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第五走
59:------------しよ?
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『いいの?じゃあ、和風ハンバーグ!』
『OK。コンビニでも何か買っていくから、ゆっくり風呂入っていて』
焦って転ばれては困るので、まだ時間があることを暗に伝える。
『わかった。買い物が終わったら勝手に入ってきて』
テイクアウトの品を待ち、その後、宣言どおりコンビニに寄ってから紬季の部屋へ。
電話が切れてから二十分は過ぎたから、もうシャワーは浴び終わっているだろうと思ったのだが、リビングは無人だった。
コーヒーのいい匂いがキッチンから漂っている。
『来たぞ、と風呂場に声を掛ければいいのか?いや、それだと覗きみたいじゃねえか』
海は心の中でそう思い、キッチンの方へ。
爆裂美味いコーヒーの準備途中だったようだ。
コーヒー豆は電動ミルで挽かれた状態になっている。
「わあ、海くん。もう来ていたの?僕、コーヒーの準備に手間取ってしまって」
西城大学陸上部と染め抜かれたスポーツタオルで髪を拭きながら、紬季が脱衣所の方から出てきたので、海はタオルを指差し笑ってしまった。モダンな部屋の雰囲気と全然、合っていない。
「何で笑うんだよ!これ、公式ホームページで買って、昨日、届いたばかりなんだぞ!」
グッズの売り上げは、部の貴重な収入源だ。
他の部と違って、道具代や設備施設にはそこまで費用はかかっていないが、遠征費用などはどうしても嵩みがちだ。
『ありがとうございます!』と身体を九十度に折り曲げるようにして頭を下げると、紬季が笑った。
風呂上がりのいい匂いが漂ってくる。
それもや安っぽいシャンプーの匂いではなく、ミルクみたいな品のいい香りだ。
「いつもは手動で豆を挽くんだ。でも、今日時間なくて、電動ミルにした。それでも、時間が足りなかった」
焦った感じでコーヒーを作り始める紬季を、海はキッチンにもたれながら見学する。
「何?」
と聞いてくるので、『別に』と肩をすくめる。
そう態度で表したくせに、今度は周りをウロウロして最後にうざがられた。
『キス』
とメッセージを送ると、キッチンの作業台に寝かされていた紬季の携帯が『プー』と音を立て、砂時計のような胴の部分がくびれたドリッパーからマグカップにコーヒーを注ぎかけていた紬季がそれを見て「ぎゃあ」と叫ぶ。
「見てよ。こぼれちゃったじゃないか!」
『どうだった?』
「今、聞かないで」
紬季は半泣きでキッチンペーパーで作業台にこぼれた茶色い液体を拭い始める。
『ソファーで聞いたら、止まらなくなってヤバいと思うから今聞いた』
「止まらないって?」
『キス』
「ふぎゃあっ」
『紬季さん。踏まれた猫みたい』
紬季はドリッパーを作業台に一旦置く。
「海くんさあ。この前のあれは、気の迷いでしょ?同居生活が終わるから、気持ちが盛り上がって……」
「------------嫌?」
すると、紬季の頬がさあっと赤くなり、彼が口元を押さえた。そして、ごにょごにょ言う。
「貴方が帰宅されてから、発狂しましたけど?」
「------------でも、------話題」
「そうだよ。わざと出さなかったよ。分かるでしょ?ていうか分かって。僕の恥ずかしさをっ!」
「------------しよ?」
海は紬季の手を取って、引き寄せる。
でも、芳しい反応がない。
だから、携帯でメッセージを連打する。
『しませんか?させてください?させてくださいませんか?させろ』
「最後、笑かしに来るなっ!」
海は携帯を置く。そして、距離を詰めた。
そっと、紬季の腰に手を回す。
よろけられてもしっかり支えられるようにだ。
シャワーを浴び終えたばかりの、紬季の身体はしっとりと熱い。
紬季がうつむくので、しっかり顎を掴んで上げさせる。
彼は、また「ぎゃあ」と色気のない声を上げる。
それは、紬季の照れ隠しだと海は分かっているので、問題ない。
見つめると、「キス、いいよ」というように紬季が瞼を閉じたので、海は前回みたいな感じで唇を重ねた。
鼻息がかかりそうになって困る。
自分と同じぐらいの男を支えて真っすぐ立ったままでいるのも大変だ。
唇を離すと、紬季がまたコーヒーの準備をしようとするので、そのまま手を取ってキッチンを出る。
