98 / 243
第八章:続、三ノ宮家と宮坂家
独立騒動の真実
しおりを挟む
配信中に全裸土下座を披露してしまった伊地藤玲夢を心配し、藍子が自宅まで迎えに行った。
家に一人にしておくと、何をしでかすか分からない精神状態だと判断したからだ。
念の為に燈子が事務所に残っておくと申し出たので、伊吹はシャワーを浴びて寝る事にした。
そして翌朝、玲夢に四階の空き部屋を宛てがい、本人が落ち着くまで話を聞いていた藍子が朝食を終えた伊吹の元へ報告しにやって来た。
「なるほど、元々独立を言い出したのは玲夢じゃなく仁多賀絵夢と美那須来以夢で、その裏で人気YourTunerのハム子が糸を引いていた、と」
ハム子は社会の闇を暴くと称して祭りのテキ屋へ突撃したり、路上で喧嘩している女性達に割って入って仲裁するなど、割と過激な内容の動画を投稿している人気YourTunerだ。
元々、絵夢と来以夢はVividColorsからデビューする以前からハム子と繋がっており、二人に玲夢を焚き付けさせて、独立騒動を起こした。
ハム子の目的は配信機材を全て手に入れる事だったようだ。VividColorsの金で購入したのではなく、各配信者に購入代金を支払わせたのだと思っていたようで、その勘違いを絵夢と来以夢も訂正していなかった事で、ここまで騒動が大きくなった原因だったようだ。
ちなみに、配信機材は金を出せば買えるという代物ではなく、宮坂財閥内でのみ購入可能な最新機器だった。
すでに宮坂財閥の中では型落ち品になっており、最新技術の流出という点で藍子が罰せらる事はないだが、その事もあり藍子は親に報告はしても、頼る事は出来なかった。
「じゃあハム子の会社に弁護士を通じて機材を返却するよう連絡するべきだね。むしろ今の時点で向こうから返却するようこちらへ働きかけがないのがおかしいけど」
すでに玲夢がVividColorsへ公開謝罪した事は伝わっているだろ。そして、話の流れ的にVividColorsと玲夢の間で話し合いが持たれるであろう事は想像出来るはずだ。
今日中に向こうからの行動がないのであれば、こちらから法的手段に訴えるしかないだろ。
とりあえず明日には、ハム子の会社であるイサオアールと、ハム子の会社へ行かなかった元二期生達へ弁護士を通じて機材を返却するよう連絡する事とになった。
「一人には出来ないから、しばらく四階で寝泊まりしてもらおうと思うの」
藍子は玲夢をこのビルに置いておきたいと話す。
「宮坂警備保障が問題ないと判断するなら、僕としても大丈夫だよ」
玲夢の自宅にある配信機材に関しては、業者を手配して今日中に引き取る予定だ。
「一晩明けた後の様子はどう?」
「落ち着いてはいるの。けど、VividColorsへの償いはしたい気持ちはあるけど、今後どうやって償えば良いのか分からないって言ってて……」
とにかく玲夢が配信活動を引退する事は間違いない。全裸土下座配信をして、アカウントを停止させられたのだからどうしようもないだろう。
VividColorsが管理していた伊地藤玲夢の元のアカウントはまだ残っているが、全裸土下座配信をした人間をそのまま復活させる訳にはいかない。
「まぁ本人が出て行くって言うまでビルに置いておいていいんじゃない?
本人が何でもやるって言うんなら、任せたい仕事も何個か心当たりがあるよ」
伊吹は直接被害を受けた訳ではないので、玲夢が自ら配信で藍子へ謝罪した時点でこれ以上追求するつもりはない。
伊吹としては、藍子さえ納得していればそれで良いのだ。
そして、その日のうちにハム子の会社であるイサオアールから連絡が入った。
撮影機材について、ゆめきかくから移籍して来たVtuner達の個人の持ち物だと思っていたが、よくよく確認するとVividColorsからの貸与品であった事が発覚したとの事。
近日中に業者を手配して機材を全て返却したい。そして、イサオアールの人間が直接謝罪へ訪問するとの事だった。
このビルには近付けさせない方が良いと宮坂警備保障が判断したので、面会する場所は弁護士事務所を指定する事になった。
藍子だけでは不安だという事で、燈子も立ち会う事になった。
伊吹はその場に立ち会えないのでこのビルで待機だ。
「またインカム付けて潜入する?」
「いや、そういうのは止めておこう。むしろ向こうが何かしら仕掛けてくる可能性があるから、弁護士さんにしっかりと見張ってもらってね」
(ハム子が配信機材目的で内輪揉めを起こさせたのなら、その報いを受けさせるべきだろうけど、今は様子見だな)
伊吹が玲夢に対して持っていた怒りは、そのままハム子へと向かう事となる。
「昨日の全裸土下座配信がなかったらどうするつもりだったのか詳しく聞きたいところだけど、適当に謝罪を受け入れて機材を返してもらった方がいいんだろうね。
下手したら動画のネタになるかもって喧嘩吹っ掛けられる可能性もあるからなぁ」
「いや、どうだろう。弁護士事務所で会うんだから、そこまではしないと思うけどなぁ」
「甘いよ、あーちゃん。優しくしてたらつけ上がるんだから、気を引き締めていかないと。
向こうがどうにかお兄さんを引きずり出そうとしたら面倒な事になるよ。何言われてもお断りしますって言うくらいじゃないと」
(あ、これ何かのフラグになんじゃね?)
