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初夜 ※
しおりを挟むキリトは危機に直面していた。
実に二十日ぶりの風呂に入らせて貰って、スッキリとして広い脱衣所から出てきたキリトを、メイド長と二人のメイドが待ち構えて居たのだった。
「キリト様のお美しい肌によく映えますわ。」
メイド達に寄ってたかって着せられたのは、とんでもない服だった。
ヒラヒラと薄い生地が申し訳程度に肌を隠し、あちらこちらに真珠と思われる飾りが幾つも付いている。肩から腕を通って腰にかけては細い銀色の鎖が幾筋も垂れて、そこから細かな細工の飾りが下がって蝋燭の光を弾いている。下衣には大胆な切れ目が入り、スラリとした白い足が覗いていた。
「な、な…」
「レイル様の婚約者ですもの。これくらいしませんと。」
メイドの一人が頬を赤らめて言う。
「あら、これでも控えめな物を選んで参りましたのよ。」
とメイド長が言う。
「こ、婚約者…」
キリトは衝撃の言葉を耳にして呆然と呟いた。確か求婚してきたレイルに「お付き合いからなら」と返答したはずである。
衝撃から立ち直れないまま立ち尽くしていると、メイド達がしずしずと退出するのと入れ替わりにレイルが部屋に入ってきた。
着飾ったキリトに目を止めると、緑の目を細めて
「綺麗だ。」
と言った。
「こ、婚約者ってどういうこと?」
詰め寄るキリトにレイルは、
「俺と”お付き合い”するというのは、そういうことさ。」
と笑ってとぼけてみせた。普段は整って冷たい感じすらする精悍な顔立ちが、笑うと途端に柔らかな印象に変わる。
レイルは揺れるキリトの服の飾りに誘われるように腕を伸ばすと、細い腰を抱き寄せた。
「僕が言ったのは”清い”お付き合いだよ!」
とキリトは声を荒げたがレイルは取り合わず、
「俺がどれだけ我慢したと思っている。」
と言ってキリトの艶やかな黒髪を手に取ると口付けた。
旅の途中の天幕の中で襲わなかっただけでも褒めて欲しかった。
余裕ぶったところで体は正直だ。手が自分の意思を離れて勝手にキリトの腰を更に強く抱き寄せ、もう一方の手は頬に触れる。潤んだ黒い目に不安げに見上げられると、大事にしたいのに暴走してしまいそうだった。
頬から白い下顎に手を滑らせると身を屈め、赤く色づく唇に口付けを落とした。角度を変えて何度も口付ける。
「ふ、は、ぁ」
キリトは息を上手く継げないのか苦しげに声を漏らした。
首から下に目をやると、薄く透けた服の生地を通しても分かる白い肌に、ほのかに色付いた控えめな胸の飾りが彩りを添えている。何かが焼き切れそうだった。
ちら、と寝台に目をやるレイルに、意図を悟ったのかキリトが弾んだ息の下から頬を僅かに染めてしどろもどろと言った。
「あ、あの、僕こういう事、初めてで…」
レイルはグッと息を飲むと、猛然とキリトの体を寝台に押し倒した。
キリルは目を閉じてびくりと肩をすくめたが、思ったような衝撃は来なかった。シャラ、と服の飾りが音を立てる。柔らかな寝台に体が沈んだ。
レイルの手が顔のすぐ脇に置かれている。見上げると、レイルは眉間に皺を寄せて苦しげな表情をしていた。
「どうしたら良い、焼き切れそうだ。」
何が、とキリトが問う前に口付けが降ってきた。熱い舌が差し込まれて歯列を割って口内を思う様掻き回す。息苦しさにレイルの胸を力の入らない手でトントンと叩くと、名残惜しげに唇が離れていく。唾液の糸が引くのが目の端に見える。恥ずかしさに頬に血が上っていくのが分かった。
「キリト、綺麗だ。」
レイルはそういうと、キリトの首に顔を埋めた。線の細い首筋に沿って舌を這わせる。
「あ、あっ」
思わず声が出た。下衣の大胆に開いた切れ目から覗くキリトの足を、レイルの剣だこのある手のひらが撫でた。
「あ、待って…」
レイルは構わず太ももを撫で上げると、服の切れ目からキリトの下着の紐を引いて取り去った。キリトの上気した肌と潤んだ目に容易く煽られて、レイルはキリトの中心を掴んだ。緩く扱くとすぐに反応が返ってくる。
「あああっ」
キリトの嬌声に益々煽られる。レイルは自分の下衣を寛げると張り詰めたものを取り出した。レイルの腰を抱き寄せ、二人の中心を一緒に握ると性急に擦り上げた。
「あ、待って、待って、おかしくなっちゃう」
キリトがレイルの手を掴んで動きを止めようとする。だが、涙の滲んだ目で言われても聞けるはずもなく、手を止めずに追い上げた。
「ひ、や、あ、あああああっ」
「く、う」
二人は同時に精を放った。
「こんな、こんなの、ひどい…」
と言うとキリトは気を失った。
スウスウと寝息を立てるキリトの頬に口付けて、レイルは独りごちた。
「メイド長は服の趣味が良い。」
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