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第六走

87:------------っかい、つつつなが、ろ

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「ぎっ」
 待って。行く。紬季。
 切れ切れな言葉を合図に、口の中に、熱い液が溢れ出す。
「海くん、エロい。死ぬほどエロい」
 ティッシュで口元を拭っていると、「ふうっ」と海が鼻息を漏らした。
 ベットの上で全裸に膝立ちになって、同じく全裸の紬季を見ている。
 伸ばされた手が、紬季を布団に押し倒してきた。
 でも、後頭部にしっかり手が添えられ、枕にきちんと着地させてくれる。
 まるで、童話の中に出てくる王子様みたいなエレガントさだ。
 どう見てもこの手のことに、悪気が無くても粗い感じがするのに、実際に肌を合わせてみるととても海は丁寧だ。キスのときもそうだった。うっとりするような甘いキスをして、その緩急付けて、紬季を喘がせる。
 大手町から鶴見まで駆けて区間賞を獲った王子様は今、紬季の両耳脇に手を付いて真上にいる。
 前もこんなことがあった。
 確か和室で……。
 あの時も実はドキドキしていた。
 でも、今は、もっと先に進もうとしている。
 雄の目で海が紬季を見ていた。
 身体から細かい水蒸気が出ているみたいな汗ばみ具合で、彼が静かに興奮しているのが分かる。
 海が肘を折る。唇が落ちてきた。
 軽く啄むようなキスは、すぐにねっとりしたものに変わる。
 余りにも上手すぎて、以前、誰かとキスの経験はあるのかと聞いたことがある。 
 海は無いと答えた。 
 全てが紬季が初めてだと。
 走り方が正確で表情を出さないから機械的だと言われるけれど、それは後天的に身につけたもので、絶頂ゴールとまで名付けられた気持ちのいい走りをする弟の空のような天性の勘が備わっているのかもしれない。
 とにかく、紬季の口の中の快感を引き出すのが上手い。
 唇は紬季の耳をはみ、うなじを刺激し、いよいよ胸までやってきた。
 そっちは初体験だ。結構感じる部分なのだが、今までの男らにも軽く刺激されただけだ。
 海に薄い舌で反応を伺うように最初、ペロッと舐められて、ビリビリとした刺激が走って紬季の腰が浮き上がった。
「うあっ。すごい」
 海の舌使いは、愛撫そのものだった。
 たっぷり時間をかけて、乳首だけじゃなく、鎖骨も肩も、脇の下まで愛してくれる。
 なんだかその献身的な行為に泣きたくなってきた。
「海くんが初めてだったらよかったなあ」
 ラブホテルのフリータイムの終わりの時間なんか気にせずに、初セックスを楽しみたかった。
 ずっと紬季の唇から離れていた海の唇が戻ってきて、窒息するみたいな甘いキスをくれた。
 昔のことなんて考えさせないというように、頭の芯が痺れるほどキスをされ続け、もうそこら辺から紬季は時間の概念を忘れた。
 重点的に乳首を舌でいじめられ、喘ぎまくる。
 強く突かれ、舐め上げられるともう駄目だ。
 腰が浮く。
 押さえつけられる。
 どうやっても逃れられないと感じて、それが恐怖ではなく快感で、絶え間なく感じた声が出て、そして、そんな声を出させた海は満足そうで。
 セックスってこんなに目まぐるしいもんだっけ?
 これまでは渇望したくせに、心どころか身体も上手く重なり合った気がしなかった。
 でも、今は魂までぴったりな感じだ。
 その後はへそだった。
 そして脇腹も。
 やがて、自慰行為で慰めてきた場所にも海の舌が到達する。
 愛おしいものみたいに側面に口付けられ、それだけで紬季は達しそうになった。
 口淫が始まり、海の熱い口の中を感じる。
 舌が蠢いて、紬季の性器に新種の生き物みたいに巻き付いてくる。
「海くん。すごいいいいっっ」
 達する間際に、海が口を離す。そして、キョロキョロと何かを探し始めた。
 拾ったコンドームは紬季がこっちの部屋に持ってきた。
「もしかしてローション?」
 海が頷くので、紬季は、ベットの下の棚を開けて、それを出した。
「僕も似た種類のを買ったんだ。あと、同じコンドームも。あとね」
 ローターやらバイブ、二人の性器を入れて楽しむオナホールなどが入ったのを袋ごと取り出し、中身を見せる。
「なんだかんだ言って、僕、すごくしたかった」
 すると、海が自分の胸をトントンと突き『俺も』と合図を送ってくる。
 そして、寝転がった紬季に跨ったまま、その両手を取って指先に口づけてきた。
「------------っかい、つつつなが、ろ」
 一回繋がろう。
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