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第十一章:GoolGoalとのゴタゴタ

GoolGoalの代理人

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GoolGoalゴルゴルの幹部がYoungNatterヤンナッターの呟きで、現在状況を確認中だと発表しました。
 振込手続きは通常、YourTunesユアチューンズの日本支社の担当者が行うとの事ですが、勤務時間外の為連絡が取れず、本当に入金されていないかどうかの確認もまだ取れていないとし……』

「まるでこっちが嘘を吐いているかのような言い方だな」

 安藤あんどう英知えいじが生配信で、YourTunesから安藤さん家の四兄弟チャンネルへ対して、収益の振り込みが確認出来ていないと公表したその翌朝、報道関係はその内容で持ち切りとなっている。

 以前、藍子あいこの顔を公表したり、生配信の内容を無断で放送したりしていたが、VividColorsヴィヴィッドカラーズとして正式に無断使用するなという内容の動画を公開した為、現在は控えられている。

 それに対する報道関係者の意趣返しなのか、法廷画家に描かせたイラストをイメージ画像として使用して、藍子や副社長や安藤家を表現し、放送している。
 まるでこちらが犯罪者であるかのような印象操作に、女性達が憤慨している。

「入金はまだみたいだね」

 藍子あいこが念の為、スマートフォンの銀行アプリで残高を確認したところ、昨日と変わりがなかった。

「おかわりかなぁ」

「いっくん、おかわりって?」

 燈子とうこが伊吹に質問をしたのと同時に、福乃ふくのが事務所へと入って来た。

「いやぁ上手く行ったね。がっぽり稼がせてもらったよ」

「それはそれは」

 ニヤニヤと笑みを浮かべる福乃と伊吹。
 そんな二人のやり取りを見ても、まだピンと来ていない様子の藍子と燈子。

「つまり、Alphadealアルファディールへ空売りを仕掛けたという事でよろしいでしょうか?」

 智枝ともえが福乃へ確認する。

「そうだよ。うちだけじゃなく信用出来るところ複数に声を掛けてね」

「生配信中に一気に五パーセントも値下がりしたから、笑うの必死に我慢してましたよ」

「いや我慢出来てなかったよ、噴き出してたじゃないか」

 GoolGoalゴルゴルが収益の未払いとして火を付けたのに対し、伊吹と福乃が組んで大火事へと発展させた今回の騒動で、GoolGoalの持ち株会社であるAlphadealアルファディールの株価は一時七パーセントも下がった。

 空売りとは、株取引をまず売りから入り、安くなったところで買い戻して差額を利益とする取引方法だ。
 Alphadealの時価総額は約二兆ドル。日本円にして約二百兆円なので、一時とはいえ十四兆円が吹き飛んだ計算になる。
 今は多少値を戻し、前日比マイナス三パーセントで落ち着いている。

「皇国からAlphadealを売り浴びせるのに合わせて為替も動くからね。
 Alphadealだけじゃなくアメリカ全体でちょっとした騒ぎになってるよ。
 いらない喧嘩を売るからだ」

 福乃が主導し、宮坂家や宮坂財閥系列、そして宮坂財閥と近しい個人資産家や企業などはAlphadeal株の空売りだけでなく、ドル円の為替取引でも莫大な利益を上げている。

「朝方に私のスマホにGoolGoalの代理人から何度も着信があったんですけど、伊吹に言われて出てないんです。
 大丈夫なのでしょうか?」

 ご機嫌な様子の福乃に、藍子が尋ねた。

(へぇ、伊吹に言われて、ねぇ。
 藍子もなかなかやるじゃないか)

 福乃は藍子が伊吹を呼び捨てした事、朝方に一緒にいた事には触れず、大丈夫だと頷いてみせる。

「代理人ならこっちに向かってる最中じゃないか? 直接話せばいい。
 何なら私も立ち会わせてもらうよ」

「じゃあ僕もドット絵お面付けて……」

「「ダメです」」

 すかさず待ったをかける美哉みや橘香きっか

「ご主人様。福乃様にお立ち合い頂くのですからご心配される必要はないかと」

 智枝ともえからも釘を刺される。

「いや、心配とかじゃなく単純に面白そうじゃん」

「なおの事ダメです」

 という事で、伊吹は事務所でお留守番となった。
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