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寝室にて 探良side
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自分でも、何をやっているんだろう、と思う時がある。
小さいころに経験した、本当に些細な嫌なことが脳裏をよぎって眠れなくなったり。
いっそ消えたい、と思いながら天井を眺める。もう暗闇に目が慣れてしまっていて、天井の小さな模様がよく見える。
昨日もそうだった。
別に何をしたわけでもないのに夜になると疲れて、休みなく動いてるマサよりも早く、横になりたくなる。眠れるわけではないけれど。
ドアの向こうから、足音が聞こえてくる。
マサ、仕事終わったのかな。
スマホを見ると23時。こんな時間までちゃんと動けるマサが、正直うらやましい。
俺だって、気力さえあれば。
大学はちゃんと卒業できたはずだし。ちゃんと就職もできたはずだし。
あぁだめだ。また、消えたくなってきた。
どうでもいいゲーム実況者の配信を適当につけて、耳にぶち込む。
目をつぶって、その声だけに集中するんだ。
どれくらい時間が経ったのかわからない。
閉じられている瞼越しに、光を感じた。
そーっと、目を開いてみる。
「おおっ」
目の前にマサ。びっくりした。
「ごめん、起こしちゃった?」
マサは、いつでも優しい。
仕事で疲れているだろうに、心をとろけさせるようなじんわりとした低い声。
「いや、眠れてなかったから大丈夫。」
何が大丈夫なのかよくわからない。
全然大丈夫じゃねぇよ、と自分にツッコミを入れる。
困った顔?ちょっと笑った顔?マサの表情がよくわからない。
「眠れないかぁ…。」
こういう時のマサは、何も言わない。
ただ俺のしどろもどろな話をうんうん、とうなずきながら聞いてくれる。
それが最近はちょっと寂しい。俺だけが喋ってて、マサの心のうちは何もわからないのが、どうしてか寂しい。
そういえば俺、マサのこと何にも知らないな。
マサも俺みたいに、弱音を吐きたくなる時があるのかな。
あるとして、そういう時は誰に頼ってるのかな。
「最近、寂しくて仕方ない。」
ぽつ、とつぶやいた俺の言葉を、マサはいつものように復唱する。
「寂しいの?」
「うん。俺ばっかり喋るのも、寂しい。」
俺が発した言葉がマサにどう伝わるのか、そんなことを考える余裕はない。
しばらくの沈黙。
お互いに何を言おうかと、言葉を探り合う。
「俺ができること、ある?」
先に声を出したのはマサの方だった。
「うーん。」
そんなこと、言われると思ってなかった。
どうしよう。会話に慣れてないせいで、想定外の言葉が来るとわかりやすく戸惑ってしまう。疲労がたまっていくのを体感する。
「俺にできることだったら、なんでもするよ。」
考え込んでいる俺に、マサはそう付け加えて笑った。
小さいころに経験した、本当に些細な嫌なことが脳裏をよぎって眠れなくなったり。
いっそ消えたい、と思いながら天井を眺める。もう暗闇に目が慣れてしまっていて、天井の小さな模様がよく見える。
昨日もそうだった。
別に何をしたわけでもないのに夜になると疲れて、休みなく動いてるマサよりも早く、横になりたくなる。眠れるわけではないけれど。
ドアの向こうから、足音が聞こえてくる。
マサ、仕事終わったのかな。
スマホを見ると23時。こんな時間までちゃんと動けるマサが、正直うらやましい。
俺だって、気力さえあれば。
大学はちゃんと卒業できたはずだし。ちゃんと就職もできたはずだし。
あぁだめだ。また、消えたくなってきた。
どうでもいいゲーム実況者の配信を適当につけて、耳にぶち込む。
目をつぶって、その声だけに集中するんだ。
どれくらい時間が経ったのかわからない。
閉じられている瞼越しに、光を感じた。
そーっと、目を開いてみる。
「おおっ」
目の前にマサ。びっくりした。
「ごめん、起こしちゃった?」
マサは、いつでも優しい。
仕事で疲れているだろうに、心をとろけさせるようなじんわりとした低い声。
「いや、眠れてなかったから大丈夫。」
何が大丈夫なのかよくわからない。
全然大丈夫じゃねぇよ、と自分にツッコミを入れる。
困った顔?ちょっと笑った顔?マサの表情がよくわからない。
「眠れないかぁ…。」
こういう時のマサは、何も言わない。
ただ俺のしどろもどろな話をうんうん、とうなずきながら聞いてくれる。
それが最近はちょっと寂しい。俺だけが喋ってて、マサの心のうちは何もわからないのが、どうしてか寂しい。
そういえば俺、マサのこと何にも知らないな。
マサも俺みたいに、弱音を吐きたくなる時があるのかな。
あるとして、そういう時は誰に頼ってるのかな。
「最近、寂しくて仕方ない。」
ぽつ、とつぶやいた俺の言葉を、マサはいつものように復唱する。
「寂しいの?」
「うん。俺ばっかり喋るのも、寂しい。」
俺が発した言葉がマサにどう伝わるのか、そんなことを考える余裕はない。
しばらくの沈黙。
お互いに何を言おうかと、言葉を探り合う。
「俺ができること、ある?」
先に声を出したのはマサの方だった。
「うーん。」
そんなこと、言われると思ってなかった。
どうしよう。会話に慣れてないせいで、想定外の言葉が来るとわかりやすく戸惑ってしまう。疲労がたまっていくのを体感する。
「俺にできることだったら、なんでもするよ。」
考え込んでいる俺に、マサはそう付け加えて笑った。
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