【完結】遠き星にて

紙志木

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ライトソード

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リビングにハルトの嬌声と濡れた音が響いている。ハルトの最奥にもう何度目か分からない精を放って、シュイはずるりと屹立を引き抜いた。それにも感じてハルトが声を上げる。
最後は立ってソファの背もたれに手をつくハルトを後ろから貫いていた。体に力が入らずにへたり込むハルトを、シュイは抱き止めてソファに寝かせた。

「ハルト、シャワーを浴びないか」

「...むり...後で...」

シュイは身を屈めてハルトの額に口付けを落とすと、シャワーブースに向かった。手早くシャワーを浴びて支給品の白いパジャマの下だけを履いて出ると、ハルトはソファにうつ伏せに寝ていた。背中も、細い腰も、丸みを帯びた尻も、すらりと伸びた足も惜しげもなく見せつけて、堪らなく艶かしく美しい。また下半身に熱が集まりそうになって、誤魔化すようにハルトに声を掛けた。

「風邪を引くぞ」

「ん、シャワー浴びて、カリキュラムやらないと...」

ハルトは気だるげに立ち上がるとシュイを見やった。長いまつ毛が何度か瞬く。

「...シュイ、かっこいい。ちょっと触らせて」

ハルトは手を伸ばすとシュイの割れた腹筋をそっと撫でた。くすぐったくてハルトの手を掴んで止めると、そのまま手を引いて腕の中に閉じ込めた。腕にすっぽりと収まる華奢な体が堪らなく愛おしい。行為の最中も共にあったハルトの甘い匂いが首筋から立ちのぼってシュイの鼻腔をくすぐる。まるで、この牢獄に咲く一輪の花のようだと思った。甘い匂いと蜜で誘う、俺の花。

「...いつか、ここを抜け出して一緒に地球へ行かないか」

不意に言葉が口を突いて出た。ハルトが驚いたような顔をしてシュイを見上げる。

「...そんなこと...」

無理だよ、と言おうとしてハルトは言葉に詰まった。シュイが優しく微笑んでいる。

「...そうだね。江ノ島あたりの海でも案内するよ。ソフトクリームも一緒に食べようか」

ハルトはソフトクリームを食べるシュイを想像して、あまりの似合わなさに笑ってしまった。

「何で笑ってる」

「あははは、ちょっとね」





決行当日の早朝、ハルトとシュイの部屋に、セシル、ロイカ、ゾルドが集まった。ハルト以外は皆体格が良いのでリビングが狭く感じる。セシルがまず口を開いた。

「もう間もなく磁気嵐が始まります。ピジョン・アイが停止し次第、行きましょう」

「統制局員に遭遇したらどうする?」

ロイカの問いにゾルドが答える。

「こっちは丸腰だからな。逃げ切れなかったら、諦めて捕まるしかないだろう」

「隔離室送りならまだ良いけど、永久スリープは嫌だなあ」

ロイカが言い終わらないうちに、停電したのかいきなり部屋が暗くなった。

「エレベータは動いているの?」

ハルトが聞くとシュイが答えた。

「非常用電源に切り替わるはずだ」

ラバースーツの左腕の表示に目を落としていたセシルが声を上げた。

「ピジョン・アイが停止しました。行きましょう」

「行ってくる」

シュイに言われて、ハルトはシュイの胸に手を突いて背伸びをして、そっと口付けた。

「気をつけてね」

「ああ」




エレベータが2596階に到着する。シュイ、セシル、ゾルド、ロイカの四人は姿勢を低くすると一斉にジェットブーツで走り出した。廊下の風景が飛ぶように通り過ぎ、耳元で風が唸る。ロイカが先頭に進み出て道案内を始める。三度ほど廊下を曲がると、あっという間に統制局の保管庫に着いた。停電のためか保管庫の入り口のドアが開いている。

「着いたよ」

「あっけないな。ドアまで開いてやがる」

保管庫の中には灰色の金属製の棚がどこまでも続いて並んでいる。

「ペンシルを探しましょう」

「待って、ここにインデックスが貼ってある」

ロイカが保管庫の壁に貼られた紙を指差した。

「ペンシルはC308だな。それに、S512にライトソードがある」

シュイが早速見つけて言った。

「ライトソードだと。そんな物騒なもんどうする気だ」

ライトソードは金属製の柄のボタンを押すと1メートル程の長さの光る剣が形成され、その剣に触れると焼き切れるという代物だった。

「統制局員と遭遇した時に使う、でしょう?」

セシルの言葉にシュイは頷いた。

「ああ。俺はライトソードを取りに行く。ゾルドも来い」

「...分かったよ」

「では僕とロイカはペンシルを取りに」




ライトソードの棚の前でシュイとゾルドは立ち止まった。背丈の二倍近くある棚に整然とライトソードが並べられている。

「どれだけあるんだ、戦争でもする気かよ。おい、何本持ってく?」

「四本だな」

シュイとゾルドは二本ずつライトソードを持つと、ジェットブーツを走らせて保管庫の出口へと急いだ。
出口付近に人影がいくつもある。
近づいてみると統制局員二名とセシルとロイカが揉み合っているところだった。

「ゾルド」

「ああ」

シュイとゾルドがライトソードのボタンを押すと、ブン、と音がして光る刀身が現れた。
シュイがセシルを拘束している局員に切り掛かる。

「ほう、ライトソードか」

局員はそう言うと、セシルを突き放して自分の腰に差してあったライトソードを手に取ってボタンを押した。シュイはその隙に左手に持ったもう一本のライトソードをセシルに向けて床を滑らせて投げた。

次の瞬間シュイと局員の剣が交わり、ジジジ、と焦げるような音が鳴る。

「ロイカ、送信を!」

セシルの声が聞こえたが、そちらを見る余裕は無い。シュイは力で押し返して剣を離すと、立て続けに局員に打ち込んだ。
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