205 / 243
第十四章:結婚式に向けて
翔ノ塔
しおりを挟む
伊吹は立食交流会の後、そのままVividColorsの新社屋に泊まった。
空音と一夜を共にした訳だが、初めての行為で空音が気絶してしまい、結局は藍子と燈子と智枝の三人掛かりで伊吹を鎮める事になってしまった。
空音は美子と京香によって身体を洗われた後、客室へ寝かされた。
そして翌朝。せっかく来たのだからと、伊吹は立食交流会が催された十二階建てのこのビルの室内を見て回る事にした。
「こちらは翔ノ塔と名付け、主に来客対応用に改装致しました。
一部、ご主人様のご要望も取り入れております」
智枝の案内で一階部分から見て回る。一部まだ内装や家具の搬入が出来ていないところもあるが、ほとんどの部屋は完成している。
「他の部屋もまんまラブホだな」
空音を連れ込んだ部屋を含め、複数用意された小部屋は、伊吹が婚約者達にせがまれて話したラブホテルの雰囲気そのままとなっている。
実際には伊吹は利用した事がないのだが、アニメやドラマなどで見た通りの出来映えに驚いている。
「ちゃんと電車の車両内部も再現してるのか……。
智枝、そこに立って。うーん、もうちょっと足を開いて」
ご丁寧に下が鏡張りになっていたりと、なかなか作り込まれている。
ぶち抜きとなっているパーティー会場部分以外の五階分が化粧部屋か、もしくはラブホの部屋にされている。
自分以外が利用する事はないだろうと思うと、庶民派が抜けない伊吹には少しもったいないなと感じてしまう。
六階部分と七階部分もぶち抜かれ、全体がゲームセンター風になっている。
アーケードゲームについては完成しておらず、ボーリング場も試作段階の為に導入出来ていない。
クレーンゲームとダーツの筐体、卓球台とビリヤード台が設置されており、バッティングマシンとゴルフの打ちっぱなしはネットに向かって打つように工夫されている。
メダルコーナーとして押し板が迫り出して来てメダルを落とす筐体が置かれており、その近くにはスロット台も設置されている。
さらにはカジノテーブルが設置されていて、ディーラー役として伊吹の侍女の一人が立っており、カードゲームやルーレットが楽しめると説明を受けた。
この世界の賭け事も、当然法律で定められたルールに則って行われる為、ビルの一室でお金を掛ける訳にはいかない。その代わりにメダルを賭けて雰囲気を楽しめるようになっているのだ。建前上は。
八、九階はそれぞれ客室となっており、昨日のようなパーティーが行われた際に来客の控え室として使えたり、そのまま宿泊したりが可能な部屋となっている。
年中来客がある訳ではないので、こちらにも伊吹の侍女達の持ち回りによって管理・運営される。
「昨夜はご迷惑をお掛けしまして申し訳ございませんでした」
母親の手を借りながら、空音が伊吹へ謝罪する。
「いや、気にしないで良いよ。最初は皆あんなものだから」
「次は必ず最後までお務めしてみせますわ」
日頃、伊吹の相手を務めている八人の中で、最初から最後まで伊吹の相手が出来る女性はまだ一人もいないのだが、その事は空音には伝えず、伊吹は微笑むのみに留めた。
「これは素晴らしいな」
十階には室内庭園が造られており、喫茶テーブルやバーカウンターが設置されている。
「ご主人様がご実家で草木を愛でておられたからと、侍女の方々の要望がありました」
智枝がこの庭園が出来た経緯を説明する。
「そうなんだ、嬉しいよ。皆さん、ありがとうございます」
伊吹が草木の手入れをしていた侍女達へ礼を伝えると、皆が嬉しそうな表情を浮かべていた。
この侍女達は、伊吹がご近所のおばちゃ……、お姉様だと思っていた者達だ。
「新社屋全体が完成したら、毎日ここでお茶休憩するよ。あと、鳥とか放し飼いに出来たら良いよね。オウムとかフクロウとか。
まぁ僕がお世話する訳じゃないから、あまり無責任な事は言えないけど」
伊吹が口にしてしまった以上、侍女達の中では決定事項になるのだが、伊吹はまだその事に気付いていない。
十一、十二階もぶち抜きでミニシアターが二ヶ所設置され、カラオケも楽しめるよう準備が進められている。
ただ、現状で伊吹が思い浮かべるような歌が配信されていないので、新レーベルである藍吹伊音房の本格始動までは使用される予定がない。
「映画、映画なぁ。そこまで手が回らないなぁ」
「世界中からVCスタジオへ仕事の依頼や技術協力の依頼が来てるよ?」
藍子がそう伊吹へ伝えるが、本当に大切なのは映像技術ではなく脚本であると伊吹は思っている。
まだまだ伊吹以外が作る娯楽で、伊吹が楽しめるものが出現していない為、まだまだ走り続けないとならないと思う反面、当分は誰にも追い抜かされないよう走り続けようと思う伊吹であった。
ちなみに、翔ノ塔の屋上はヘリポートになっており、今後藍吹伊通り二丁目が出来た際はここから移動する事になる予定である。
空音と一夜を共にした訳だが、初めての行為で空音が気絶してしまい、結局は藍子と燈子と智枝の三人掛かりで伊吹を鎮める事になってしまった。
空音は美子と京香によって身体を洗われた後、客室へ寝かされた。
そして翌朝。せっかく来たのだからと、伊吹は立食交流会が催された十二階建てのこのビルの室内を見て回る事にした。
「こちらは翔ノ塔と名付け、主に来客対応用に改装致しました。
一部、ご主人様のご要望も取り入れております」
智枝の案内で一階部分から見て回る。一部まだ内装や家具の搬入が出来ていないところもあるが、ほとんどの部屋は完成している。
「他の部屋もまんまラブホだな」
空音を連れ込んだ部屋を含め、複数用意された小部屋は、伊吹が婚約者達にせがまれて話したラブホテルの雰囲気そのままとなっている。
実際には伊吹は利用した事がないのだが、アニメやドラマなどで見た通りの出来映えに驚いている。
「ちゃんと電車の車両内部も再現してるのか……。
智枝、そこに立って。うーん、もうちょっと足を開いて」
ご丁寧に下が鏡張りになっていたりと、なかなか作り込まれている。
ぶち抜きとなっているパーティー会場部分以外の五階分が化粧部屋か、もしくはラブホの部屋にされている。
自分以外が利用する事はないだろうと思うと、庶民派が抜けない伊吹には少しもったいないなと感じてしまう。
六階部分と七階部分もぶち抜かれ、全体がゲームセンター風になっている。
アーケードゲームについては完成しておらず、ボーリング場も試作段階の為に導入出来ていない。
クレーンゲームとダーツの筐体、卓球台とビリヤード台が設置されており、バッティングマシンとゴルフの打ちっぱなしはネットに向かって打つように工夫されている。
メダルコーナーとして押し板が迫り出して来てメダルを落とす筐体が置かれており、その近くにはスロット台も設置されている。
さらにはカジノテーブルが設置されていて、ディーラー役として伊吹の侍女の一人が立っており、カードゲームやルーレットが楽しめると説明を受けた。
この世界の賭け事も、当然法律で定められたルールに則って行われる為、ビルの一室でお金を掛ける訳にはいかない。その代わりにメダルを賭けて雰囲気を楽しめるようになっているのだ。建前上は。
八、九階はそれぞれ客室となっており、昨日のようなパーティーが行われた際に来客の控え室として使えたり、そのまま宿泊したりが可能な部屋となっている。
年中来客がある訳ではないので、こちらにも伊吹の侍女達の持ち回りによって管理・運営される。
「昨夜はご迷惑をお掛けしまして申し訳ございませんでした」
母親の手を借りながら、空音が伊吹へ謝罪する。
「いや、気にしないで良いよ。最初は皆あんなものだから」
「次は必ず最後までお務めしてみせますわ」
日頃、伊吹の相手を務めている八人の中で、最初から最後まで伊吹の相手が出来る女性はまだ一人もいないのだが、その事は空音には伝えず、伊吹は微笑むのみに留めた。
「これは素晴らしいな」
十階には室内庭園が造られており、喫茶テーブルやバーカウンターが設置されている。
「ご主人様がご実家で草木を愛でておられたからと、侍女の方々の要望がありました」
智枝がこの庭園が出来た経緯を説明する。
「そうなんだ、嬉しいよ。皆さん、ありがとうございます」
伊吹が草木の手入れをしていた侍女達へ礼を伝えると、皆が嬉しそうな表情を浮かべていた。
この侍女達は、伊吹がご近所のおばちゃ……、お姉様だと思っていた者達だ。
「新社屋全体が完成したら、毎日ここでお茶休憩するよ。あと、鳥とか放し飼いに出来たら良いよね。オウムとかフクロウとか。
まぁ僕がお世話する訳じゃないから、あまり無責任な事は言えないけど」
伊吹が口にしてしまった以上、侍女達の中では決定事項になるのだが、伊吹はまだその事に気付いていない。
十一、十二階もぶち抜きでミニシアターが二ヶ所設置され、カラオケも楽しめるよう準備が進められている。
ただ、現状で伊吹が思い浮かべるような歌が配信されていないので、新レーベルである藍吹伊音房の本格始動までは使用される予定がない。
「映画、映画なぁ。そこまで手が回らないなぁ」
「世界中からVCスタジオへ仕事の依頼や技術協力の依頼が来てるよ?」
藍子がそう伊吹へ伝えるが、本当に大切なのは映像技術ではなく脚本であると伊吹は思っている。
まだまだ伊吹以外が作る娯楽で、伊吹が楽しめるものが出現していない為、まだまだ走り続けないとならないと思う反面、当分は誰にも追い抜かされないよう走り続けようと思う伊吹であった。
ちなみに、翔ノ塔の屋上はヘリポートになっており、今後藍吹伊通り二丁目が出来た際はここから移動する事になる予定である。
78
お気に入りに追加
512
あなたにおすすめの小説
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
異世界に転生したと思ったら、男女比がバグった地球っぽい!?
ぱふ
恋愛
ある仕事終わりの帰り道、主人公前田世一は連勤の疲れが祟って車に轢かれてしまった。朦朧とする意識の中、家族や今世での未練に悔見ながら気を失ってしまった。そして、目が覚めると知らない天井でいつもと違う場所でにいて、さらに調べると男女比がバグっていた!?これで前世の未練や夢を叶えることができる!そう思って様々なことに挑戦していこうと思った矢先、ある少女と出会った。ぱっとみは可憐な少女だったが中身はドMでやばいやつだった!?そんな、やばめな少女から逃げようと別の子に話しかけたら次はドSなやばい少女がいて、愛が重い少女に監禁されかけて、ドロドロに甘やかしてくれるお姉さんに溶かされて、この世界の洗礼を受けていく。「助けて〜!この世界やばい人しかいないんだけど!」そんな悲痛な叫びが鳴り止まない過激なラブコメが始まる。*カクヨム様ハーメルン様にも掲載しています*
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
貞操逆転世界ではキモデブの俺の遺伝子を美少女達が狙っている!!!!
お小遣い月3万
恋愛
貞操逆転世界ではキモデブのおっさんでもラブコメ無双である。
美少女達が俺の遺伝子を狙っていて、ハーレムどころの騒ぎじゃない。
幼馴染の美少女も、アイドル似の美少女も俺のことを狙っている。
痴女も変態女も俺のことを狙っている。
イモっこいお嬢様ですら俺のことを狙っている。
お前も俺のことを狙っているのか!
美少女達とイチャイチャしたり、痴女に拉致されたり、変態女に襲われて逃げたり、貞操逆転世界は男性にとっては大変である。
逆にモテすぎて困る。
絶対にヤレる美少女達が俺を落とすために、迫って来る。
俺は32歳の童貞だった。アダルトビデオに登場するようなブリーフ親父に似ている。しかも体重は100キロである。
働いたら負け、という名言があるように、俺は誰にも負けていなかった。
だけどある日、両親が死んで、勝ち続けるための資金源が無くなってしまった。
自殺も考えたけど死ぬのは怖い。だけど働きたくない。
俺の元へ政府の人間がやって来た。
将来、日本になにかあった時のためにコールドスリープする人間を探しているらしい。コールドスリープというのは冷凍保存のことである。
つまり絶望的な未来が来なければ、永遠に冷凍庫の隅っこで眠り続けるらしい。
俺は死んでも働きたくないので冷凍保存されることになった。
目覚めたら、そこは貞操逆転世界だった。
日本にとっては絶望的な未来だったのだ。男性は俺しかいない。
そんな日本を再生させるために、俺が解凍されたのだ。
つまり俺は日本を救う正義のヒーローだった。
じゃんじゃんセッ◯スしまくって女の子を孕ませるのが、正義のヒーローの俺の役目だった。
目覚めた俺は32歳なのに17歳という設定で高校に通い始める。謎展開である。学園ラブコメが始まってしまう。
もしかしたら学生の頃のトラウマを払拭させるために17歳という設定を押し付けられているのかもしれない。
そして俺は初恋である幼馴染の遺伝子を持った女の子と同じクラスになった。
あの時ヤリたかったあんな事やこんな事をしまくれる。絶対に幼馴染とヤレるラブコメ。
目覚めたらハーレムどころの騒ぎじゃなかった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる