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ワタシの名前は?
しおりを挟む“ピンポーン”
うるさい、出ないって言ってんだろ。
≪仕事の話、バツイチな事、彼女のTwitterアカウントは二週間くらい前に教えてもらってー、先週に本名でしょー。今日は遂にー、住所を教えてもらおっかなー≫
iPadから流れて来る、自分じゃない自分の声。汗が背中をつつつっと流れる。
『こんなん凜ちゃんに聞かせられないっしょ』
いや、すでにそんなレベルの話じゃなくなって来ている。
≪なかたしろうが住んでるマンションの名前は?≫
例え寝起きであろうが寝ぼけていようが、答える訳のない質問。
≪ワタシは声だけじゃ満足出来ないんだー、中田史郎の全てが欲しいんだよー≫
だからさー、と無邪気な口調で問い掛けて来る、自分の声。
≪ワタシが住んでる、マンションの名前は?≫
≪……セントラルナニワ≫
『ピンポンピンポン鳴ってて全然聞こえないんだけど!?』
≪何号室?≫
≪……七階≫
≪何号室?≫
≪……七階にはこの部屋しかない≫
≪セントラルナニワ……、大阪市浪速区だねー。行こうと思えば明日のお昼には着くかなー≫
『ってかこれボイスチェンジャーでシロさんの声に似せてるのか!』
“ピンピンピンピンポーン”
『シロさん、インターホンに出たらダメだ!』
分かってる。状況を理解出来ていないけど出たらダメなヤツだって事は分かっている。
“ピンポンパンポンピロン ピンポンパンポンピロン”
LINE通話の着信音。通知バーに彼女の名前が表示される。
「ごめん、凛ちゃんから着信来たから出るわ。いったんDiscord切る」
『ちょま』
「もしもし?」
『アナタの名前は?』
聞こえて来る自分の声、に似ている声。答えたらダメだって頭では分かっているのに、まるで操られているかのように口が開く。
「……中田、史郎」
『ワタシの名前は?』
答えるな、答えるな俺!
「……なかた、しろう」
『チャイムを鳴らすよー』
足がインターホンの前へと俺を連れて行く。
『オートロック開けてねー』
“ピーーーンポーーーン”
液晶画面には、凛ちゃんじゃない誰かが映っている。
『さぁ、全てを貰いに来たよー』
俺はオートロックの解除ボタンを………………
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