青春なんて要らないのに

紐下 育

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June

先生の独り言(先生の嫉妬編)

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ゆうがお風呂に入っている間、僕は自分の部屋に戻った。
さんざん送られてくる学会誌の山から、「佐藤武夫」の名前を探す。
脳裏によぎるのは、この間会った佐藤先生の声だ。

「若狭先生がそんなにおっしゃるような学生さんでしたら、ぜひお会いしてみたいです。」

佐藤先生は、確かにそう言っていた。

「面白い人見つけたんですよ!」

そう言っていたゆうの声も、思い出す。

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
脳内で、思いっきり叫んだ。
なんだよ、なんでだよ…。
僕のゆうなのに。
なんで佐藤先生とゆうが両思いになっているんだ。

だいたい、ゆうに友達ができたのだって本当は少しもやもやしている。
僕に割り振られるべきゆうの興味が別の誰かに行くことが、こんなに苦しいことだなんて。
ただでさえ、僕とゆうの間には教員と学生というハードルがあって、でも、それを乗り越えて僕はここまでゆうとの関係性を築いたのに。
それなのに、あいつはたまたまゆうと同じ年に生まれたってだけで、そのハードルを難なく乗り超えた。
そんなの不平等だ。
不公平だ。

…でも、僕のせいで寂しい思いをさせてしまっていることは紛れもない事実で。
ゆうの人生の選択肢をこれ以上奪ってしまったらいけないと思った。
だから、必死に耐えたのに…。

佐藤先生なんか見えないくらい、研究を頑張らないと。
佐藤先生の論文が掲載されている学会誌を引っ張り出してきて、片っ端から読み漁る。
ゆうはどんなことを面白いと感じるのだろう。
それがわかれば、これからの授業にも、研究にも生かせる。
もちろん、公私混同なんてわかっている。
だけど、止められない。

ゆうがお風呂から上がったことにも気づかないくらい集中して、論文を読み漁ってしまった。
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