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第八章:続、三ノ宮家と宮坂家

五人の未来

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 伊吹いぶきの口から自分達二人との結婚の話が出て、藍子あいこ燈子とうこは息を呑んだ。
 二人は福乃ふくのから、宮坂家の娘の中から二人を選んで嫁に貰ってほしいと、伊吹に話をしたと電話で報告を受けていた。
 藍子も燈子もイサオアールの社員から安藤四兄弟とハム子との対談の話に気を取られて、それどろこではなかったのだ。

「おば様からお兄さんに話があったんだってね。
 弁護士事務所からの帰り道に、おば様から報告の電話を貰ったよ」

「別に私達二人じゃなきゃダメって事はないんだ。
 宮坂には他にも、いっぱい年頃の娘がいるの。お見合いパーティーを開いて、伊吹さんのお眼鏡にかなう子がいるかも知れない。
 私達みたいに年上じゃなくて、中学生や高校生もいるよ?」

「えっ!? いや、年下はちょっと……」

 この世界では、生理が始まった女性であれば男性の結婚の対象となる。中学生で嫁入りするのはおかしい事ではないのだが、前世の一般常識が邪魔をして、伊吹としては中学生や高校生は受け入れがたいところだ。

「同い年や年上だっていっぱいいるよ?
 お兄さんの愛情が自分達に向かなくっても、文句は言わないはずだから……」

「ちょっと待って!
 ハム子との対談からだいぶ話がずれてるよ……」

 話をずらしたのは伊吹なのだが、話の流れを変える為に無理矢理話題を戻す。

「ごめん、僕が顔出ししたら責任を取って結婚してもらうって言ったのは取り下げる。
 冗談だとしても言って良い事じゃなかったね」

 伊吹は藍子と燈子の口ぶりから、伊吹が誰と結婚しようが美哉みや橘香きっかを優先するのだろうと受け取られている事を察した。

「ハム子との話は一旦置いおてこう」

 伊吹は小さく息を吐き、咳払いをしてから藍子と燈子を見つめる。

「この際だから正直に言うよ。
 僕は美哉みや橘香きっかを愛してる。心からね」

「それは、うん。すごく羨ましいよ」

「あれだけ雰囲気出されてたら、さすがに分かるよ」

 藍子と燈子が苦笑する。

「僕は二人と結婚したい。けど二人は法律上、僕の第一夫人にも第二夫人になれない。
 いずれ条件を満たした人達と結婚しなければならないというなら、僕はすでに出会っている藍子さんと燈子さんが良いなって思ってる。
 出会ってからひと月も経ってないけど、二人となら楽しく明るい家庭が築けると思うんだ。
 もちろん、美哉と橘香の事も大事に思ってくれると信じてる」

 そこまで言って、酷い言い方をしているんじゃないかと気付き、伊吹が慌てて弁明する。

「あの、決してあーちゃんととこちゃんを蔑ろにするつもりはないからね!
 二人の人柄とか、僕の侍女や執事に見せる気遣いとか、全部含めて好きだと思ってるからこそだからね!!」

 伊吹に面と向かって好きだと言われ、藍子も燈子も顔を赤らめる。

「ああああの! 美哉ちゃんとも橘香ちゃんともいっぱいお話してるんだ。
 私達、すでに仲良しだから安心してほしいの!」

 四人は伊吹が知らないところで仲を深めていたと聞かされ、伊吹は美哉と橘香に顔を向ける。
 お澄まし顔で控えているように見える二人だが、伊吹は二人の顔が赤いのに気付いた。

「あたしのあーちゃんがお兄さんと結婚した時は、お兄さんと自分達との関係を認めてほしいって、お兄さんがいないと生きて行けないって涙ながらにお願いされちゃったら、ねぇ?」

「ちょっととこちゃん、それは内緒にしようねって言ったでしょ?」

 燈子に暴露され、美哉と橘香が羞恥からスカートの裾をぎゅっと握り締める。
 伊吹の手前、そして将来的に奥様となる二人に対して、強く抗議が出来ないのだ。

「じゃあ、ハム子との件が落ち着いたら、正式に婚約を結ぶって事で良い?
 あーちゃんととこちゃんを蔑ろにするつもりは全くないけど、多分二人の目の前で美哉と橘香とイチャイチャイチャイチャすると思うんだ」

「その分私達ともイチャイチャしてくれるなら、喜んで」

「むしろお兄さんと結婚出来るなんて、何と言えば良いか……」

 伊吹はソファーから立ち上がり、二人を抱き締めて耳元で囁く。

「ごめん、先に美哉と橘香を抱くよ?
 でも、二人の事もいっぱい抱くから、許してくれる?」

「「ずるい、本当にずるい!!」」



 少し離れた壁際で、智枝ともえが白目を剥き、奥歯を噛み締めながら耐えていた。
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