和室とソファーで迷って、今、和室に寝転がったら歯止めが効かないと判断し、ソファーに向かった。
『OK。コンビニでも何か買っていくから、ゆっくり風呂入っていて』
焦って転ばれては困るので、まだ時間があることを暗に伝える。
『わかった。買い物が終わったら勝手に入ってきて』
テイクアウトの品を待ち、その後、宣言どおりコンビニに寄ってから紬季の部屋へ。
電話が切れてから二十分は過ぎたから、もうシャワーは浴び終わっているだろうと思ったのだが、リビングは無人だった。
コーヒーのいい匂いがキッチンから漂っている。
『来たぞ、と風呂場に声を掛ければいいのか?いや、それだと覗きみたいじゃねえか』
海は心の中でそう思い、キッチンの方へ。
爆裂美味いコーヒーの準備途中だったようだ。
コーヒー豆は電動ミルで挽かれた状態になっている。
「わあ、海くん。もう来ていたの?僕、コーヒーの準備に手間取ってしまって」
西城大学陸上部と染め抜かれたスポーツタオルで髪を拭きながら、紬季が脱衣所の方から出てきたので、海はタオルを指差し笑ってしまった。モダンな部屋の雰囲気と全然、合っていない。
「何で笑うんだよ!これ、公式ホームページで買って、昨日、届いたばかりなんだぞ!」
グッズの売り上げは、部の貴重な収入源だ。
他の部と違って、道具代や設備施設にはそこまで費用はかかっていないが、遠征費用などはどうしても嵩みがちだ。
『ありがとうございます!』と身体を九十度に折り曲げるようにして頭を下げると、紬季が笑った。
風呂上がりのいい匂いが漂ってくる。
それもや安っぽいシャンプーの匂いではなく、ミルクみたいな品のいい香りだ。
「いつもは手動で豆を挽くんだ。でも、今日時間なくて、電動ミルにした。それでも、時間が足りなかった」
焦った感じでコーヒーを作り始める紬季を、海はキッチンにもたれながら見学する。
「何?」
と聞いてくるので、『別に』と肩をすくめる。
そう態度で表したくせに、今度は周りをウロウロして最後にうざがられた。
『キス』
とメッセージを送ると、キッチンの作業台に寝かされていた紬季の携帯が『プー』と音を立て、砂時計のような胴の部分がくびれたドリッパーからマグカップにコーヒーを注ぎかけていた紬季がそれを見て「ぎゃあ」と叫ぶ。
「見てよ。こぼれちゃったじゃないか!」
『どうだった?』
「今、聞かないで」
紬季は半泣きでキッチンペーパーで作業台にこぼれた茶色い液体を拭い始める。
『ソファーで聞いたら、止まらなくなってヤバいと思うから今聞いた』
「止まらないって?」
『キス』
「ふぎゃあっ」
『紬季さん。踏まれた猫みたい』
紬季はドリッパーを作業台に一旦置く。
「海くんさあ。この前のあれは、気の迷いでしょ?同居生活が終わるから、気持ちが盛り上がって……」
「------------嫌?」
すると、紬季の頬がさあっと赤くなり、彼が口元を押さえた。そして、ごにょごにょ言う。
「貴方が帰宅されてから、発狂しましたけど?」
「------------でも、------話題」
「そうだよ。わざと出さなかったよ。分かるでしょ?ていうか分かって。僕の恥ずかしさをっ!」
「------------しよ?」
海は紬季の手を取って、引き寄せる。
でも、芳しい反応がない。
だから、携帯でメッセージを連打する。
『しませんか?させてください?させてくださいませんか?させろ』
「最後、笑かしに来るなっ!」
海は携帯を置く。そして、距離を詰めた。
そっと、紬季の腰に手を回す。
よろけられてもしっかり支えられるようにだ。
シャワーを浴び終えたばかりの、紬季の身体はしっとりと熱い。
紬季がうつむくので、しっかり顎を掴んで上げさせる。
彼は、また「ぎゃあ」と色気のない声を上げる。
それは、紬季の照れ隠しだと海は分かっているので、問題ない。
見つめると、「キス、いいよ」というように紬季が瞼を閉じたので、海は前回みたいな感じで唇を重ねた。
鼻息がかかりそうになって困る。
自分と同じぐらいの男を支えて真っすぐ立ったままでいるのも大変だ。
唇を離すと、紬季がまたコーヒーの準備をしようとするので、そのまま手を取ってキッチンを出る。
和室とソファーで迷って、今、和室に寝転がったら歯止めが効かないと判断し、ソファーに向かった。
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