126 / 136
第九走
126:ネット関連の広報は僕担当だけど?!
しおりを挟む
「新垣くん。私、回数は明言していなかったはずだけど」
「でも」
すると他が手を上げた。
「あー。はい。二回目だったら、教えるの二人同時でもいけるかも」
「そしたら、定員マックス五十名か」
『ちょい聞いて。俺も考えがある』
と海はキーボードを打った。
『もっと影響力を強める方法。全テレ呼んでみねえ?ずっと俺に取材依頼が来ているらしいんだ』
「反対」
すぐさま声が上がった。
声の主は、いつの間にか端っこにできた輪に加わっていた紬季だった。
「その取材依頼って、烏堂くんにでしょ?西城陸上部でも、烏堂海って選手でもなく、吃音のある選手が最下位チームの主将をして頑張っているって面白おかしく放送するよ、きっと」
「なら、条件を出せばいいんじゃない?」
とラーヒズヤが言った。
「もちろん話し合いベースになるだろうし、こっちの要求が全部通るとは思っていないけれど、こうは撮って欲しくないとか事前に伝える」
「そんなにうまくいくかなあ。相手はテレビ局だし」
「なら、先に手を打っちゃいましょうよ。海がこういう風に撮られたいっていうのを、公式ホームページの動画や画像で先に出しちゃう」
『俺は……』
海はキーボードを叩くのを止めた。そして、口で話し始める。
「吃音って不思議な病気なんだなって思ってもらいたいかも」
中国語で伝えたので、誰にも分かるはずは無かった。
『あ、今、吃音は不思議な病気だって知ってほしいみたいなことを言った』
「海」
「烏堂先輩」
皆に驚かれて海は頭をかく。
『俺が一番嫌なのは、自分がかわいそうな人に撮られるってのもあるんだけど、みんなが障がい者のい主将を支えなければいけないみたいな感じで見られちゃうこと。確かに俺には吃音って障がいがあるけど、なんかそれって違うだろ』
「海先輩と話すのは、口か文字かっていうツールが違うだけです。慣れないうちはちょっと戸惑いましたけど、今は意識すらしてないんですけど」
と新垣が断言した。ちらほら頷く者が出始める。
「それは、烏堂くんがチームメイトだからでしょ。テレビの向こう側の人はそうは見ないっていうか見てくれない。僕も早く動けないって症状があるから分かる」
『もし、全テレの取材を受けることになったとして、ラーヒズヤの五秒大作戦の企画でいろんな人にスポットが当たるかもしれない。でも、藤沢さんは拒否してくれていいから』
「そんな気遣いをしてもらいたい訳じゃない」
紬季が立ち上がって輪からはなれていくので、海は紙のメモを持って追いかける。
グラウンドを出て建物の影になる場所にたどり着くと、紬季が鬼みたいな顔で言った。
「何で、追いかけてくるんだよ。勘ぐられたらどうすんだ!」
『放置するほうが冷たいと思うけど』
「去年の夏、全テレの取材を受けるのは止めなって言ったよね?何で、分かんないの?」
『紬季の言いたいことは分かるけれど、なんんつーかな?今、いい風が吹いているみたいな気がするんだよな。ようやく雲が晴れて青空が見えてきたみたいな』
「勘違いだよ。イベントと寄付金でテンションが上がっているだけ。インド大使館とインドのテレビで満足しておきな!海くんが犠牲にならなくてもこれで十分だ。あとは、僕が出来るだけやっておくから」
『紬季さ。今年の西城に強くなって欲しいか?』
「あた、当たり前だろ!馬鹿らしすぎる質問で言葉を失いそうになったわっ!」
『だったら、エンジンかかれば、今年の西城は早い段階で結果を残し始めるかもしれないぜ。なんせ、イツザイがやってくるし』
「どっちにしろ早い段階で海くんの吃音のことが注目されるかもしれないって?」
『だったら、そこんとこは、全部ラーヒズヤディレクターに任せてさ』
すると、紬季が怒った。
「ネット関連の広報は僕担当だけど?!」
『そんなに怒るなって』
肩に手を伸ばそうとすると、紬季が分かりやすくそれを避けた。そして、視線まで避ける。
「ごめんね。一年半もボランティアスタッフやってるのに、ラーヒズヤみたいなこと、何も出来なくて」
『ラーヒズヤの企画遂行能力は、もう天性の才能みたいなもんだろ。紬季は紬季で人の話を聞くって才能があると思うんだけど』
「……」
『黙んないでくれよ』
「ウェブページ一枚使って書いちゃうからね。烏堂海のことについてって」
『主将烏堂海の吃音についてって書いた方が注目集まると思う』
「傷ついたって知らないから。メンタルに来て走れなくなったって」
『そのときはそのとき。でも、このままじゃ、俺も西城もぱっとしないで終わる』
「でも」
すると他が手を上げた。
「あー。はい。二回目だったら、教えるの二人同時でもいけるかも」
「そしたら、定員マックス五十名か」
『ちょい聞いて。俺も考えがある』
と海はキーボードを打った。
『もっと影響力を強める方法。全テレ呼んでみねえ?ずっと俺に取材依頼が来ているらしいんだ』
