上 下
7 / 26

第七話 契約

しおりを挟む
治療道具が入った箱を漁り、傷口を早く塞ぐ薬を探しながらクルトはまたドラゴンに話しかけていた。


「本当可愛いし賢いね。噛み付いてきたりもしないし。君のご主人様とは性格が全然違うみたいだね」


とろりとした透明な薬を指先で掬い、傷口に丁寧に塗り付け、少し乾かす。
乾かしている間は手持ち無沙汰になったクルトはドラゴンに一方的に話しかけていた。


そうして時間を潰しているとバルハルトが館の中から出てきた。

「一時間たったぞ」

それだけ言うとついてくるように手で示し、クルトは居間に連れて行かれた。

「一体何ですか?やっぱり私をクビにするんです?」


やや食い気味に言うクルトにバルハルトは黙って一枚の紙を突きつけてきた。


「………契約書?」


「そうだ。条件に納得できないのならやめてもらって構わない」


ぶっきらぼうにそう言うバルハルトの手から紙を受け取り、素早く目を走らせた。


「給与は月に金貨五十枚、三食昼寝つき?!おまけに週末にはご丁寧に休日があって、屋敷内は自由に行動していい?!」


あまりにも条件が良すぎる。そもそも金貨五十枚はクルトが神官として働いていた時の給与の三倍ほどである。
それに三食、休日までがついてるなんて破格の待遇であった。

「えっ?嘘でしょ?さすがに食費は給料から引かれるよね?」

驚いてクルトがそう聞くと、バルハルトは眉を上げ、さらりと答えた。

「それもこちらが負担するが?」

あんぐりと口を開け、彼の顔を呆然と眺める。

「衣食住すべてこちらが負担する。お前は仕事だけしていれば良い」

次から次へと疑問が湧いてきて、クルトはバルハルトを質問攻めした。

「ドラゴンの治療が治るまでの契約ということ?」

「いや、その後もここで働いてもらうつもりだ」

当然だ、というような彼の様子に余計混乱した。

「ドラゴンの治療の後の仕事は何をするの?」

「主に私のデスクワークを手伝ってもらう。神官は読み書きができるだろう?もちろん機密情報はさすがに任せられないけどな」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

転生したら溺愛されていた俺の話を聞いてくれ!

彩ノ華
BL
不運の事故に遭い、命を失ってしまった俺…。 なんと転生させて貰えることに! いや、でもなんだかおかしいぞ…この世界… みんなの俺に対する愛が重すぎやしませんか…?? 主人公総受けになっています。

処理中です...