青春なんて要らないのに

紐下 育

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May

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「ご、ごめん、ゆう…」
浴室で、先にのぼせたのは先生だった。
俺はそろそろ出ましょうって言ったのにもうちょっとって言って全然出なかったんだもん、この人。
俺自身がのぼせたことなかったから、どうしたらいいのかわからない。いったん先生を浴槽から引き揚げて、スマホで検索する。
「のぼせたとき 対処法」っと。
冷たすぎないぬるま湯で冷やすのがいいのかな?
「とりあえず濡れタオル持ってきますね!」
俺も素っ裸だけど、先生のピンチだ。そんなこと気にしてる余裕なんてない。
先生の家はタオルが多い。まあ、家族で暮らしてたお家だから当たり前か。
「ちょっと首元失礼しますね…」
「ん…」

火照った身体で色っぽい声出されると、俺のも反応しちゃうからやめてほしい。今は隠すものだってないんだから。
ちょっと動けるようになった先生のもとに、水も持っていく。
「一気に飲まずに、ゆっくり飲んでくださいね」
「うん、ありがとう…」


ふぅ…一件落着かな。お風呂出たばっかりだけど、汗かいてしまった。
「すいません、もう一回お風呂入ってもいいですか?」
「もちろんだよ。ありがとうね。」
「あ、ゆうものぼせないように気を付けてね!」
「は~い」
先生に一声かけて、再び浴室へ向かう。
もう十分浸かったから、浴槽には入らなくていいや。
汗を流して、下で主張する自身に触れる。

「だよなぁ…」

先生には気づかれなかったけど、これ、どう処理したらいいんだ。
仮にも先生の家で。
自分の部屋はないし、万が一でも先生のお部屋を汚したら先生に顔向けできない。

ここでずっと暮らすってなったら、そういうことも考えないとだよなぁ…

「…ゆう?」

え、あ、ええええ!
「あ、あの、え!」
「あ、ごめん。呼んだんだけど、返事がなかったから…。僕もさっきのぼせちゃったし、ゆうものぼせて動けなくなってたらと思ったら心配で」
「すいません!」
頭が真っ白になって、何も考えられなくなる。
「いやいや、無事でよかったよ」
「ところで、下、辛そうだね。」

先生の視線が俺の下の方に向いている。気まずすぎて、その視線の先まで見る勇気はない。
「もしかして、一人で処理しようとしてた?」
もしかして、なんてことじゃない。男がこの状況を見たら、処理しようとしてたなんて明白じゃないか。
「手伝おうか?一人だと寂しいでしょう?」
いや、そんな概念ないんだけど!え、先生にとっては普通なの?え?寂しがり屋すぎない?
こちらがあたふたしていると、先生はためらいもなく俺の元までやってきた。
まだお願いしてないんですけど…。

俺の息子に先生の息がかかる。さっきまでのぼせてた先生の息はひどく熱くて、それが先生の色っぽさを増幅させていた。そうやってしばらくじっと見たあと、先生はゆっくりと手をかけた。
期待するみたいにどくどくする。恥ずかしい。
先生の細くて長い指は、俺の小さな息子を簡単に包み込んでしまう。普段さらさらとパソコンをたたいているのも知っているこの指が、今俺のために使われている。他の学生にレジュメを渡す時も、車を運転する時も。いつもこの指は美しいのに。
なんだか、こんなことに使わせるのが忍びなくなって、気づいたら先生の動きを止めていた。
え、という顔で先生がこちらを見上げる。
「ごめんなさい、もう大丈夫です」
いや、絶対大丈夫じゃない。こんなところで寸止めされて、玉が切なく持ち上がる。
でも、これ以上先生を汚すわけにはいかない…。

先生を浴室から追い出して、さっと自分で慰める。
気まずさを感じつつリビングに向かうと、先生はいなかった。
のぼせた後だし、もう寝ているだろうか。それとも作業かな。

あんまり会いたくないと思っていたから、ちょっとだけ安心した気持ちもある。
仕事中だったら申し訳ないと思って、寝ます、とメッセージだけ打って部屋に戻った。
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