転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

文字の大きさ
上 下
212 / 243
第十五章:結婚式

巫女装束の少女達

しおりを挟む
 伊吹いぶきを乗せた公用車は、警察官が説明した通り、一度も止まる事なく二十分ほどで皇居へと到着した。
 皇宮の敷地内へと入り、公用車が停車すると、待機していた警察官が公用車を守るようにして囲む。

(すごい物々しいな、緊張するんだが)

 外から公用車のドアが開けられ、伊吹が恐る恐る降り立つ。
 智枝ともえに男だというだけで本当にこれだけの警備が必要なのかと問い掛けようとした伊吹いぶきだったが、囲んでいる警察官達の向こうから、烏帽子えぼしを付けて斎服さいふくを着た老人が歩いて来るのが見えた。

「男……?」

 伊吹はこの世に生まれて初めて男性と出会った。高齢ではあるが、背筋がしっかりと伸びた、はつらつとした男性だ。

(この場に男が二人いるからこの警備なのかな)

 伊吹は先ほどの疑問に対し、自分で答えを出して納得した。

「伊吹様。お待ちしておりました。
 今回の結婚の儀を取り仕切ります、武三たけぞうと申します」

 武三が伊吹に対して最敬礼、四十五度の深い角度で頭を下げる、もっとも敬意を表すお辞儀を見せる。

「お世話になります。よろしくお願い致します」

 伊吹も武三へと頭を下げるが、武三がなかなか頭を上げる様子がないので、気まずくなり先に伊吹が頭を上げてしまった。
 伊吹が頭を上げた後に、武三がようやく頭を上げて、口を開く。

「それではご案内致します」

 武三に連れられて、伊吹は皇宮内の一つの建物へ入った。
 天井が高い木造の建物で、下は土間になっており、中で轟々と火が焚かれている。

(何て言ったっけ、護摩行ごまぎょう?)

 段組みされた木が燃え盛っており、室内はかなり温度が高い。

「さっそくではございますが、こちらの火により身を清めて頂きます。
 お召し物はあちらで替えて頂きます」

 武三が伊吹を奥の小部屋へ案内した。
 伊吹が入ると、そこには十人の巫女装束姿の少女達が控えていた。歳の頃は十六から十八まで。皆が伊吹へと最敬礼をしている。

「この度、伊吹様に付きます巫女達でございます。
 では、こちらでお着替え願います」

 武三の目配せを受けて、少女達が伊吹へと近寄った。

「失礼致します」
「お召し物をお預かり致します」
「首元を失礼致します」
「足元を失礼致します」
「ベルトを外させて頂きます」

「いやいやちょっと待って、一人で出来るから!」

 背広を脱がせよう、ネクタイを外そう、ベルトを外そうとする少女達。甲斐甲斐しく世話をしようとするのだが、伊吹はさすがにこの扱いには戸惑った。
 いつも美哉や橘香の世話を受けている伊吹だが、あれはむしろ幼馴染みや恋人同士のじゃれ合いに近いものだという感覚でいた為、少女達から同じような対応を受けてびっくりしてしまった。

「伊吹様。皇宮内におられる際は全てのお世話をこの者達がさせて頂きます」

 武三が当然であるかのようにそう告げる。

(結婚式の度に男はこんな待遇を受けるのか……?)

「ご主人様、これも儀式のうちだとお考え下さいませ」

「儀式、儀式ねぇ……」

「はい、事前儀式でございます」

 智枝が何とか宥め、伊吹はしぶしぶ少女達に身を任せる事にした。
 背広、ネクタイ、ベルト、ワイシャツ、スラックスも脱がされ、靴下も下着も全て脱がされた伊吹は、ジト目で智枝を見やるが、智枝は伊吹に背を向けて、自分の着替えを行っていた。

 結局、伊吹は素肌の上に白装束を纏わされた。

(智枝は巫女装束じゃないのかよ)

 智枝も同じく白装束へ着替えており、伊吹は残念に思った。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜

ミコガミヒデカズ
ファンタジー
 気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。  以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。  とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、 「儂の味方になれば世界の半分をやろう」  そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。  瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【掲示板形式】気付いたら貞操逆転世界にいたんだがどうすればいい

やまいし
ファンタジー
掲示板にハマった…… 掲示板形式+αです。※掲示板は元の世界(現代日本)と繋がっています。

処理中です...