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07:我の名は……
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「さて、報告を聞こう」
玉座に座り、私の肩の上にさらにマオリーを乗せている状態。肩車玉座。
大きく伸びた角をマオリーが掴んでいる。
まるでこの為に生えて来たかのような角。
肩の上で、楽しそうにマオリーが足をパタパタとさせている。
スカートではないので大丈夫だ。
「あの、先代魔王陛下でいらっしゃいますよね?」
「否。我を筆頭宮廷魔術師にしたのはそなたらであろう」
あ、魔王因子のせいで精神にも影響が出っちゃってる感じ?
話し言葉がかなり魔王っぽくなってしまう。
“多少影響が出るかと。ただ、意識すれば問題ないレベルです”
そうなんだ、でもこの方がしっくり来る気がするから四天王の前ではこのままの雰囲気でいいか。
「言われればちょっと小さい気がするニャ……」
む、小さいのか?
“ええ、先代魔王の身長は2メートル30センチでした。
あなたは1メートル70センチなので、比較すれば小さいですね。”
そうか、ならばサイズ感も合わせておこう。
ずずずずずずずずず、これくらいか?
「お、大きくなった!?」
トカゲが大層驚いている。
岩は相変わらずゴツゴツしていてよく分からん。
猫は丸くなっていて、黒ヤギはメェ~と鳴いている。
「わ~い、高くなった♪」
“服が破けて丸見えです”
あ、ホントだ。
元のサイズでも大きくなっても着れるローブを用意させて、改めて朝の会議を始める。
「あの、筆頭魔術師様を何とお呼びすれば……」
黒ヤギに言われて気付いた、まだ名乗ってなかった。
「我の名は……」
言いかけて、それは自分が名乗るべき名前ではないと思い直す。
オリジナルを引きずるのは止めよう。この世界で、マオリーの父親として生きて行くと決めたのだから。
でも何も思い付かない。何か名前決めてくれ。
“では、テーヴァス・イニティウム・ゲオルガングで如何でしょう”
「……、テーヴァス・イニティウム・ゲオルガングである」
おい、四天王急に顔の色変わったけど大丈夫?
「「「「始祖様!?」」」」
は?
「あれ? パパはマオのご先祖様だったの?
あ~、だからマオを守る為に来てくれたんだね!」
やってくれたな!?
“ご提案差し上げただけでございます”
ARフェアリーめ、ニヤニヤしやがって……。
“そろそろ私もお名前を頂戴したく存じます”
ん~、ARフェアリーだからアルフェな。
それにしてもお前、感情あるんだな。
画面右上に出て来るイルカ的な扱いなのかと思ってたよ。
“私を消す方法、検索しますか?”
しない。
その前に私を崇めるように頭を下げているあいつらを何とかする方法。
“楽にせよ、と”
「楽にせよ。我はそなたらの働きに期待している」
「「「「ははぁ~!!!!」」」」
ダメだな。ちょっと時間を置くか。
せっかく翼が生えた事だし、マオリーと空中散歩でもするか。
「陛下と我は散歩に出掛ける。
勇者亡き後のかの国の扱いをどうするか、そなたらで話し合え。
さぁマオリー、行くぞ」
「うん♪」
「「「「ははぁ~!!!!」」」」
バサッ。翼を広げたはいいが、正直上手く飛ぶ自信がない。
バサッ。翼を仕舞い、歩いて魔王城を出た。カッコ悪ぅ。
「いぃぃぃやぁっほぉぉぉ~~~!!!」
おお、喜んでる喜んでる。
背中の上でパタパタしているようだ。
現在のスピード分かるか?
“マッハ1です”
マジか、あまり遠くへは行かない方がいいかな。
私だけでなくマオリーの身体も平気そうだけど、マオリーの持っている魔王因子のお蔭かな。
“この程度ならば問題ないようです”
そうか、ならもっと上を飛ぼう。
「マオリー、絶対角から手を離すなよ?」
「分かったぁぁぁ!!!」
高度何メートルまで平気だろうか。
“言い伝えでは高度3万メートル付近に天界との壁があるとされています”
天界? 神様や天使がいるのか?
