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第八走

112:------------しししたい

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「教えることは教えた。結果が付いてこないのはお前らの実力不足」という雰囲気を出す。やっぱり、ヘラヘラ笑いながら。
 やがて今度は、費用がかかってももっと遠征やら試合に力を入れるべき、いやさらに練習時間を増やすべき、いやいや、これ以上はもう無理といつくかの派閥が出き、内部分裂みたいな状態になった。
「海くん、平気?」
 十二月になり、とうとう外泊OKな日は月ニ回になった。もう月の半分が終わろうとしている。
 今月、ゆっくり会えるのはこれが最後だろう。
 和室に布団を敷いて、紬季は海のためにスポーツマッサージに励む。
 風呂上がりの海のために、バニラの香りがするシアーバターの入ったボディクリームをふんだんに使って、手足、腰などを丹念に揉んでいく。
 うつ伏せになっていた海が、枕元に蓋を開いて置いてあったノート型パソコンのキーボードに手を伸ばす。
『雰囲気は最悪だな。箱根駅伝が終わって新体制になったら、前の状態に戻す。特に下級生がストレス溜めててヤバい』
「それがいいね。厳しいのは西城の風土には合わない」
『にしても、ヘラオのヤツさ。何で、練習時間を伸ばすのとか、門限早めるとか了承したんだろ。いくら、主将と主務に言われたって、最終的な決定権を持っているのは監督だろ?俺の練習方針に口を出すな、が口癖なのにさ』
「昔も、選手らから要望があってこういう厳し目なのしたことあるらしいね。たまにくるボランティアスタッフさんが言っていた」
『初耳』
「もう大分前らしいから」
『じゃあ、激弱だった初期の頃か』
「かもしれないね。そのとき、効果があったらなら赤星先生はそのまま続けただろうし。失敗するって分かっていて何で繰り返したのかな?そこら辺が謎。ねえ、海くん。赤星先生は、西城のこと諦めちゃってないよね?その……先生は西城で首を切られたって別の場所で教えることができる。もう移籍先を考えているかもしれないって二年生の子らが話してた」
『どうだろ?白山の原監督を信奉してんなら、育てたチームを投げ出すなんてことはしない……と思いたいけれどな』
「海くんも大変だよね。お前だけ記録連発でいいよな、とか、 俺たちが弱くて悪うございましたとか言われてるの聞こえてきちゃった。はい。うつ伏せ終わり」
 海が言い出す前に、紬季は彼に仰向けになってもらう。
 つま先からボディクリームクリームを塗っていって、膝から腿、そして付け根まで塗り込んでいった。
「---っわどい」
と海が笑う。
「え、際どい?ああ。本当だ。反応している。僕ら、最後にしたのいつだっけ?」
 確か、数週間は過ぎている。いや、もう先月か?
 海が起き上がって紬季の手を取って身体の上に横たわらせた。
 海の心臓の音が聞こえる。
「マッサージの途中だってば」
「------っよ」
「しない」
「------------しししたい」
「しないって。去年に引き続き、オナ禁状態になっちゃったんだから、げんを担いでそのまま、箱根駅伝走れ」
 海が口を尖らせた。
「------ったい」
「え?なんて?」
「------ぎは、------------つつつ、め、ったい」
 紬季は、海の身体の上を張って耳元にたどり着く。
「終わったらしよ。限界まで我慢した海くんに抱かれるの、僕、好き」
「------ンジン」
「人参?そうそう。僕っていう人参ぶら下げて、箱根駅伝一区を走ってくれたまえ」
 紬季は本格的に勃ってきた海の股間の硬さに気づき、身体の上から横にずれた。そして、海の背中に手を突っ張って横向きになってもらう。
 その背中に抱きついた。
「------ぎ、も、ってる」
 紬季も勃っていると反発されて、
「アスリートにそんなそんな!不埒な思いは抱きません」
と反発しかえす。
 バニラの香りに包まれた海の首筋辺りの匂いをスンスン嗅いで、体温を感じて、いたずらするように腰を押し付けて、久しぶりに他愛のない夜を楽しんだ。
 キスだけ交わし合って、朝を迎えた。
 身体の下の方では繋がれないから、舌で存分に互いの口腔を犯し合って「もうゲン担ぎなんかいいからしよう」とどちらかが言い出すのを待って、でも、多分それは無いなとも分かっていて。
 玄関で帰り支度を始めた海に、紬季はこっそり額を持ってついていく。
「海くん。ずっと、考えていたことがあるんだ」
 紬季はランニングシューズを履いている海に話しかける。
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