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第十二章:安藤真智デビュー

コスプレ写真を撮ろう

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 伊吹いぶきはメアリーとマチルダの親子に一軒家を与えた。
 マチルダはVividColorsヴィヴィッドカラーズにおいて重要人物であると周知し、伊吹が自らの侍女に頼んで、マチルダ担当侍女として二人付ける事になった。

 メアリーはもちろんの事、マチルダもビルへは出入り自由とし、マチルダが望んだ為配信部屋として空いていた一部屋を与えた。

 それからはマチルダは寝起き以外をビル内で過ごす事になった。
 身体がまだ成長しきっていないからか、夜は起きていられない。
 本人はずっと伊吹のそばにいたがったが、伊吹はマチルダの成長しきった身体を楽しみにしていると伝えると、しぶしぶ家に帰るようになった。


「イブイブ! どう? 似合うやろ!!」

 伊吹が事務所で打ち合わせをしていると、白い狩衣姿のマチルダが入って来て、その場でくるくると回ってみせる。

「おぉ、いいじゃん。うちの侍女さんが縫ってくれたの?」

「そう! 副社長みたいなん欲しいって言うたらちゃちゃっと縫ってくれたで!」

 バリバリの関西弁を喋りながらはしゃいでいる白人美少女マチルダに、伊吹と打ち合わせをしていた多恵子たえこ美羽みうが圧倒されている。

「あー、マチルダ。この世界では関西弁があんまメジャーじゃないから、僕以外の人がいる時は標準語使ってくれない?」

 お笑い文化が発展しなかったこの世界において、関西弁は全国で通じる言葉にはなり得なかった。
 そして、この世界における関西弁と伊吹達の前世世界の関西弁は、かなり違ったものになっている。

「んー、まぁイブイブの頼みやったらしゃあないな。
 んんっ、イブイブのお願いなら仕方ないでござるな、ドュフフ。
 これで良き?」

 良くはないが、意図は伝わっているので伊吹はそれ以上ツッコまない事にした。

「やっぱりうちの侍女さんは良い仕事するなぁ。ありがとうございます」

 マチルダ付きの侍女達が恐縮するが、こういうのはしっかりと声に出して伝えないとならない。

「なぁ、副社長と一緒に写真撮りたいねん、のだけど、よろし?」

「ん? うん、良いよ。
 生配信で着ている狩衣に着替えたら良いの?」

 伊吹はコスプレ文化にあまり詳しくないが、同じ世界観のコスプレをしている者同士で撮影する事があると聞いた事がある。

「そそ、あわせしよっ」

 多恵子と美羽が二人のやり取りを興味深そうに見守っている事に気付く伊吹。

「どうせなら乃絵流のえると美羽も一緒にコスプレしよう」

「喜んで!」

「……はいっ!」

 多恵子は乃絵流と呼ばないと面倒な事になるので、伊吹は常に乃絵流と呼ぶようにしている。
 美羽も以前より態度が柔らかくなってきているので、良い二人も巻き込む事とした。

「じゃあどこか空いてる部屋を撮影スタジオにしてしまおう。
 琥珀こはく、諸々の手配をお願いしてもいい?」

「かしこまりました」

「え、写メでパシャっとやったらアカンの?」

 伊吹は身内のお楽しみで留めるつもりはない。大々的にコスプレ文化を発展させるべく、マチルダへ向き直る。

「マチルダにはこの世界でのコスプレイヤーの第一人者になってほしい。
 まずは副社長姿の僕と一緒に撮った写真をバズらせる。そこからフリフリのドレスを着てもいいし、前の世界のキャラコスでもいい。

 何でも自分が好きだと思う、可愛い、キレイ、カッコイイと思うコスプレをして、写真を投稿していかないか?」

「えっ、てことは第一の少女にも第二の少女にもなれるて事!?」

「いや、どっちかって言うとメガネの新キャラの方じゃない?
 中身十歳じゃないんだし」

 などのやり取りを経て、その日は一旦お開きとした。衣装を用意する時間が必要だからだ。
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