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第一章:土下座女と男装の麗人(男)
所属Vtunerの反乱
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「独立、ですか……」
藍子の話を聞いた上で、何故独立という流れになるのか、伊吹には理解出来なかった。
「はい、独立です。
私の最大の失敗は、所属YourTunerを信頼し過ぎた事。そして、信頼し過ぎた彼女らへ最新技術であり、とても高価でもある撮影機材を貸し出した事です」
一期生として先行してデビューしたVtunerの一人、伊地藤玲夢が同期である仁多賀絵夢・美那須来以夢を連れてVividColorsを脱退し、伊地藤が新たに興した会社、株式会社ゆめきかくで活動を続けると生配信で発表してしまった。
さらに最悪な事に、VividColorsが管理している彼女達の配信アカウントから、新しくゆめきかくでアカウントを作り直したからこちらのチャンネルへ移動してほしいと視聴者へ呼びかけた。
新しいアカウントで新たなチャンネルを作られてしまうと、もう話し合いで解決出来る余地はない。完全な敵対行動である。
「それはまた何と言うか……、常識外れで不義理で理念もない。とても応援しようとは思えない人達ですね」
呆れてそれ以外の言葉が浮かばない伊吹。内輪揉めであれ、視聴者を巻き込むのは明らかな悪手であると感じたのだ。
「それが、そうでもなかったようなんです」
藍子がズレた眼鏡をかけ直し、その後の詳しい経緯を説明する。
「TUUUNの騒動から、VividColorsも同様の印象を持たれるようになってしまったんです。私に言わせれば、TUUUNもVividColorsも会社もさらなる事業展開を考慮しての数字であり、根拠のある数字だったと信じています。
決して特定の誰かが私腹を肥やす為にお金を巻き上げていた訳ではないんです。
でも、世間からは搾取する側とされる側に見えたんでしょうね。その方が分かりやすいし、何より弱い立場の人間を見ると、頑張れと応援したくなるのが人情ですから。
一部掲示板では『現代の本能寺の変』だと面白がる人もいます」
(いや、それって明智光秀の三日天下を揶揄しているのでは?)
伊吹はそう思ったが、前世の記憶に引っ張られて、今世の常識的感覚とは乖離している事を自覚しているので、口には出さなかった。
さらに藍子を追い詰めたのは、最新技術であり、とても高価な機材の所有権についての問題だった。
「彼女達は会社から貸し出していた機材は返さないと言いました。今まで私達から搾取していた分の慰謝料として受け取っておく、と」
「盗人猛々しいとはこういう事に使う言葉なんですね」
少しずつ怒りの感情を露わにし出す伊吹。苛立ちのせいで体温が高くなり、ひいていた汗が再び吹き出して来たので、おしぼりで額を拭う。
藍子は苦笑いを浮かべ、本当にそうですね、と頷く。
「彼女達の所属当初まで遡って収益配分を見直したとしても、最新機材の代金には遠く及びません。当然そんな要求を受け入れる事は出来ません。
元一期生が脱退した事は納得するから、機材は返還してほしいと穏便に事を治めようと呼びかけました。
結果は裏目に出ました。すぐに弁護士に相談するべきだったと今は思います」
元一期生達はVtunerの可能性をその身をもって感じていた。自分達が新たなアカウントで今までと同様に活動を続ける為には、この最新機材がどうしても必要である。
藍子へ機材を返還してしまっては、大々的に脱退劇を演じた意味がなくなってしまう。
どうしても機材を手放したくない元一期生達は、デビュー目前まで迫っていた二期生達を拐かし、問題をさらに大きく、収拾の付かない規模へと悪化させていった。
藍子の話を聞いた上で、何故独立という流れになるのか、伊吹には理解出来なかった。
「はい、独立です。
私の最大の失敗は、所属YourTunerを信頼し過ぎた事。そして、信頼し過ぎた彼女らへ最新技術であり、とても高価でもある撮影機材を貸し出した事です」
一期生として先行してデビューしたVtunerの一人、伊地藤玲夢が同期である仁多賀絵夢・美那須来以夢を連れてVividColorsを脱退し、伊地藤が新たに興した会社、株式会社ゆめきかくで活動を続けると生配信で発表してしまった。
さらに最悪な事に、VividColorsが管理している彼女達の配信アカウントから、新しくゆめきかくでアカウントを作り直したからこちらのチャンネルへ移動してほしいと視聴者へ呼びかけた。
新しいアカウントで新たなチャンネルを作られてしまうと、もう話し合いで解決出来る余地はない。完全な敵対行動である。
「それはまた何と言うか……、常識外れで不義理で理念もない。とても応援しようとは思えない人達ですね」
呆れてそれ以外の言葉が浮かばない伊吹。内輪揉めであれ、視聴者を巻き込むのは明らかな悪手であると感じたのだ。
「それが、そうでもなかったようなんです」
藍子がズレた眼鏡をかけ直し、その後の詳しい経緯を説明する。
「TUUUNの騒動から、VividColorsも同様の印象を持たれるようになってしまったんです。私に言わせれば、TUUUNもVividColorsも会社もさらなる事業展開を考慮しての数字であり、根拠のある数字だったと信じています。
決して特定の誰かが私腹を肥やす為にお金を巻き上げていた訳ではないんです。
でも、世間からは搾取する側とされる側に見えたんでしょうね。その方が分かりやすいし、何より弱い立場の人間を見ると、頑張れと応援したくなるのが人情ですから。
一部掲示板では『現代の本能寺の変』だと面白がる人もいます」
(いや、それって明智光秀の三日天下を揶揄しているのでは?)
伊吹はそう思ったが、前世の記憶に引っ張られて、今世の常識的感覚とは乖離している事を自覚しているので、口には出さなかった。
さらに藍子を追い詰めたのは、最新技術であり、とても高価な機材の所有権についての問題だった。
「彼女達は会社から貸し出していた機材は返さないと言いました。今まで私達から搾取していた分の慰謝料として受け取っておく、と」
「盗人猛々しいとはこういう事に使う言葉なんですね」
少しずつ怒りの感情を露わにし出す伊吹。苛立ちのせいで体温が高くなり、ひいていた汗が再び吹き出して来たので、おしぼりで額を拭う。
藍子は苦笑いを浮かべ、本当にそうですね、と頷く。
「彼女達の所属当初まで遡って収益配分を見直したとしても、最新機材の代金には遠く及びません。当然そんな要求を受け入れる事は出来ません。
元一期生が脱退した事は納得するから、機材は返還してほしいと穏便に事を治めようと呼びかけました。
結果は裏目に出ました。すぐに弁護士に相談するべきだったと今は思います」
元一期生達はVtunerの可能性をその身をもって感じていた。自分達が新たなアカウントで今までと同様に活動を続ける為には、この最新機材がどうしても必要である。
藍子へ機材を返還してしまっては、大々的に脱退劇を演じた意味がなくなってしまう。
どうしても機材を手放したくない元一期生達は、デビュー目前まで迫っていた二期生達を拐かし、問題をさらに大きく、収拾の付かない規模へと悪化させていった。
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