伊吹の勘はよく当たるのだ。問題が一つ解決して、さらに一つの問題がやってくる。世の中とはそういうもんである。
家に一人にしておくと、何をしでかすか分からない精神状態だと判断したからだ。
念の為に燈子が事務所に残っておくと申し出たので、伊吹はシャワーを浴びて寝る事にした。
そして翌朝、玲夢に四階の空き部屋を宛てがい、本人が落ち着くまで話を聞いていた藍子が朝食を終えた伊吹の元へ報告しにやって来た。
「なるほど、元々独立を言い出したのは玲夢じゃなく仁多賀絵夢と美那須来以夢で、その裏で人気YourTunerのハム子が糸を引いていた、と」
ハム子は社会の闇を暴くと称して祭りのテキ屋へ突撃したり、路上で喧嘩している女性達に割って入って仲裁するなど、割と過激な内容の動画を投稿している人気YourTunerだ。
元々、絵夢と来以夢はVividColorsからデビューする以前からハム子と繋がっており、二人に玲夢を焚き付けさせて、独立騒動を起こした。
ハム子の目的は配信機材を全て手に入れる事だったようだ。VividColorsの金で購入したのではなく、各配信者に購入代金を支払わせたのだと思っていたようで、その勘違いを絵夢と来以夢も訂正していなかった事で、ここまで騒動が大きくなった原因だったようだ。
ちなみに、配信機材は金を出せば買えるという代物ではなく、宮坂財閥内でのみ購入可能な最新機器だった。
すでに宮坂財閥の中では型落ち品になっており、最新技術の流出という点で藍子が罰せらる事はないだが、その事もあり藍子は親に報告はしても、頼る事は出来なかった。
「じゃあハム子の会社に弁護士を通じて機材を返却するよう連絡するべきだね。むしろ今の時点で向こうから返却するようこちらへ働きかけがないのがおかしいけど」
すでに玲夢がVividColorsへ公開謝罪した事は伝わっているだろ。そして、話の流れ的にVividColorsと玲夢の間で話し合いが持たれるであろう事は想像出来るはずだ。
今日中に向こうからの行動がないのであれば、こちらから法的手段に訴えるしかないだろ。
とりあえず明日には、ハム子の会社であるイサオアールと、ハム子の会社へ行かなかった元二期生達へ弁護士を通じて機材を返却するよう連絡する事とになった。
「一人には出来ないから、しばらく四階で寝泊まりしてもらおうと思うの」
藍子は玲夢をこのビルに置いておきたいと話す。
「宮坂警備保障が問題ないと判断するなら、僕としても大丈夫だよ」
玲夢の自宅にある配信機材に関しては、業者を手配して今日中に引き取る予定だ。
「一晩明けた後の様子はどう?」
「落ち着いてはいるの。けど、VividColorsへの償いはしたい気持ちはあるけど、今後どうやって償えば良いのか分からないって言ってて……」
とにかく玲夢が配信活動を引退する事は間違いない。全裸土下座配信をして、アカウントを停止させられたのだからどうしようもないだろう。
VividColorsが管理していた伊地藤玲夢の元のアカウントはまだ残っているが、全裸土下座配信をした人間をそのまま復活させる訳にはいかない。
「まぁ本人が出て行くって言うまでビルに置いておいていいんじゃない?
