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第九走
118:今年のお前らは強い
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「今年のお前らは強い」
赤星は、箱根駅伝が始まる前、円陣を組んで必ずそう言う。
それは毎年、選手に不安を掻き立てる掛け声なのだが、今年に限っては海には皮肉に聞こえた。
区間新まで出して走ったところで、チームの方はガタガタ。
主将が海、副主将が宮崎、主務が鈴木という新体制になったって、チームの雰囲気はどんよりしたまま。
海の主将としての初仕事は、練習時間も門限も元に戻すことだった。
長友や笠間に、謝罪のメールも送った。
根回しバッチリ。案外、自分はこういうことが得意なのかもしれない。
それでも、部の方は箱根駅伝最下位のダメージを未だに引きずっていて、新年度に向けてエンジンがかからないどころか気合一つ入らない。
練習にも身が入らない。
弱い、仕上げっていないと皆、思ってはいたが、箱根駅伝十位以内のシード落ちを通り越して、最下位という結果は、気持ちを入れ替え頑張ろうという気を起こせないようだ。
前主将の長友に「こんなチームを引き渡して申し訳ない」と泣かれ、かなり気まずい思いもした。
チーム運営から遠い選手なら「マジでそうですね」と思うかもしれないが、夏の終わり頃から引き継ぎをするにあたって、長友の苦労は嫌というほど見ている。
それに、駅伝で努力して個人が報われても、全体が報われないことは海は身をもって知っている。西城に入って三年間ずっとそうだった。
でも、自分のためだけに走っていた昔には戻りたくない。
記録は伸びて最初のうちは嬉しいけれど、高みを目指せば目指すほど孤独が増してくる。
かといって、砂の城を作っているような虚しい現状も、海の精神をじわじわと蝕んでくる。
おまけに紬季との一件も。
話すことに飢えていて、好きな相手とタイムラグ無しで話をしたくて、吃音が出ない新たな言語獲得にあれだけのめり込んだのに、紬季の感想は「違う人みたい」
その言葉を聞いて、限界までしなっていた割り箸が、パキンッと音を立てて折れたような気がした。
もう頑張れない。
喧嘩になると、向こうは自分だけが犠牲者だみたいな言い方を毎回する。
寂しい思いをさせているのは分かっている。
だが、恋愛とセックスにどっぷりハマって大学生活を過ごせるほど、高等遊民ではないのだ、こちらは。
親はいるが、紬季の父親みたいに頼れる相手じゃない。
赤星は、箱根駅伝が始まる前、円陣を組んで必ずそう言う。
それは毎年、選手に不安を掻き立てる掛け声なのだが、今年に限っては海には皮肉に聞こえた。
区間新まで出して走ったところで、チームの方はガタガタ。
主将が海、副主将が宮崎、主務が鈴木という新体制になったって、チームの雰囲気はどんよりしたまま。
海の主将としての初仕事は、練習時間も門限も元に戻すことだった。
長友や笠間に、謝罪のメールも送った。
根回しバッチリ。案外、自分はこういうことが得意なのかもしれない。
それでも、部の方は箱根駅伝最下位のダメージを未だに引きずっていて、新年度に向けてエンジンがかからないどころか気合一つ入らない。
練習にも身が入らない。
弱い、仕上げっていないと皆、思ってはいたが、箱根駅伝十位以内のシード落ちを通り越して、最下位という結果は、気持ちを入れ替え頑張ろうという気を起こせないようだ。
前主将の長友に「こんなチームを引き渡して申し訳ない」と泣かれ、かなり気まずい思いもした。
チーム運営から遠い選手なら「マジでそうですね」と思うかもしれないが、夏の終わり頃から引き継ぎをするにあたって、長友の苦労は嫌というほど見ている。
それに、駅伝で努力して個人が報われても、全体が報われないことは海は身をもって知っている。西城に入って三年間ずっとそうだった。
でも、自分のためだけに走っていた昔には戻りたくない。
記録は伸びて最初のうちは嬉しいけれど、高みを目指せば目指すほど孤独が増してくる。
かといって、砂の城を作っているような虚しい現状も、海の精神をじわじわと蝕んでくる。
おまけに紬季との一件も。
話すことに飢えていて、好きな相手とタイムラグ無しで話をしたくて、吃音が出ない新たな言語獲得にあれだけのめり込んだのに、紬季の感想は「違う人みたい」
その言葉を聞いて、限界までしなっていた割り箸が、パキンッと音を立てて折れたような気がした。
もう頑張れない。
喧嘩になると、向こうは自分だけが犠牲者だみたいな言い方を毎回する。
寂しい思いをさせているのは分かっている。
だが、恋愛とセックスにどっぷりハマって大学生活を過ごせるほど、高等遊民ではないのだ、こちらは。
親はいるが、紬季の父親みたいに頼れる相手じゃない。
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