青春なんて要らないのに

紐下 育

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April

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「おいしいね~」
「はいっ!」

届いたふわふわオムライスは、めちゃくちゃおいしかった。俺のオムライス観にぴったりな卵の食感、最高!

それになにより、先生のお家でオムライスを食べられるこの空間が幸せすぎる。

「そういえば、先生のお好きな食べ物はなんですか?」

今日は俺の好きなもの食べさせてもらっているけど、先生の好きな食べ物も知っておきたいと思った。これからまた一緒に食事する時に、知っておいたら便利だろうし。

「うーん、強いて言えば辛いものが好きかな!辛いラーメンとかよく食べるよ。汗かきながら辛い物食べると、生きてるって感じがする。」

おお、辛い物かぁ…見た目的には汗なんてかきません!とか言ってそうなのに。ちょっと意外かも。
俺は辛い物がそんなに得意じゃない。いや、超がつくほど苦手だ。

「辛い物、好きじゃない?」
これは反応に困る。俺が質問したくせに、なにも言えなくなった。
あたふたする俺を見て、先生は状況を理解したようだった。
「君が辛いの好きじゃないのはちょっとわかるな~かわいいマカロンとか好きそうだもんね」

先生の中での俺のイメージ、どうなってるんだ。かわいいマカロンは確かに好きだけど。

先生が異常に高身長なだけで俺もそれなりに身長は高い(少なくとも人権がないと言われるレベルではない)し、普通にジーパンとTシャツ姿の、どこにでもいる男子大学生なのに。

先生が可愛いっていう感性がよくわからない。

「年が結構離れてる妹がいるんで、家のカレーとかずっと甘口だったんですよ。そういうこともあってあんまり辛い物に耐性がなくて」

就寝時間も俺の家は早かった。妹に合わせてずっと家の消灯時間が早かったから、夜更かしは苦手なんだ。何が言いたいかって、そろそろ眠くなってきたってこと。

俺も先生もほぼ同時にオムライスを食べ終わった。先生がソファーに腰かけて隣をぽんぽんとたたくから、俺も横に座らせてもらった。

「へぇ!君お兄ちゃんだったんだ!ちょっと意外かも、、!ちなみに僕も妹がいるんだよ。仲間だね!」

先生に妹がいるというのは納得できるかもしれない。年下女子に受けそうな性格してるもんね。

「なんかわかるかもしれないです!先生が妹さんを甘やかしてるのめっちゃ想像できます」
「ふふっ、でも、それがそうでもなかったんだよ。君と同じで年が離れているっていうのもあって、お互い関わり方がよくわからなかったのかもしれない。学業が忙しくてそんなに関わらなかったのもある。今でも会った時には、敬語で話されるよ。」

君は想像できないかもしれないけど、と先生は笑う。俺の前にいる先生はいつだってコミュ強だから、確かに想像つかない。

「妹を下の名前で呼ぶのとか、夢だったんだけどねぇ。」

ここで一度言葉を切った先生は、俺の方を見て少し眉毛を上げた。

「そうだ、君のこと、下の名前で呼んでもいい?」

大発明みたいな顔でそんなことを聞いてくる先生、付き合いたての男子みたいだ。普段はかっこいいと思うけど、こういうときの先生は美少年みたいなかわいさがある。

「もちろんだいじょうぶです、むしろ嬉しい」

自分で答えたのに、なんか恥ずかしくなってきた。別に先生と俺しかいないんだから、変なこと言ってもいいよね。

やばい、だんだん頭が働かなくなってきた。先生の家のソファーが悪いんだ。ここに座っちゃったらもう動けない、、

「ありがとう!じゃあ、ゆうって呼ぼうかな」
「えへへ、ありがとうございます」
「そろそろ眠くなってきた?ちょっと目がとろっとしてきたよ?」
「んんん、まだ先生とお話したいです…」
「かわいいけど、そろそろ寝ようか」
「んん~」

先生が頭をなでてくれる。優しい、嬉しい。
さっき車で寝かせてもらったのに、俺、どんだけ寝るんだろう。

でも、先生のそばにいると安心して、眠くなっちゃうみたいだ。
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