“はい、天界の存在は確認されていませんが、神の存在は確認・記録されています”
ふ~ん。あまり近付き過ぎると敵対行為とみなされるかも知れん。
高度1万メートルあたりに留めておこう。
空気の温度や酸素濃度とか、魔法で何とかなるか?
“なります。権限を頂ければ、私の方で適時発動させますが”
権限の使用を許可する。
水平飛行から垂直上昇、興奮したマオリーが角を揺さぶるも難なく高度1万メートルに到達。
ん~、水平線が丸くないな。
“この世界が天体かどうかも定かではありません”
そう来るかぁ~。
太陽はある。月はまだ見てない。
“ございます”
……、いくつある?
“1つです”
へぇ、2つくらいはあるかと思ったけど。
“地球から見る月の10倍の大きさですが”
そっちか~。
ってか天界のさらに上に太陽と月があるという事だろう?
天界より上はどうなってんのかね。
ま、それはいいとして。
「きれー……」
「マオリー、いつか自分の力でここまで来れるようになろうな」
「うん!」
「じゃあ、背中から降りてパパの手を握ってみなさい。
大丈夫、羽ばたかなくても宙には浮ける。
翼が魔力を放っているからね、ふわふわと浮くだろう?」
「ホントだ、浮いてるよ!」
「よし、じゃあ浮く力を消してみようか。
パパと同時に、いっせ~の~で!!」
ヒュー! 重力に引っ張られて落ちて行く。
父娘で手を繋ぎ、スカイダイビング。
「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
嬉しそうに悲鳴を上げるマオリーを見ながら、この子が喜びそうな遊びは何でもさせてやろうと、そう思った。
ん? 遥か遠くに蟻の大群のようなものが見える。魔力で視力を強化する。
あれは人か? 軍隊の行進のような……。
“方向的に勇者の国、ジュモーグス王国から来たようです”
目的は何だ? このまま進軍すれば魔王国へと侵攻する形になるよな。
勇者が切り込み隊長で、あの軍隊が本隊だった可能性も考えらる。
国境を越えるのに後どれくらいかかりそうだ?
“3・4日かと”
では一度四天王の考えを聞いた上で、対応を決めようか。
玉座に座り、私の肩の上にさらにマオリーを乗せている状態。肩車玉座。
大きく伸びた角をマオリーが掴んでいる。
まるでこの為に生えて来たかのような角。
肩の上で、楽しそうにマオリーが足をパタパタとさせている。
スカートではないので大丈夫だ。
「あの、先代魔王陛下でいらっしゃいますよね?」
「否。我を筆頭宮廷魔術師にしたのはそなたらであろう」
あ、魔王因子のせいで精神にも影響が出っちゃってる感じ?
話し言葉がかなり魔王っぽくなってしまう。
“多少影響が出るかと。ただ、意識すれば問題ないレベルです”
そうなんだ、でもこの方がしっくり来る気がするから四天王の前ではこのままの雰囲気でいいか。
「言われればちょっと小さい気がするニャ……」
む、小さいのか?
“ええ、先代魔王の身長は2メートル30センチでした。
あなたは1メートル70センチなので、比較すれば小さいですね。”
そうか、ならばサイズ感も合わせておこう。
ずずずずずずずずず、これくらいか?
「お、大きくなった!?」
トカゲが大層驚いている。
岩は相変わらずゴツゴツしていてよく分からん。
猫は丸くなっていて、黒ヤギはメェ~と鳴いている。
「わ~い、高くなった♪」
“服が破けて丸見えです”
あ、ホントだ。
元のサイズでも大きくなっても着れるローブを用意させて、改めて朝の会議を始める。
「あの、筆頭魔術師様を何とお呼びすれば……」
黒ヤギに言われて気付いた、まだ名乗ってなかった。
「我の名は……」
言いかけて、それは自分が名乗るべき名前ではないと思い直す。
オリジナルを引きずるのは止めよう。この世界で、マオリーの父親として生きて行くと決めたのだから。
でも何も思い付かない。何か名前決めてくれ。
“では、テーヴァス・イニティウム・ゲオルガングで如何でしょう”
「……、テーヴァス・イニティウム・ゲオルガングである」
おい、四天王急に顔の色変わったけど大丈夫?
