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14:幹部会議

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 はい、という訳でね。
 現在大きい方の会議室に幹部を集めてお話し合いをしている訳ですが。

「おかしいでしょう!?
 何で平社員が次の社長なんだ!!」
「最近入って来たばかりのペーペーじゃないか!!」
「営業の何たるかも知らん事務屋に偉そうにされたら堪らん!!」

「私と田沼たぬま君が決めた事だ、従ってもらおう」

 いいからお母さんの言う事を聞きなさい! みたいなノリで言われても、役職持ちの大人達が分かったよママ、みたいに素直に頷く訳がない。

上條かみじょう、お前の部下だろう。
 一体どうなってるんだ!?」

 ダンっ! と机を叩きながら課長に食ってかかる営業部長。
 経理課の事を事務屋だと暗に貶しているのはいつもの事だ。

「部長、落ち着いて下さい。
 社長と専務がよろしければ、私から皆さんにご説明致しますが……」

 意向を確認された二人は、腕を組んで椅子にもたれながら頷いた。
 課長から専務と名誉顧問の株を俺が買い取る事になり、それに伴って俺がこの会社の筆頭株主になる事、それをもって次期社長として育成するべく今日付けで社長補佐に据える事となったと説明された。

「納得出来ん!!」

 営業部長は説明を受けた後も怒ったままだ。
 そりゃあそうか、説明されてもすんなり受け入れられる話ではないだろう。
 自分の子供と同じくらいの年齢である俺が社長になるなんて、想像もしてなかっただろうからな。

「なら鷲田わしだ君、君が田沼君と名誉顧問の株を買い取るか?
 それだけの金を用意出来るのか!?」

 だからさー、ここで金の力をちらつかせるとさー、どんどん俺の印象が悪くなっていくと思うんだけどさー……。

「だいたいこいつがそんな大金持ってるとは思えん!
 おいお前、本当にそれだけの金を用意出来るんだろうな!?」

「僕と社長が実際に口座残高を確認したから間違いないよ」

 ようやく専務が口を開いた。
 社長がイライラを隠せなくなってきたからだろうか。
 もっと早くから間に入ってほしかった。

 しかし俺がそれだけの金を持っているからって、幹部の皆さんが納得するかといえばもちろんそんな事はない訳で。
 でも、しかし、口々に批判の声が上がる。

「何も突然明日から幸坂こうさか君が社長になる訳じゃない。
 社長と僕とでしっかり面倒を見るつもりだ。
 僕の持ち株がゼロになったからといって、すぐに専務を退任するつもりもない。
 とりあえず今は社長補佐として経営について学ばせ、社長が勇退されて会長になられた際に幸坂君が社長になる。
 そういう流れだ」

 理路整然と説明されたとて、幹部達に納得出来る話ではない。
 感情が受け入れる事を拒否しているのだろうから。
 分かる、分かるよその気持ち。

「だいたいお前らの中で社長としてやっていく自信のある奴はおるのか?」

 社長、ちょっと黙っててー。
 挑発するような表情でそんな事言わないでー。
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