仮想通貨で大儲けしたので勤めている会社を買ってみた

２５：丸投げ

「あぁ、ちょうどその話をしなければならないと思っていたんだ。
　幸坂こうさか君は先ほど専務と名誉顧問から株式譲渡を受けて、筆頭株主になった。
　よろしく頼むよ」

　よろしく頼むよじゃねぇよ！
　適当なんだよ扱いがよ！！
　営業や売り上げが伴わない業務に関しては社長はノータッチですってか。
　確かに専門分野である経理課に任せた方が無難なのは間違いないが、もうちょっと関心を持った方がいいと思う。

「……よろしくと言われても、どうすれば良いのか全く分からないんですが。
　とりあえず一番の問題としてですが、持株会の規約に照らすと個人株主は会員になれないんですよ。
　ですので幸坂には持株会から脱会してもらわないといけないのですが」

「それは持株会と幸坂君の問題だ。
　当事者同士で話し合ってくれ」

　そうなんだけど、確かにそうなんだけど言い方があるだろうよ！
　この社長、ホントに人の気持ちとか都合とか立場とか考えずに喋るよな。
　こんな社長にはならないよう気を付けないと。

「分かりました。
　では幸坂をお借りしますよ」

　山崎課長はそう言って立ち上がり、俺の方に向き直って手招きをした。

「ここでは何だ、小会議室へ行こうか。
　あと、上條さんにも声を掛けて……、おこう」

「いや、僕が内線で呼びますよ」

　俺に呼ばせようとして、いやいやこいつ筆頭株主だからそんな事させられねぇかと思い直したんだろうけど、そういう気遣いをさせて申し訳ない気持ちになる。
　社長がそこらへんを上手くやってくれるとスムーズにみんなが対応してくれると思うんだけど！
　いや、元はと言えば俺が専務の株買うよって手を挙げたのがきっかけか。

　どんな手順を踏んだとしても、平社員である俺が会社のオーナーになるんだから、みんな戸惑うのには変わりないのかな。