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第五走
70:いっそのこと、セックスする?してくれる?
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海はティッシュボックスから数枚引き抜いて、手に握らせてやる。
「ボグっ、おがあさんにっ、会った」
『お母さん??』
「ボグを生んだ、方のっ」
紬季の父親は、産みの母親の人間性をなんとなく分かっているようで、少し納得したような声で『だからか』と言った。
「北海道からこっちまで会いに来てくれるって言ってくれたから、……お金、渡した。約束を破ってごめんなさい」
『話してくれたからもういいいよ。一人で平気かい?』
父親に労られて、一旦落ち着いたように見えた紬季の感情はまた高ぶったらしい。
「かいぐん、がっ、いる」
『烏堂くん?じゃ、元気になったら迷惑かけたこと、何らかの形でお礼しなさい。それと、しばらくはお父さんにもメールや電話をマメに。分かった?』
「うん。ごめん、なざいっ」
携帯が切れた。それをベットに放り出した紬季は、情けない顔で涙を拭って、
「ああっ!!、もうっ!!」
と絶望したように叫んで、どうしてこんな風になってしまったんだというように枕の下に潜り込んだ。
「------------元気、だ、せ」
海は紬季の背中を軽く叩く。
「無理」
一呼吸置いて、
「ああっ!!!!、もうっ!!!!」
とまだ叫んだ紬季は、続けて海が耳を疑うようなことを言った。
「悶々とする。……したい」
一体、何をだ?
まさか、セックスか?
海の心の中の疑問に答えるかのように、間髪入れず紬季が言った。
「一人エッチ」
『俺、部屋にいるんだけど?』
とメモ欄に書いて、紬季の鼻先にグリグリと押し付ける。
「そうだよ」
鬱陶しそうに紬季が答えた。
「こういう時にすらしたくなる」
『会いに行く前も相当したろ?』
「何で分かるの?」
紬季がはっとした表情をする。
『母親に会うこと、気にはなっていたから、メッセージを送った。でも、何度送っても既読すらならなくてこりゃなんかあったなって。部屋にいるかと思って最初にそっち行ったんだ。そしたら、匂った。紬季、前に言っていたよな。自分はスケベっていう病気だって。一人エッチが止まらなくなるって。でも、それ、俺と会ってから治まってたんじゃないのか?再発したの最近だよな?』
いつ頃からリビングにあんな匂いがするようになったんだろうなと海は考える。
確か、二、三週間前。紬季が産みの母親とコンタクトをしだしたときと重なる。
海はベットの枕元に膝をかけた。
「いっそのこと、セックスする?してくれる?なんか、もう、全部がどうでもいい気分」
紬季がうつろな顔で海を見ている。
『どうでもいい気分でされてはこっちが困る』
と海は思った。
だが、グズグズな泣き顔の、投げやりな紬季はどう見てもそそる。
男の本能で、甘い言葉で慰めて身体を擦り続けてやれば、事に運べそうなのが分かる。
でも、終わった後に、海も紬季も後悔することは分かっている。
その後はきっと、なんとなく会い辛くなって、自然消滅。
そして、また紬季は出会い系へ。
これ、一番駄目なパターンだ。
それに、事に及んだら海は確実に門限に間に合わない。
少し冷静さを取り戻し、横向きに寝たままダラダラ目から涙をこぼす紬季の頭を撫でながら、もう片方の手で散らばったティッシュを片付けていく。
そして、それが終わると壁際に回り込んだ。
紬季を起こして、座った状態でバックハグ。
でも、手首は抑え込む。
「なにこれ?」
と戸惑う紬季に、
「------------オナ禁」
と海は伝える。
すると、まるで被害者みたいな顔をして紬季が振り向いた。
「分かんないくせに。命令すんな」
「------------俺も、すすすすする」
紬季がありったけの力で暴れ始める。