本人が何でもやるって言うんなら、任せたい仕事も何個か心当たりがあるよ」
伊吹は直接被害を受けた訳ではないので、玲夢が自ら配信で藍子へ謝罪した時点でこれ以上追求するつもりはない。
伊吹としては、藍子さえ納得していればそれで良いのだ。
そして、その日のうちにハム子の会社であるイサオアールから連絡が入った。
撮影機材について、ゆめきかくから移籍して来たVtuner達の個人の持ち物だと思っていたが、よくよく確認するとVividColorsからの貸与品であった事が発覚したとの事。
近日中に業者を手配して機材を全て返却したい。そして、イサオアールの人間が直接謝罪へ訪問するとの事だった。
このビルには近付けさせない方が良いと宮坂警備保障が判断したので、面会する場所は弁護士事務所を指定する事になった。
藍子だけでは不安だという事で、燈子も立ち会う事になった。
伊吹はその場に立ち会えないのでこのビルで待機だ。
「またインカム付けて潜入する?」
「いや、そういうのは止めておこう。むしろ向こうが何かしら仕掛けてくる可能性があるから、弁護士さんにしっかりと見張ってもらってね」
(ハム子が配信機材目的で内輪揉めを起こさせたのなら、その報いを受けさせるべきだろうけど、今は様子見だな)
伊吹が玲夢に対して持っていた怒りは、そのままハム子へと向かう事となる。
「昨日の全裸土下座配信がなかったらどうするつもりだったのか詳しく聞きたいところだけど、適当に謝罪を受け入れて機材を返してもらった方がいいんだろうね。
下手したら動画のネタになるかもって喧嘩吹っ掛けられる可能性もあるからなぁ」
「いや、どうだろう。弁護士事務所で会うんだから、そこまではしないと思うけどなぁ」
「甘いよ、あーちゃん。優しくしてたらつけ上がるんだから、気を引き締めていかないと。
向こうがどうにかお兄さんを引きずり出そうとしたら面倒な事になるよ。何言われてもお断りしますって言うくらいじゃないと」
(あ、これ何かのフラグになんじゃね?)
伊吹の勘はよく当たるのだ。問題が一つ解決して、さらに一つの問題がやってくる。世の中とはそういうもんである。
116
お気に入りに追加
512
あなたにおすすめの小説
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
貞操逆転世界ではキモデブの俺の遺伝子を美少女達が狙っている!!!!
お小遣い月3万
恋愛
貞操逆転世界ではキモデブのおっさんでもラブコメ無双である。
美少女達が俺の遺伝子を狙っていて、ハーレムどころの騒ぎじゃない。
幼馴染の美少女も、アイドル似の美少女も俺のことを狙っている。
痴女も変態女も俺のことを狙っている。
イモっこいお嬢様ですら俺のことを狙っている。
お前も俺のことを狙っているのか!
美少女達とイチャイチャしたり、痴女に拉致されたり、変態女に襲われて逃げたり、貞操逆転世界は男性にとっては大変である。
逆にモテすぎて困る。
絶対にヤレる美少女達が俺を落とすために、迫って来る。
俺は32歳の童貞だった。アダルトビデオに登場するようなブリーフ親父に似ている。しかも体重は100キロである。
働いたら負け、という名言があるように、俺は誰にも負けていなかった。
だけどある日、両親が死んで、勝ち続けるための資金源が無くなってしまった。
自殺も考えたけど死ぬのは怖い。だけど働きたくない。
俺の元へ政府の人間がやって来た。
将来、日本になにかあった時のためにコールドスリープする人間を探しているらしい。コールドスリープというのは冷凍保存のことである。
つまり絶望的な未来が来なければ、永遠に冷凍庫の隅っこで眠り続けるらしい。
俺は死んでも働きたくないので冷凍保存されることになった。
目覚めたら、そこは貞操逆転世界だった。
日本にとっては絶望的な未来だったのだ。男性は俺しかいない。
そんな日本を再生させるために、俺が解凍されたのだ。
つまり俺は日本を救う正義のヒーローだった。
じゃんじゃんセッ◯スしまくって女の子を孕ませるのが、正義のヒーローの俺の役目だった。
目覚めた俺は32歳なのに17歳という設定で高校に通い始める。謎展開である。学園ラブコメが始まってしまう。
もしかしたら学生の頃のトラウマを払拭させるために17歳という設定を押し付けられているのかもしれない。
そして俺は初恋である幼馴染の遺伝子を持った女の子と同じクラスになった。
あの時ヤリたかったあんな事やこんな事をしまくれる。絶対に幼馴染とヤレるラブコメ。
目覚めたらハーレムどころの騒ぎじゃなかった。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる