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第三章:三ノ宮家と宮坂家
ファーストキス
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美哉と橘香と再会し、伊吹は様々な感情が溢れ出て号泣する。
そして二人に抱き締められたまま意識を失った伊吹は、藍子の事務所があるビルの一室に寝かされる事になった。
所属Vtuner達が快適に配信出来るようにと改装されたものの、完成してから一度も使われていない、遮音性の優れた配信部屋。
このビルに住み込みで活動する配信者がいるかも知れないと、藍子が張り切って用意した布団が役に立った。
「……!?」
現在の時刻は朝六時。知らない天井だ、と言う暇もなく伊吹は混乱の最中にいる。
前世でも味わった事のない感覚。口内に何かが侵入し、掻き回している。まるで口から食べられているかのような恐ろしい感触。
顔を背けて逃れられたかと思えば、また反対側から同じように口に舐り付かれる。
「どういう状況!?」
「いっちゃんが悪い」
「悪いのはいっちゃん」
伊吹は幼馴染み二人に無理矢理ファーストキスを奪われてしまったと、半分残念に思い半分安心していた。どちらと先にするべきか、などという長年苦しまされた童貞臭い悩みが解消したからだ。
しかし、ファーストキスだと思っているのは伊吹だけである。
とりあえず一旦落ち着かせてほしいと懇願し、何とかその場を切り抜けた伊吹。美哉と橘香が怒っている理由は分かるし、再会した喜びもある。
伊吹は二人が国立侍女育成専門学校を飛び級で卒業し、国家試験に合格したまでは知っていた。男性保護省の初任者研修を受講する必要があると聞いていたが、伊吹の屋敷が襲撃された前日には初任者研修が終わったとの事。
そして本日より、晴れて美哉と橘香は伊吹付きの侍女となる。
「そっか、じゃあこれからずっと一緒だ。
みぃねぇ、きぃねぇ、よろしくね」
「私達はご主人様付きの侍女です。どうか美哉と呼び捨てにして下さい」
「もう子供同士ではないのです。どうか橘香と呼び捨てにして下さい」
自分達はもう幼馴染みという関係ではない。主従の関係なのだ、と澄ました顔で主張する二人。
その表情がおかしくて、伊吹は笑ってしまう。
「ふふっ。じゃあ二人の主として命令するね。今まで通り、幼馴染みのままでいてほしい。
僕が堅苦しいの苦手だって知ってるでしょ?」
伊吹の命令を聞いて、美哉と橘香が見つめ合う。そして小さく頷き合うと、二人は伊吹の手を取って口を開く。
「どれだけ私達がいっちゃんの事が大好きで、大切で、心から愛しているとしても、結婚する事は出来ない」
「それは小さい頃から知っていた事。心乃春様からも、お母さん達からも何度も何度も言われた。いっちゃんも理解してるはず」
伊吹は二人の目を見ながら、小さく頷く。
「もちろん。でも、結婚なんてただの形式だ。
その、……愛し合っていれば子供だって作れるし」
伊吹は先ほどの二人からの熱烈なキスを思い出し、顔を赤くしている。
「男性は十八歳になり成人すると、可能な限り早急に結婚しなければならない」
「そして、子供を授かるよう努力しなければならない。これは法律で決まってる」
「私達はどっちも、母方三親等以内に男性がいない。第一夫人にも第二夫人にもなれない」
「いっちゃんと私達が馴れ馴れしくしていたら、奥様が良い顔をしない」
そして二人に抱き締められたまま意識を失った伊吹は、藍子の事務所があるビルの一室に寝かされる事になった。
所属Vtuner達が快適に配信出来るようにと改装されたものの、完成してから一度も使われていない、遮音性の優れた配信部屋。
このビルに住み込みで活動する配信者がいるかも知れないと、藍子が張り切って用意した布団が役に立った。
「……!?」
現在の時刻は朝六時。知らない天井だ、と言う暇もなく伊吹は混乱の最中にいる。
前世でも味わった事のない感覚。口内に何かが侵入し、掻き回している。まるで口から食べられているかのような恐ろしい感触。
顔を背けて逃れられたかと思えば、また反対側から同じように口に舐り付かれる。
「どういう状況!?」
「いっちゃんが悪い」
「悪いのはいっちゃん」
伊吹は幼馴染み二人に無理矢理ファーストキスを奪われてしまったと、半分残念に思い半分安心していた。どちらと先にするべきか、などという長年苦しまされた童貞臭い悩みが解消したからだ。
しかし、ファーストキスだと思っているのは伊吹だけである。
とりあえず一旦落ち着かせてほしいと懇願し、何とかその場を切り抜けた伊吹。美哉と橘香が怒っている理由は分かるし、再会した喜びもある。
伊吹は二人が国立侍女育成専門学校を飛び級で卒業し、国家試験に合格したまでは知っていた。男性保護省の初任者研修を受講する必要があると聞いていたが、伊吹の屋敷が襲撃された前日には初任者研修が終わったとの事。
そして本日より、晴れて美哉と橘香は伊吹付きの侍女となる。
「そっか、じゃあこれからずっと一緒だ。
みぃねぇ、きぃねぇ、よろしくね」
「私達はご主人様付きの侍女です。どうか美哉と呼び捨てにして下さい」
「もう子供同士ではないのです。どうか橘香と呼び捨てにして下さい」
自分達はもう幼馴染みという関係ではない。主従の関係なのだ、と澄ました顔で主張する二人。
その表情がおかしくて、伊吹は笑ってしまう。
「ふふっ。じゃあ二人の主として命令するね。今まで通り、幼馴染みのままでいてほしい。
僕が堅苦しいの苦手だって知ってるでしょ?」
伊吹の命令を聞いて、美哉と橘香が見つめ合う。そして小さく頷き合うと、二人は伊吹の手を取って口を開く。
「どれだけ私達がいっちゃんの事が大好きで、大切で、心から愛しているとしても、結婚する事は出来ない」
「それは小さい頃から知っていた事。心乃春様からも、お母さん達からも何度も何度も言われた。いっちゃんも理解してるはず」
伊吹は二人の目を見ながら、小さく頷く。
「もちろん。でも、結婚なんてただの形式だ。
その、……愛し合っていれば子供だって作れるし」
伊吹は先ほどの二人からの熱烈なキスを思い出し、顔を赤くしている。
「男性は十八歳になり成人すると、可能な限り早急に結婚しなければならない」
「そして、子供を授かるよう努力しなければならない。これは法律で決まってる」
「私達はどっちも、母方三親等以内に男性がいない。第一夫人にも第二夫人にもなれない」
「いっちゃんと私達が馴れ馴れしくしていたら、奥様が良い顔をしない」
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