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第十五章:結婚式
巫女装束の少女達
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伊吹を乗せた公用車は、警察官が説明した通り、一度も止まる事なく二十分ほどで皇居へと到着した。
皇宮の敷地内へと入り、公用車が停車すると、待機していた警察官が公用車を守るようにして囲む。
(すごい物々しいな、緊張するんだが)
外から公用車のドアが開けられ、伊吹が恐る恐る降り立つ。
智枝に男だというだけで本当にこれだけの警備が必要なのかと問い掛けようとした伊吹だったが、囲んでいる警察官達の向こうから、烏帽子を付けて斎服を着た老人が歩いて来るのが見えた。
「男……?」
伊吹はこの世に生まれて初めて男性と出会った。高齢ではあるが、背筋がしっかりと伸びた、はつらつとした男性だ。
(この場に男が二人いるからこの警備なのかな)
伊吹は先ほどの疑問に対し、自分で答えを出して納得した。
「伊吹様。お待ちしておりました。
今回の結婚の儀を取り仕切ります、武三と申します」
武三が伊吹に対して最敬礼、四十五度の深い角度で頭を下げる、もっとも敬意を表すお辞儀を見せる。
「お世話になります。よろしくお願い致します」
伊吹も武三へと頭を下げるが、武三がなかなか頭を上げる様子がないので、気まずくなり先に伊吹が頭を上げてしまった。
伊吹が頭を上げた後に、武三がようやく頭を上げて、口を開く。
「それではご案内致します」
武三に連れられて、伊吹は皇宮内の一つの建物へ入った。
天井が高い木造の建物で、下は土間になっており、中で轟々と火が焚かれている。
(何て言ったっけ、護摩行?)
段組みされた木が燃え盛っており、室内はかなり温度が高い。
「さっそくではございますが、こちらの火により身を清めて頂きます。
お召し物はあちらで替えて頂きます」
武三が伊吹を奥の小部屋へ案内した。
伊吹が入ると、そこには十人の巫女装束姿の少女達が控えていた。歳の頃は十六から十八まで。皆が伊吹へと最敬礼をしている。
「この度、伊吹様に付きます巫女達でございます。
では、こちらでお着替え願います」
武三の目配せを受けて、少女達が伊吹へと近寄った。
「失礼致します」
「お召し物をお預かり致します」
「首元を失礼致します」
「足元を失礼致します」
「ベルトを外させて頂きます」
「いやいやちょっと待って、一人で出来るから!」
背広を脱がせよう、ネクタイを外そう、ベルトを外そうとする少女達。甲斐甲斐しく世話をしようとするのだが、伊吹はさすがにこの扱いには戸惑った。
いつも美哉や橘香の世話を受けている伊吹だが、あれはむしろ幼馴染みや恋人同士のじゃれ合いに近いものだという感覚でいた為、少女達から同じような対応を受けてびっくりしてしまった。
「伊吹様。皇宮内におられる際は全てのお世話をこの者達がさせて頂きます」
武三が当然であるかのようにそう告げる。
(結婚式の度に男はこんな待遇を受けるのか……?)
「ご主人様、これも儀式のうちだとお考え下さいませ」
「儀式、儀式ねぇ……」
「はい、事前儀式でございます」
智枝が何とか宥め、伊吹はしぶしぶ少女達に身を任せる事にした。
背広、ネクタイ、ベルト、ワイシャツ、スラックスも脱がされ、靴下も下着も全て脱がされた伊吹は、ジト目で智枝を見やるが、智枝は伊吹に背を向けて、自分の着替えを行っていた。
結局、伊吹は素肌の上に白装束を纏わされた。
(智枝は巫女装束じゃないのかよ)
智枝も同じく白装束へ着替えており、伊吹は残念に思った。
皇宮の敷地内へと入り、公用車が停車すると、待機していた警察官が公用車を守るようにして囲む。
(すごい物々しいな、緊張するんだが)
外から公用車のドアが開けられ、伊吹が恐る恐る降り立つ。
智枝に男だというだけで本当にこれだけの警備が必要なのかと問い掛けようとした伊吹だったが、囲んでいる警察官達の向こうから、烏帽子を付けて斎服を着た老人が歩いて来るのが見えた。
「男……?」
伊吹はこの世に生まれて初めて男性と出会った。高齢ではあるが、背筋がしっかりと伸びた、はつらつとした男性だ。
(この場に男が二人いるからこの警備なのかな)
伊吹は先ほどの疑問に対し、自分で答えを出して納得した。
「伊吹様。お待ちしておりました。
今回の結婚の儀を取り仕切ります、武三と申します」
武三が伊吹に対して最敬礼、四十五度の深い角度で頭を下げる、もっとも敬意を表すお辞儀を見せる。
「お世話になります。よろしくお願い致します」
伊吹も武三へと頭を下げるが、武三がなかなか頭を上げる様子がないので、気まずくなり先に伊吹が頭を上げてしまった。
伊吹が頭を上げた後に、武三がようやく頭を上げて、口を開く。
「それではご案内致します」
武三に連れられて、伊吹は皇宮内の一つの建物へ入った。
天井が高い木造の建物で、下は土間になっており、中で轟々と火が焚かれている。
(何て言ったっけ、護摩行?)
段組みされた木が燃え盛っており、室内はかなり温度が高い。
「さっそくではございますが、こちらの火により身を清めて頂きます。
お召し物はあちらで替えて頂きます」
武三が伊吹を奥の小部屋へ案内した。
伊吹が入ると、そこには十人の巫女装束姿の少女達が控えていた。歳の頃は十六から十八まで。皆が伊吹へと最敬礼をしている。
「この度、伊吹様に付きます巫女達でございます。
では、こちらでお着替え願います」
武三の目配せを受けて、少女達が伊吹へと近寄った。
「失礼致します」
「お召し物をお預かり致します」
「首元を失礼致します」
「足元を失礼致します」
「ベルトを外させて頂きます」
「いやいやちょっと待って、一人で出来るから!」
背広を脱がせよう、ネクタイを外そう、ベルトを外そうとする少女達。甲斐甲斐しく世話をしようとするのだが、伊吹はさすがにこの扱いには戸惑った。
いつも美哉や橘香の世話を受けている伊吹だが、あれはむしろ幼馴染みや恋人同士のじゃれ合いに近いものだという感覚でいた為、少女達から同じような対応を受けてびっくりしてしまった。
「伊吹様。皇宮内におられる際は全てのお世話をこの者達がさせて頂きます」
武三が当然であるかのようにそう告げる。
(結婚式の度に男はこんな待遇を受けるのか……?)
「ご主人様、これも儀式のうちだとお考え下さいませ」
「儀式、儀式ねぇ……」
「はい、事前儀式でございます」
智枝が何とか宥め、伊吹はしぶしぶ少女達に身を任せる事にした。
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結局、伊吹は素肌の上に白装束を纏わされた。
(智枝は巫女装束じゃないのかよ)
智枝も同じく白装束へ着替えており、伊吹は残念に思った。
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