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第十一章:GoolGoalとのゴタゴタ

大喜利の問題に隠された意図

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 キャリーは違和感がないほど日本語を流暢に操っている。たった二ヶ月で身に着けたものであるとはとても思えない。
 礼儀作法も日本人に劣らないように見受けられ、伊吹いぶきは自分の目論見が成功したのかも知れないと、内心震えている。

「まるで忘れていた日本語を思い出したような感覚なのです。
 日本に来て、貴方にお会いすれば何か分かるかと思い、ジニーについて来ました」

(焦るな。ゆっくり確認しよう)

「なるほど……。
 ちなみに『光秀の大喜利よ今夜もありがとう』を聞かれた事は?」

「毎回拝聴しております。
 ですが、まだ読み書きが出来ないので、副社長が出されたお題に答える事までは出来ていません」

 キャリーは伊吹が出題した、例の五十問の大喜利には回答出来ていないと答える。

 伊吹は少し考えて、紫乃にキャリーを別室に通して、出場者選別の為の大喜利問題を読み聞かせるように指示を出した。

「重要な問題です。焦らず、ゆっくり思い出しながら答えて下さい」

「分かりました。失礼致します」

 キャリーは紫乃に伴われて、別室へと向かった。

「あの、お兄様。質問をしてもよろしくて?」

「あぁ、乃絵流のえる

 乃絵流こと多恵子たえこが怪訝そうな表情で伊吹へ質問する。

「あの大喜利の問題には何か隠された意図がおありなのですか?」

「お、良く分かったね。
 僕のように並行世界の記憶を持ったものを探す為の質問内容になってるんだ」

 伊吹は大喜利というお笑い文化を広めると共に、それを隠れ蓑にしつつ転生者を集める為に大喜利の問題を公開しているのだ。
 少なくとも伊吹の父親という自分以外の転生者が存在している以上、この世に二人しかいないという事は考えにくい。

 さらに、この世界の科学技術の発展具合に歪みが生じていると感じてる伊吹は、自分のように前世の記憶を持って生まれた者達が、様々な分野の発展に寄与している為だと予想している。 

 現在この世界に生まれるのはほぼ女性であり、伊吹のように男性特権を使って大々的に技術革新を働き掛けるほどの背景を持たない為、そこまで目立っていないのだろうと考えている。

 今までも転生者を名乗る面接希望者はいたが、じゃあ何を覚えているかと確認すると、ほとんどが嘘かそれに近いものだった。
 伊吹は大喜利に見せた前世の記憶チェックシートを作成し、そういった者を事前にふるい落とせるようにしたのだ。

「あの、副社長。
 ワタクシも一人思い当たる人物がいるのですが……」

 伊吹と多恵子の会話を聞いていたメアリーが、恐る恐る手を上げる。

「前世の記憶を持っている可能性がある人物?」

「はい、その……、ワタクシの娘なのですが」

 伊吹はこの後、事務所へ連れて来てもらうようお願いをして、話題を新しい動画共有サービスについてへと戻す。

「ジニーさん。YourTunesユアチューンズを円満退職されるとして、いつから弊社へ来られますか?」

 ただでさえVividColorsとGoolGoalの関係は良くない。
 ジニーが辞表を提出し、円満に退職を認められてから、改めて日本に来てもらった方が良いだろうと伊吹は考えたのだが。

「えんまん?
 いますぐ、やめられる、です。
 ふくしゃちょう、しゃしん、いいです?」

 ジニーは伊吹と一緒に写真を撮って良いか確認した。
 美哉と橘香が待ったを掛けたが、ドット絵のお面を付けたままで良いとジニーが言ったので、しぶしぶ了承する。
 ジニーがどうせならキャリーも一緒の方が都合が良いと訴えたので、別室からキャリーを呼び戻し、三人で写真を撮る事になった。

「Cheese♪」

「いやお面被ってるし」

 ジニーのスマホを使い、伊吹を真ん中とし、ジニーとキャリーが両隣に立っている写真を橘香が撮影した。

「つぶやきましたー」

 ジニーはその場で三人の写真をYoungNatterヤンナッターで呟いた。
 英語で『副社長は実在した!』という文章と共に呟かれたこの写真は、瞬く間に全世界へ拡散され、そしてジニーとキャリーは即日YourTunesの執行役員を解雇された。

 この事により、GoolGoalとのゴタゴタが一時中断となった。
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