だが、日々鍛えている海だから、抑え込むのは容易い。
「今、出したいんだって、僕はっ。心がモヤモヤして爆発しそうなんだって」
「ボグっ、おがあさんにっ、会った」
『お母さん??』
「ボグを生んだ、方のっ」
紬季の父親は、産みの母親の人間性をなんとなく分かっているようで、少し納得したような声で『だからか』と言った。
「北海道からこっちまで会いに来てくれるって言ってくれたから、……お金、渡した。約束を破ってごめんなさい」
『話してくれたからもういいいよ。一人で平気かい?』
父親に労られて、一旦落ち着いたように見えた紬季の感情はまた高ぶったらしい。
「かいぐん、がっ、いる」
『烏堂くん?じゃ、元気になったら迷惑かけたこと、何らかの形でお礼しなさい。それと、しばらくはお父さんにもメールや電話をマメに。分かった?』
「うん。ごめん、なざいっ」
携帯が切れた。それをベットに放り出した紬季は、情けない顔で涙を拭って、
「ああっ!!、もうっ!!」
と絶望したように叫んで、どうしてこんな風になってしまったんだというように枕の下に潜り込んだ。
「------------元気、だ、せ」
海は紬季の背中を軽く叩く。
「無理」
一呼吸置いて、
「ああっ!!!!、もうっ!!!!」
とまだ叫んだ紬季は、続けて海が耳を疑うようなことを言った。
「悶々とする。……したい」
一体、何をだ?
まさか、セックスか?
海の心の中の疑問に答えるかのように、間髪入れず紬季が言った。
「一人エッチ」
『俺、部屋にいるんだけど?』
とメモ欄に書いて、紬季の鼻先にグリグリと押し付ける。
「そうだよ」
鬱陶しそうに紬季が答えた。
「こういう時にすらしたくなる」
『会いに行く前も相当したろ?』
「何で分かるの?」
紬季がはっとした表情をする。
『母親に会うこと、気にはなっていたから、メッセージを送った。でも、何度送っても既読すらならなくてこりゃなんかあったなって。部屋にいるかと思って最初にそっち行ったんだ。そしたら、匂った。紬季、前に言っていたよな。自分はスケベっていう病気だって。一人エッチが止まらなくなるって。でも、それ、俺と会ってから治まってたんじゃないのか?再発したの最近だよな?』
いつ頃からリビングにあんな匂いがするようになったんだろうなと海は考える。
確か、二、三週間前。紬季が産みの母親とコンタクトをしだしたときと重なる。
海はベットの枕元に膝をかけた。
「いっそのこと、セックスする?してくれる?なんか、もう、全部がどうでもいい気分」
紬季がうつろな顔で海を見ている。
『どうでもいい気分でされてはこっちが困る』
と海は思った。
だが、グズグズな泣き顔の、投げやりな紬季はどう見てもそそる。
男の本能で、甘い言葉で慰めて身体を擦り続けてやれば、事に運べそうなのが分かる。
でも、終わった後に、海も紬季も後悔することは分かっている。
その後はきっと、なんとなく会い辛くなって、自然消滅。
そして、また紬季は出会い系へ。
これ、一番駄目なパターンだ。
それに、事に及んだら海は確実に門限に間に合わない。
少し冷静さを取り戻し、横向きに寝たままダラダラ目から涙をこぼす紬季の頭を撫でながら、もう片方の手で散らばったティッシュを片付けていく。
そして、それが終わると壁際に回り込んだ。
紬季を起こして、座った状態でバックハグ。
でも、手首は抑え込む。
「なにこれ?」
と戸惑う紬季に、
「------------オナ禁」
と海は伝える。
すると、まるで被害者みたいな顔をして紬季が振り向いた。
「分かんないくせに。命令すんな」
「------------俺も、すすすすする」
紬季がありったけの力で暴れ始める。
だが、日々鍛えている海だから、抑え込むのは容易い。
「今、出したいんだって、僕はっ。心がモヤモヤして爆発しそうなんだって」
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