転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを

なつのさんち

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第九章:事業拡大

真相

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「ハム子の件ですか?」

 伊吹がテレビを指差してそう尋ねると、福乃は頷きながらソファーへ座る。

「警察の知り合いから聞いたんだが、行方不明になってる社員いるだろう?
 藍子あいこ達と弁護士事務所で打ち合わせた奴なんだけどね」

「あぁ、やたら喧嘩腰で話をしてたっていう社員?」

「そう。どうやら口封じに殺されたようだよ」

 智枝が驚いて声を上げる。伊吹は口封じとはどういう事だ、と考えていたが、すぐに福乃から詳しい説明がされる。

「他国の組織に使い捨てにされたんだよ。男性Vtunerブイチューナーを名乗るYourTunerユアチューナーが出現して、本物なのかどうか確かめる為の道具にされたのさ。
 恐らくハム子は他国に利用されてたなんて気付いてないだろうね。男性憎しの感情につけ込まれたんじゃないかい?」

 目立つ男性の出現は、他国にとって脅威になり得る。女性ばかりの国では競争原理が働きにくく、国力が上がりづらい状況になる。
 良い言い方をすれば調和を重んじて平均的に幸せが与えられるが、悪い言い方をすれば成長率が鈍くなる。

 そんな状況の中に活躍する男性が登場すると、数少ない男性が頑張っているのだから私達も負けていられないという対抗意識を持つ集団と、彼をお支えしなければという献身的な考えを持つ集団とが発生し、お互いを高め合って大きなうねりを作って国力が向上すると考えられている。

 自国であれば喜ばしい事だが、他国、それも日本でそれが起こってしまうと困る国がちょっかいを出し、伊吹のやる気を削ぐべくハム子をけしかけた、というのが福乃の推測のようだ。

「向こうさんも心中穏やかではないだろねぇ」

 福乃は、伊吹の出現によってすでに技術革新という形で国力を増そうとしている現状を確認し、これ以上は刺激せず一旦手を引く事にしたのだろうと話した。

「あれだけの技術力を見せられたんだ。本国に持ち帰って対応策を練るんじゃないかね」

「あれだけの技術力ってどれの事ですか?」

「合成音声って言うのかい? すごい技術を確立させたね」

 あぁ、と頷いて笑う伊吹。

「あれは録画ですよ。事前に撮影しておいた動画を生放送中に流しただけです。
 信長が敦盛を舞いながら画面から出て、誰も映ってない時間があったでしょう?
 あそこまでは録画で、光秀が這って戻って来たところからが生です」

「……何でそんな事をしたんだい?」

「いや、あそこまで技術力の差を見せつけられたら心が折れるだろうと思って」

 はぁ、と福乃がため息を吐く。

「その事はまだ外部へ漏らさないでおくれよ」

 この説明を聞かない限り、本人がいなくても男性の声が出せる技術があると勘違いさせ続ける事が出来る。
 そしてさらに言うと、今まで生配信していた安藤さん家の四兄弟は全て、この合成音声を使っていたのではと疑わずにはいられない。
 Vtunerの中の人など、そもそもいなかったのではないか。他国には確かめる術がない。
 結果的に他国の組織を撃退したのだから良しとするか、と福乃は半ば無理矢理納得する。

「でも近いうちにあれくらいの事が出来るようになりますよ。
 そのうちこのビルでは手狭になると思うんですよね。どうしましょうか」

 伊吹が福乃へ笑い掛ける。憎たらしいくらいに爽やかな笑顔だ。

「……その時はこの間の借りを返すさ」
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