【完結】遠き星にて

紙志木

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ペンシル

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ハルトがリビングのソファに寝転んで何をするでもなくぼんやりしていると、廊下に続くドアのロックが解除された。
シュイが戻ってきたのかと身を起こすと、現れたのはシルバーグレイの長髪にモスグリーンの軍服姿の統制局員だった。

「やあ、会えたね」

「......何故、ここに?」

ハルトが立ち上がって言うと、統制局員はブーツの踵を鳴らして大股でハルトとの距離を詰めた。思わず数歩後ろに下がると背中が壁に当たる。いつの間に取り出したのか、左手に鞭を持っている。鞭の持ち手の先でハルトの首筋をなぞり、赤い印でぴたりと止まる。局員は驚いたように目を見開いて言った。

「まさか、エンゲージしたのか」

「......」

「妬けるな」

言うなり、ハルトに口付けた。次の瞬間、ハルトは思い切り局員を突き飛ばした。

「や、やめてください。これ以上は、統制局に訴えます」

統制局員はわずかに乱れた襟元を白い手袋の手で正した。

「...何と引き換えになら、その体を好きにさせてくれる?」

「どうして、そこまで…」

「君のキスの味が忘れられないんだ」

ハルトが黙っていると、統制局員は軍服の胸ポケットから大きめの万年筆ほどの黄色いスティックを取り出した。


「そうだ、これが何だか分かるかな?」

「それは?」

「ペンシルさ。ゼリィ中毒者用の緊急薬で、このペンの先を太ももに押し付けると針が飛び出て薬液が発射される。中毒が酷くなってショック死しかけている者に使うんだが、副作用もあってね。中毒が解消されてゼリィが不要な体になってしまうんだ」

「…効き目はいつまで続くんですか」

「ゼリィを摂取しなければ、効き目は死ぬまで続く」

今朝見た、ゼリィを飲むシュイの姿が頭に浮かんだ。このペンシルを打てばゼリィが不要になって、統制局の管理下から抜け出せるのではないだろうか。統制局員の言葉が本当か半信半疑だが、試してみる価値はあると思った。ハルトは微かに震える手を握りしめ、局員の目を見て微かに頷いた。

「では、交渉成立だね」

統制局員は満足そうに目を細めた。

「そこの壁に背中を付けて立って」

ハルトが言われた通りにすると、統制局員はハルトのラバースーツのファスナーの引き手を摘んで一気に下まで下ろした。局員の手袋をした手がハルトの胸を這う。

「震えているのか。可愛いな」

ハルトが歯を食いしばって手の感触に耐えていると、局員が微笑みながら言った。

「脱ぎなさい」

ハルトが震える手で何とかラバースーツを脱ぎ終わると、局員は満足げな溜息をついた。

壁の冷たさが背中に直接伝わる。
局員は手袋を脱ぎ捨てると、いきなりハルトの中心に手を触れた。

「あっ」

親指と人差し指で輪を作って何度も上下に扱かれる。

「ひ、う...」

いつまでも勃ち上がる兆しを見せないそれに業を煮やしたかのように、もう片方の手でハルトの胸の飾りを力を込めて捻った。

「ああっ」

生理的な涙が目に浮かぶ。

統制局員はハルトのそんな表情にも唆られた様子で、舌で自分の唇をペロリと舐めるとハルトの足元に膝をついた。華奢な腰を両手で掴むとハルトの中心を口に含む。

「うああ」

唇で挟んで扱いたり舌で転がしたりと刺激を与えるが、それでも一向に芯を持たない事に苛立つように、口を離すとハルトの白い内腿にがぶりと噛みついた。

「ひああっ」

シュイならこんな事はしない。シュイならもっと…。堪えきれずに涙が溢れた。

局員はそんなハルトの様子には気づかないのか、夢中でハルトの中心をしゃぶっている。



突然リビングのドアのロックが解除されてドアが開いた。シュイはリビングに一歩入った途端、目の前の光景に固まった。次に涙を流す裸のハルトと目が合うと、統制局員に飛び掛かり顔面を殴り飛ばした。

局員がテーブルと椅子にぶつかり派手な音を立てる。床に点々と血が散った。

「まさか、合意の上だとは言わないだろうな」

地を這うような低い声だった。

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