「「「「始祖様!?」」」」
は?
「あれ? パパはマオのご先祖様だったの?
あ~、だからマオを守る為に来てくれたんだね!」
やってくれたな!?
“ご提案差し上げただけでございます”
ARフェアリーめ、ニヤニヤしやがって……。
“そろそろ私もお名前を頂戴したく存じます”
ん~、ARフェアリーだからアルフェな。
それにしてもお前、感情あるんだな。
画面右上に出て来るイルカ的な扱いなのかと思ってたよ。
“私を消す方法、検索しますか?”
しない。
その前に私を崇めるように頭を下げているあいつらを何とかする方法。
“楽にせよ、と”
「楽にせよ。我はそなたらの働きに期待している」
「「「「ははぁ~!!!!」」」」
ダメだな。ちょっと時間を置くか。
せっかく翼が生えた事だし、マオリーと空中散歩でもするか。
「陛下と我は散歩に出掛ける。
勇者亡き後のかの国の扱いをどうするか、そなたらで話し合え。
さぁマオリー、行くぞ」
「うん♪」
「「「「ははぁ~!!!!」」」」
バサッ。翼を広げたはいいが、正直上手く飛ぶ自信がない。
バサッ。翼を仕舞い、歩いて魔王城を出た。カッコ悪ぅ。
「いぃぃぃやぁっほぉぉぉ~~~!!!」
おお、喜んでる喜んでる。
背中の上でパタパタしているようだ。
現在のスピード分かるか?
“マッハ1です”
マジか、あまり遠くへは行かない方がいいかな。
私だけでなくマオリーの身体も平気そうだけど、マオリーの持っている魔王因子のお蔭かな。
“この程度ならば問題ないようです”
そうか、ならもっと上を飛ぼう。
「マオリー、絶対角から手を離すなよ?」
「分かったぁぁぁ!!!」
高度何メートルまで平気だろうか。
“言い伝えでは高度3万メートル付近に天界との壁があるとされています”
天界? 神様や天使がいるのか?
“はい、天界の存在は確認されていませんが、神の存在は確認・記録されています”
ふ~ん。あまり近付き過ぎると敵対行為とみなされるかも知れん。
高度1万メートルあたりに留めておこう。
空気の温度や酸素濃度とか、魔法で何とかなるか?
“なります。権限を頂ければ、私の方で適時発動させますが”
権限の使用を許可する。
水平飛行から垂直上昇、興奮したマオリーが角を揺さぶるも難なく高度1万メートルに到達。
ん~、水平線が丸くないな。
“この世界が天体かどうかも定かではありません”
そう来るかぁ~。
太陽はある。月はまだ見てない。
“ございます”
……、いくつある?
“1つです”
へぇ、2つくらいはあるかと思ったけど。
“地球から見る月の10倍の大きさですが”
そっちか~。
ってか天界のさらに上に太陽と月があるという事だろう?
天界より上はどうなってんのかね。
ま、それはいいとして。
「きれー……」
「マオリー、いつか自分の力でここまで来れるようになろうな」
「うん!」
「じゃあ、背中から降りてパパの手を握ってみなさい。
大丈夫、羽ばたかなくても宙には浮ける。
翼が魔力を放っているからね、ふわふわと浮くだろう?」
「ホントだ、浮いてるよ!」
「よし、じゃあ浮く力を消してみようか。
パパと同時に、いっせ~の~で!!」
ヒュー! 重力に引っ張られて落ちて行く。
父娘で手を繋ぎ、スカイダイビング。
「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
嬉しそうに悲鳴を上げるマオリーを見ながら、この子が喜びそうな遊びは何でもさせてやろうと、そう思った。
ん? 遥か遠くに蟻の大群のようなものが見える。魔力で視力を強化する。
あれは人か? 軍隊の行進のような……。
“方向的に勇者の国、ジュモーグス王国から来たようです”
目的は何だ? このまま進軍すれば魔王国へと侵攻する形になるよな。
勇者が切り込み隊長で、あの軍隊が本隊だった可能性も考えらる。
国境を越えるのに後どれくらいかかりそうだ?
“3・4日かと”
では一度四天王の考えを聞いた上で、対応を決めようか。
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