【修正予定】君と話がしたいんだ

遊佐ミチル

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第九走

126:ネット関連の広報は僕担当だけど?!

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「新垣くん。私、回数は明言していなかったはずだけど」
「でも」
 すると他が手を上げた。
「あー。はい。二回目だったら、教えるの二人同時でもいけるかも」
「そしたら、定員マックス五十名か」
『ちょい聞いて。俺も考えがある』
と海はキーボードを打った。
『もっと影響力を強める方法。全テレ呼んでみねえ?ずっと俺に取材依頼が来ているらしいんだ』
「反対」
 すぐさま声が上がった。
 声の主は、いつの間にか端っこにできた輪に加わっていた紬季だった。
「その取材依頼って、烏堂くんにでしょ?西城陸上部でも、烏堂海って選手でもなく、吃音のある選手が最下位チームの主将をして頑張っているって面白おかしく放送するよ、きっと」
「なら、条件を出せばいいんじゃない?」
とラーヒズヤが言った。
「もちろん話し合いベースになるだろうし、こっちの要求が全部通るとは思っていないけれど、こうは撮って欲しくないとか事前に伝える」
「そんなにうまくいくかなあ。相手はテレビ局だし」
「なら、先に手を打っちゃいましょうよ。海がこういう風に撮られたいっていうのを、公式ホームページの動画や画像で先に出しちゃう」
『俺は……』
 海はキーボードを叩くのを止めた。そして、口で話し始める。
「吃音って不思議な病気なんだなって思ってもらいたいかも」
 中国語で伝えたので、誰にも分かるはずは無かった。
『あ、今、吃音は不思議な病気だって知ってほしいみたいなことを言った』
「海」
「烏堂先輩」
 皆に驚かれて海は頭をかく。
『俺が一番嫌なのは、自分がかわいそうな人に撮られるってのもあるんだけど、みんなが障がい者のい主将を支えなければいけないみたいな感じで見られちゃうこと。確かに俺には吃音って障がいがあるけど、なんかそれって違うだろ』
「海先輩と話すのは、口か文字かっていうツールが違うだけです。慣れないうちはちょっと戸惑いましたけど、今は意識すらしてないんですけど」
と新垣が断言した。ちらほら頷く者が出始める。
「それは、烏堂くんがチームメイトだからでしょ。テレビの向こう側の人はそうは見ないっていうか見てくれない。僕も早く動けないって症状があるから分かる」
『もし、全テレの取材を受けることになったとして、ラーヒズヤの五秒大作戦の企画でいろんな人にスポットが当たるかもしれない。でも、藤沢さんは拒否してくれていいから』
「そんな気遣いをしてもらいたい訳じゃない」
 紬季が立ち上がって輪からはなれていくので、海は紙のメモを持って追いかける。
 グラウンドを出て建物の影になる場所にたどり着くと、紬季が鬼みたいな顔で言った。
「何で、追いかけてくるんだよ。勘ぐられたらどうすんだ!」
『放置するほうが冷たいと思うけど』
「去年の夏、全テレの取材を受けるのは止めなって言ったよね?何で、分かんないの?」
『紬季の言いたいことは分かるけれど、なんんつーかな?今、いい風が吹いているみたいな気がするんだよな。ようやく雲が晴れて青空が見えてきたみたいな』
「勘違いだよ。イベントと寄付金でテンションが上がっているだけ。インド大使館とインドのテレビで満足しておきな!海くんが犠牲にならなくてもこれで十分だ。あとは、僕が出来るだけやっておくから」
『紬季さ。今年の西城に強くなって欲しいか?』
「あた、当たり前だろ!馬鹿らしすぎる質問で言葉を失いそうになったわっ!」
『だったら、エンジンかかれば、今年の西城は早い段階で結果を残し始めるかもしれないぜ。なんせ、イツザイがやってくるし』
「どっちにしろ早い段階で海くんの吃音のことが注目されるかもしれないって?」
『だったら、そこんとこは、全部ラーヒズヤディレクターに任せてさ』
 すると、紬季が怒った。
「ネット関連の広報は僕担当だけど?!」
『そんなに怒るなって』
 肩に手を伸ばそうとすると、紬季が分かりやすくそれを避けた。そして、視線まで避ける。
「ごめんね。一年半もボランティアスタッフやってるのに、ラーヒズヤみたいなこと、何も出来なくて」
『ラーヒズヤの企画遂行能力は、もう天性の才能みたいなもんだろ。紬季は紬季で人の話を聞くって才能があると思うんだけど』
「……」
『黙んないでくれよ』
「ウェブページ一枚使って書いちゃうからね。烏堂海のことについてって」
『主将烏堂海の吃音についてって書いた方が注目集まると思う』
「傷ついたって知らないから。メンタルに来て走れなくなったって」
『そのときはそのとき。でも、このままじゃ、俺も西城もぱっとしないで終わる』
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