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第十三章:三ノ宮伊吹

人工知能開発

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 伊吹とマチルダがコスプレ写真を眺めながら、安藤真智チャンネルの今後の展開について話し合っていたところ、藍子あいこが事務所に顔を出した。

「特に気になる人物がいるから、二人に会ってほしいんだけど」

 世界中からVividColorsで働きたいという人材が面接を受けに来るので、藍吹伊通あぶいどおり一丁目内の中にある一つのビルを面接専用とし、採用担当者を集めて書類審査から二次審査などを経て、社長面接までの全てがそのビルで行われている。

 VividColorsとしては求めている人材を特定せず、学歴や職歴、保有資格等は一切不問。我こそはと思う者は応募書類を送ってほしいという形で募集をしている。
 届いた応募書類を採用担当者によって、経理や法務、最先端技術から伝統芸能まで様々な人材がふるいに掛けられている。

 採用された場合はVividColors内の子会社や各部署へ割り振られるが、特に重要な人材と思われる場合、特に転生者の可能性があると思われる場合については、採用決定前に伊吹が直接会って話を聞く事になっている。


 大会議室に主要な人員が集まったと報告を受け、伊吹が大会議室へ向かった。

「はじめまして。わたし、イリヤ・ブラックストン。人工知能のけんきゅう、してます」

 先に大会議室に通されていたイリヤが立ち上がって、頭を下げる。イリヤは白髪のロングヘヤーで、瞳の赤。背は欧米人にしては低い。

 伊吹は念の為にドット絵お面を付けており、ついて来たマチルダは出来るだけ口を開かないようにと担当侍女から指示を受けている。
 イリヤの目線は伊吹ではなくマチルダに向けられており、目がらんらんと輝いているのが分かる。鼻息も荒く、鼻からふんすふんすと白い吐息が見えるかのようだ。

「人工知能ですか。それはとても興味深いですね」

「とってもおかね、かかる。まえのかいしゃ、だめ。でてけ。やめた」

 マチルダが口を開けかけたが、その前に弁護士でマチルダの母親でもあるメアリーが、英語でイリヤに事情を確認した。

 以前勤めていた会社で開発責任者だったイリヤだが、限られた予算内ではなかなか結果が出せず、社内でくすぶっていたそうだ。
 会社幹部へ予算増額を求めたが、すぐに結果が出ないものにこれ以上の投資は出来ないとして却下された。
 その折りに、YoungNatterヤンナッターへ投稿した安藤真智の画像が目に入り、衝撃を受けたと話す。

「副社長、彼女も転生者だと言っています」

「……なるほど、だから真智のコスプレ写真に反応したのか」

 イリヤは、元々ある程度の前世知識がある事を自覚しており、そのお陰で大学も飛び級で卒業し、十八歳にして博士号も得る事が出来た。
 前世の知識を活かして人工知能の開発に携わっていたところ、真智のコスプレを目にし、日本のオタク文化が好きだった前世の記憶を完全に思い出したのだと話している。

「マチルダとは違って、前世も米国人なのか。転生者の共通点が見えてこないな。
 まぁそれは置いておくとして。
 イリヤさん、人工知能開発の予算として、どれくらい必要ですか?」

「One billion dollars」

「十億ドル!?」

 イリヤの口から出た金額を聞いて、伊吹が驚愕する。

「それ……、むぐっ!?」

 マチルダが何か話そうとしたところ、メアリーの手によって口を塞がれてしまった。

(十億ドル……、今のドル円レートは確か九十円。って事は九百億か。
 VividColorsが先月受け取ったYourTunesユアチューンズからの収益は五十億。
 一年半、いやこの先収益が鈍化すると考えて二年、いや三年分か?
 とても手が出せる金額じゃないな。けど、この先の事を考えるに絶対に手に入れたい技術だ。
 どうする……? イリヤはマチルダの事を気に入ってそうだ、何とかマチルダを仕向けて取り込むか?
 いや、精神年齢は別として、まだ子供に対してそんな事をさせるのはどうなんだ。
 むしろ俺がイリヤを寝室に呼んで……、ってそれもどうなんだ!?)

 伊吹が腕を組んで考え込む姿を見て、イリヤを含めた皆が言葉を発せずに見守っている。
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