「反対」
すぐさま声が上がった。
声の主は、いつの間にか端っこにできた輪に加わっていた紬季だった。
「その取材依頼って、烏堂くんにでしょ?西城陸上部でも、烏堂海って選手でもなく、吃音のある選手が最下位チームの主将をして頑張っているって面白おかしく放送するよ、きっと」
「なら、条件を出せばいいんじゃない?」
とラーヒズヤが言った。
「もちろん話し合いベースになるだろうし、こっちの要求が全部通るとは思っていないけれど、こうは撮って欲しくないとか事前に伝える」
「そんなにうまくいくかなあ。相手はテレビ局だし」
「なら、先に手を打っちゃいましょうよ。海がこういう風に撮られたいっていうのを、公式ホームページの動画や画像で先に出しちゃう」
『俺は……』
海はキーボードを叩くのを止めた。そして、口で話し始める。
「吃音って不思議な病気なんだなって思ってもらいたいかも」
中国語で伝えたので、誰にも分かるはずは無かった。
『あ、今、吃音は不思議な病気だって知ってほしいみたいなことを言った』
「海」
「烏堂先輩」
皆に驚かれて海は頭をかく。
『俺が一番嫌なのは、自分がかわいそうな人に撮られるってのもあるんだけど、みんなが障がい者のい主将を支えなければいけないみたいな感じで見られちゃうこと。確かに俺には吃音って障がいがあるけど、なんかそれって違うだろ』
「海先輩と話すのは、口か文字かっていうツールが違うだけです。慣れないうちはちょっと戸惑いましたけど、今は意識すらしてないんですけど」
と新垣が断言した。ちらほら頷く者が出始める。
「それは、烏堂くんがチームメイトだからでしょ。テレビの向こう側の人はそうは見ないっていうか見てくれない。僕も早く動けないって症状があるから分かる」
『もし、全テレの取材を受けることになったとして、ラーヒズヤの五秒大作戦の企画でいろんな人にスポットが当たるかもしれない。でも、藤沢さんは拒否してくれていいから』
「そんな気遣いをしてもらいたい訳じゃない」
紬季が立ち上がって輪からはなれていくので、海は紙のメモを持って追いかける。
グラウンドを出て建物の影になる場所にたどり着くと、紬季が鬼みたいな顔で言った。
「何で、追いかけてくるんだよ。勘ぐられたらどうすんだ!」
『放置するほうが冷たいと思うけど』
「去年の夏、全テレの取材を受けるのは止めなって言ったよね?何で、分かんないの?」
『紬季の言いたいことは分かるけれど、なんんつーかな?今、いい風が吹いているみたいな気がするんだよな。ようやく雲が晴れて青空が見えてきたみたいな』
「勘違いだよ。イベントと寄付金でテンションが上がっているだけ。インド大使館とインドのテレビで満足しておきな!海くんが犠牲にならなくてもこれで十分だ。あとは、僕が出来るだけやっておくから」
『紬季さ。今年の西城に強くなって欲しいか?』
「あた、当たり前だろ!馬鹿らしすぎる質問で言葉を失いそうになったわっ!」
『だったら、エンジンかかれば、今年の西城は早い段階で結果を残し始めるかもしれないぜ。なんせ、イツザイがやってくるし』
「どっちにしろ早い段階で海くんの吃音のことが注目されるかもしれないって?」
『だったら、そこんとこは、全部ラーヒズヤディレクターに任せてさ』
すると、紬季が怒った。
「ネット関連の広報は僕担当だけど?!」
『そんなに怒るなって』
肩に手を伸ばそうとすると、紬季が分かりやすくそれを避けた。そして、視線まで避ける。
「ごめんね。一年半もボランティアスタッフやってるのに、ラーヒズヤみたいなこと、何も出来なくて」
『ラーヒズヤの企画遂行能力は、もう天性の才能みたいなもんだろ。紬季は紬季で人の話を聞くって才能があると思うんだけど』
「……」
『黙んないでくれよ』
「ウェブページ一枚使って書いちゃうからね。烏堂海のことについてって」
『主将烏堂海の吃音についてって書いた方が注目集まると思う』
「傷ついたって知らないから。メンタルに来て走れなくなったって」
『そのときはそのとき。でも、このままじゃ、俺も西城もぱっとしないで終わる』
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ
雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。
浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。
攻め:浅宮(16)
高校二年生。ビジュアル最強男。
どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。
受け:三倉(16)
高校二年生。平凡。
自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる