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第六話 手当てしよう!

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クルトが怯えながらも少しずつ近づいてくるのをドラゴンはじっと見ていた。

「私は食べても美味しくないからね!」


クルトが威嚇するようにそう言うと、ドラゴンはふんっと鼻を鳴らしガオッと小さく吠えた。

「えっ、今もしかして私を馬鹿にした?」

クルトの発言にドラゴンは賛同するように首を縦にふり、おまけに尻尾で地面をピシンッ、ピシンッと叩き、催促するような様子を見せた。


「分かったよ、早くやりますよ」


先程までの恐怖が何故かなくなり、クルトはドラゴンに話しかけながら手当てを始めた。

「ほら、お腹を見せて」

クルトがそう言って箱から包帯やら消毒液やらを取り出すと、ドラゴンはおとなしくころりと仰向けになり、腹を見せてくれた。


剣でざっくりと斬られた傷が痛々しい。
傷にこびりつく赤黒い血を濡らしたタオルで優しく拭い、鱗に飛んでいる泥も一緒に落としていく。


あらかた汚れを落とすとドラゴンは気持ちよさそうに伸びをし、目を閉じる。
猫のように喉を鳴らす様子は、ドラゴンに対して苦手意識があったクルトから見ても可愛かった。


(この子が特別賢いだけなのかなぁ)


傷口に消毒液を振り掛けても多少唸るだけでクルトを引っ掻いたり、噛み付いたりしないこのドラゴンにすっかり愛着が湧いてしまっていた。


ドラゴンに声をかけながら、消毒したピンセットで傷んだ鱗を一旦取り除き、傷周りを綺麗にしていく。


剣で斬られた傷だけでなく、火傷のようなものもあり、その傷口には細かい鉄の破片のようなものが刺さっている。

それらもピンセットで丁寧に取り除き、火傷の部分は水に濡らしたタオルを押し当てて、しっかり冷やしてやった。

「痛かったでしょ?すぐに良くなるからね」

消毒液で針を消毒しざっくりと斬られた腹の部分を縫ってやる。

いくら鱗の部分より柔らかいと言っても、やはりドラゴンの皮膚はそれなりに硬く、縫うのにかなりの力を要した。


「ふうっ……」

額の汗を拭いながら、とりあえず一通りの治療は終わらせることができた。
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