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第十一章:GoolGoalとのゴタゴタ

取り下げ

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GoolGoalゴルゴルの幹部がYourTunesユアチューンズ公式アカウントから生配信を行い、VividColorsヴィヴィッドカラーズに落ち度があるとしたYoungNatterヤンナッターの呟きを正式に取り下げると発表しました。
 VividColors副社長の会見配信がもたらす影響を無視出来なかったと思われ、YoungNatterにてVividColorsの手続きに問題があったと公表した幹部を降格させ、別の幹部によって今回の生配信を行われました。

 なお、生配信中にVividColorsならびに副社長への謝罪については触れられず……』

(自分に関係する事がテレビで報道されるって、何か不思議な感覚だなぁ)

 事務所のテレビにて、伊吹いぶきが他人事のように報道番組を眺めている。

「取り下げるだってさ。
 まるでこっちが圧力を掛けたみたいな言い方だな」

「掛けたのよ、いっくんが。わざと生配信を切って、さもYourTunesに強制終了させられたかのような演出までしてね」

 伊吹は燈子とうこに指摘されながらも、機嫌良さそうに笑顔を見せる。
 GoolGoalはVividColorsへの収益支払いの振り込みが遅れたのは、VividColorsの手続きに問題があったとした発言を取り消したが、何故支払いが遅れたかについては調査中としている。

 生配信で述べた通り、伊吹はこれ以上追及するつもりはない。向こうから殴り掛かって来たので、ひょいと避けただけだ。
 こちらが避けた事で殴り掛かって来た相手が転んで怪我をしようが伊吹には関係のない事である。

「失礼するよ」

「失礼するんやったら帰ってー」

 ぎょっと目を見開いて伊吹を見つめる福乃ふくの。その場の空気が冷えていくのが伊吹にも分かった。
 伊吹は慌てて手を振って釈明する。

「すみません、福乃さん。元いた世界の冗談でして」

「……何だい、驚かせないでおくれよ。ついに伊吹様の本性が出たのかと冷や汗をかいたよ」

(冗談が通じない……)

 伊吹はついつい気を抜くと、前世のノリが出てしまう。相手が美哉みや橘香きっかであれば問題ないが、福乃くらいの距離感の相手であれば、今のようによろしくない受け取り方をされてしまう恐れがある。

(大喜利だけじゃダメだなぁ)

 伊吹は大喜利だけでなく新喜劇や漫才、コントや小演劇なども普及させなくてはならないと思った。しかし伊吹一人でお笑い文化を発展させるのはとても難しい。
 その件については改めてゆっくり方針を考える事とし、伊吹は福乃に向き直った。

「儲かりまっか?」

「ん? それも冗談の一つかい?
 儲かるどころの話じゃないよ、三十兆円分の大商いだからね。
 もちろんうちだけの儲けじゃないが、お金以外にも得るものがあったからね。伊吹様には頭が上がらないよ。
 藍吹伊通あぶいどおりの二丁目でも作るかい?」

 藍吹伊通り一丁目を広げ過ぎて大通りに面してしまったら、警備の上で手間が掛かるのでこれ以上の拡張は難しい。
 もしも土地や建物が必要なのであれば、一丁目から離れた場所で用意する必要がある。

「一丁目の開発でさえまだまだなので、その時に相談に乗って下さい」

「何でも言っておくれよ、ヘリさえあれば区画間の移動は自由だよ。
 さて、そろそろ時間だね。藍子あいこ、行くよ」

 福乃は藍子と紫乃しの、そして弁護士のメアリーを伴い、GoolGoalの新たな代理人と面会する為に、自らが経営する喫茶店へと向かった。
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