上 下
236 / 243
第十六章:なぎなみ動画始動

バラバラの世界から

しおりを挟む
 メアリーが並行世界について指摘した事により、伊吹とマチルダとキャリーとイリヤが抱えていた小さな違和感が、徐々に存在感を示していく。

「あれ? もしかして、大喜利大会向けの問題が全部解ける人がいなかったのは、記憶が完全じゃないからではなく、僕の世界でしか通用しない問題だったからって事!?」

 伊吹が転生者を見つける為に作った、第一回全国顔寄せ大喜利大会の出場者選別の為の大喜利問題において、五十問全問正解者はいなかった。
 この場にいるマチルダ、キャリー、イリヤも、複数問を落としていた。

「……だからか。
 何個かフェイク用の問題が入ってるんやろうって勘違いしとったわ」

 マチルダの発言を受けて、キャリーとイリヤが頷いてみせる。

「全部の問題に正解があるんだよ。だいたい、フェイクを入れる必要がないじゃん。
 こういう時って、どうやって確認すれば良いんだろう」

 自分がいた世界はこんなんだった、と発表するにしても、何が合っていて何が違うのか全く想像が付かなかったが、ここでもメアリーの提案に助けられる。

「マチルダの話を聞いた上での質問ですが、この世界にはない国が複数存在するはずです。
 その国名を挙げて行くのはどうでしょうか?」

「なるほど、確かに」

 この世界では帝政ロシアが丸ごと滅亡した為、ソヴィエト連邦が成立していない。
 また、第二次世界大戦も行われておらず、伊吹が元いた世界とは世界地図が全く違って見えるのだ。

 メアリーの提案が採用され、伊吹から国名を挙げる事となった。

「まず間違いないだろうと思う国名を言うよ?
 この世界では大日本皇国だけど、僕の世界では第二次世界大戦で敗戦国となってから大を取られて、日本皇国になった。これは皆一緒でしょ」

 伊吹が大前提であると思っていた国を挙げるが、皆が微妙な表情を浮かべる。

「うちが住んでた国はただの日本や。正式には日本国、になるんかな。第二次大戦で敗戦国になったんは同じやな」

「私が住んでいたのは大日本帝国でした。第二次大戦では戦勝国でした」

「……どうやって戦勝国に入ったのか気になるけど、今は置いておこう」

 伊吹とマチルダとキャリーの住んでいた世界も別々であった事が判明した。

「ちなみにイリヤのいた世界の日本の国名は?」

 伊吹の問い掛けに対し、イリヤは少し考えてから答える。

「マチルダと同じく日本だったにゃん。けど、国名が違うのににゃんでセーラー戦士や汎用人型決戦兵器にゃど、同じ作品を皆が共通で知っているのかの説明がつかにゃいにゃん」

 この後の話し合いで、並行世界は恐らく無数にあり、たまたまこの世界に皆が集まっただけであろうという予測を立てた。
 別々の歴史を辿った世界なのに、同じ物語や同じ出来事がある事についての説明は出来ないし、何が正解なのかこの場にいる人間には判断の付かない事である。
 そして伊吹が一番危惧するのは、自分より後に生まれた、もしくは生まれる可能性のある転生者の事だ。

「マチルダが前世で死亡したのは西暦で何年だ?
 おっと、享年までは言わなくていいぞ」

 伊吹は六十歳のお姉さんが死亡してマチルダに転生していたとしても、その事実は知りたくないと思った。

「西暦だと多分2032年やけど……。
 そぉか。時間経過は同じなんか」

 伊吹、マチルダ、キャリー、イリヤの四人の前世で死亡した年と、こちらの世界で生まれた年はほぼ誤差なく同じである事が分かった。
 つまり、どの並行世界であろうと、時間の流れる早さは同じ。しかし、この四人の元いた世界は全て男女比が狂った世界ではなかった。

「うちらが元いた世界の方が科学文明が進んでて、なおかつ後に死んでこっちに生まれ変わった転生者の方がより進んだ知識を持ってる可能性があるって事やな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない

ぐうのすけ
ファンタジー
朝起きると美人予言者が俺を訪ねて来る。 「どうも、予言者です。あなたがダンジョンで配信をしないと日本人の半分近くが死にます。さあ、行きましょう」 そして俺は黒服マッチョに両脇を抱えられて黒塗りの車に乗せられ、日本に1つしかないダンジョンに移動する。 『ダンジョン配信の義務さえ果たせばハーレムをお約束します』 『ダンジョン配信の義務さえ果たせば一生お金の心配はいりません』 「いや、それより自由をください!!」 俺は進化して力を手に入れるが、その力にはトラップがあった。 「吸血鬼、だと!バンパイア=エロだと相場は決まっている!」

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...