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第三走

37:それって、やきもち的な?

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『どうしても?』
 こういうしつこさ、いつもの海らしくない。
 そこから、海はキーボードで思いを伝えて来なくなった。 
 海のマッサージが終わると、今度は交代。
 紬季の手を保湿も兼ねてシアーバターを付けて海がマッサージしてくれる。
「別に僕、海くんの恩師を取ったりしないよ?」
と言ってみたのだが、ますます海から反応は無い。
 頷くなり、首を振るなりなんなりしてよ!
と紬季は言いたくなる。
 一体、何に機嫌を悪くしているの?
 う~ん、う~んと、紬季は考えているうちに、ぱっと答えが出てきた。
「僕が陸上部の方にハマりそうなのが嫌?」
と聞くと、両手を両手で握られて、いつものニギニギをされる。
 一本、一本の指を丹念に海は揉んでくるので、とても気持ちがいいのだ。
 でも、今日はちょっと力が強い。
「それって、やきもち的な?」
 何気なく言うと、両手を握った海がぐっと紬季を引き寄せて、キスするみたいに顔を傾け、それは、紬季のうなじをかすっていく。
 すうっとそこで深呼吸され、身体がいつものごとくビリっとする。
 バニラの香りが好きだから、猫吸いならぬ紬季吸いだと海は言うが、男相手にこんなことしなくても。
「海くん、そろそろ」
 普段は一瞬なのに、今夜はずっと鼻先を項に埋めているので、紬季の腰の当たりがムズムズ始める。
 これをやられると快感が背骨を伝って尾てい骨のあたりを刺激して困るのだ。
「う、ひゃ。本当にもう、……あっ」
 あまりの恥ずかしい声に、海の手を振りほどきかけると、そのまま布団に横たわらせられた。
 海は指先を握ったまま、じっと紬季を見つめてくる。
 片方の手が離れ、トンッと身体でリズムを取った。
 何か言おうとしている。
 恥ずかしいが、紬季も海を見つめ返す。
「------------ファン。マジで?」
 聞かれていた!
 やっぱり聞かれていた!
 紬季は瞬時に赤くなるが、海が返事を催促するように、ますます握る指に力を入れてくる。
「うん」
「------------やった」
 蕩けるような笑顔を見せた海は、それだけでもかなり珍しいことなのに、急に紬季を抱き寄せてきた。
 ここまで密着する行為は初だ。
 ハグみたいな一瞬触れ合うものじゃな無い。
 抱擁。まさにそれだ。
 そして、海は再び長い時間をかけて、また「------------やった」と言った。
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