。
姫様と勇者様が結ばれて、私達も側室として迎えてもられば人生安泰ですわ~』
う~ん、本来魔王国へと攻める必要のないタイミングで、自分こそが勇者であると認められたいが為にマオリーの命を狙って来たような気がするが。
“可能性としては十分にございます”
「勇者がいた国にこちら側の内通者はおらんのか?」
「それが……」
何やらトカゲが言い辛そうにしている。
舌をチロチロさせているのを見ながら、トカゲの言葉を待つ。
「先代魔王様がお亡くなりになってしばらくの後、ジュモーグス国内の魔族の血を引いた者が次々に粛清されて行きまして……。
こちらの手の者はほぼ殺されてしまったのです」
“ジュモーグスは人族の王家を頂く国家です。
元々は差別等ございませんでしたが、情勢が変わって人族以外の者を可能な限り排除しようとしたのではないでしょうか”
なるほど、魔王国の脅威に怯えた為に国民すらも手に掛けて行ったという事か。
魔法があり、人以外の人種が多くいるこの世界。
自分よりも筋力・魔力の高い人種や亜人達を排除して行ったのだろう。
気持ちは分からなくもないが、そんな事をすればどんどん自分の首を絞めて行くようなものだと思うんだけどな。
“その為の異世界召喚だったのではないでしょうか”
あ、そう言えばジュモーグス王国が私の存在を複製し、この世界に召喚したんだった。
思い出してしまった。さて、どうやってあの国を滅茶苦茶にしてやろうか。
「メェッ!?」
おっと、感情が顔に出てしまっていたらしい。黒ヤギが怯えている。
そうそう、マオリーとスカイダイビングを楽しんでいた時に目にした、軍隊について伝えておかなければ。
「そう言えば、ジュモーグスからだと思われる軍隊が魔王国へと向かって進軍して来ているようだ。
勇者達が先行して魔王を狙い、その後魔王国王都を落とすという段取りだったのではないか?」
肩に乗せられたマオリーの太ももがギュッと締め付ける。
自分の命を狙われたという話を聞きたくないって気持ちは分かるけど。
ごめんね、どうしても今確認しておかなければならない事だから。
「勇者のみ先行して魔王都へ攻め入るという作戦、前例はござ……、ごニャいません」
……ワザと猫訛りにする必要ないからな?
「そうか……、ちょっと行って話を聞いてこようか」
私は今、どこから見ても魔王だろっていう身体になってはいるが、元々は人族、人間だ。
その人間の姿へは簡単に戻れるので、ちょっと飛んで行って、ジュモーグス軍にぶつかる前に人間の姿へと戻れば、警戒される事なく話が出来るんじゃないだろうか。
“自ら斥候の役割を果たそうという事ですね?”
そういう事。
「え? パパ人族の軍隊に会いに行くの?
マオはちょっと怖いなぁ……」
「パパが1人で行くから大丈夫だ。安心して待っていなさい」
「本当? もういなくなったりしない?」
「ははは、パパはマオリーがいるこの魔王城に帰ってくるさ、必ずね」
「約束だよ?」
“フラグですか?”
違う。
「では、ちょっと行って来る」
「「「「ははぁぁぁ~~~」」」」
また歩いて魔王城の外へ出て、翼を広げてさぁ飛ぼうかと思ったところへ、レイラさんとエリナさんがケンタウロスが引く馬車に乗って登城して来た。
レイラさんが昨日のゆっくりした動作は何だったのかと言うほどの素早い動きで私の前へとやって来て、
「生きとったんかワレぇぇぇ!!?」
と叫んだので、王国軍への斥候は中止となったのだった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
グウェンドリン・イグレシアスのお気に入り
衣更月
ファンタジー
大陸の西の西。
ハイエルフの中でも異質なイグレシアス家に生まれたグウェンドリンは、故郷の大森林と接する人間の領地で人間観察をするのを日課としている。
人間、面白い!
中でもお気に入りは髭もじゃワイアット。
でも、成長した彼の息子にグウェンドリンの好奇心が開花した。
全5話
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる