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第三走
31:色気ねえな
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『匂い』
「に……何?ああ、匂い。匂いね」
紬季が動揺してる最中、両手を握ったまま海が腹筋の力だけで起き上がった。
まるで、座位をされている気分になる。
その姿勢のまま海が紬季の首筋に顔を近づけてきて、鼻でちょんとうなじを突いてから、すうっ息を吸った。
その瞬間、ビリビリッと紬季の身体に甘い刺激が走る。
「ぎゃあっ!?」
その悲鳴に、『色気ねえな』とでもいうように苦笑しながら紬季の手を離し、またごろんと寝転がった海が身体を捻ってキーボードを叩く。
『仕返し。さっき、背中にされたから。俺、背中弱いのに』
紬季は、力の抜けた身体でなんとか海からどこうとする。
そんな紬季を海は黙って見ている。
視線がくすぐったいを超えて、なんというか、身体を刺激してきて困る。
「もう寝るね」
寝室に向かいかけると、
『紬季。紬季さん!』
と海が呼びかけてくる。
「寝るってば。寝かせてよ」
と熱い頬を両手で押さえながら、紬季は懇願する。
だが、海は強引で、
『リスト六の件』
とまだ話しかけてくる。
腹筋したり走ったりとリストの四をこなすだけで精一杯で、新規リストの方は滞っていた。
絞り出して書いたのは、
六.人の役に立ってみる。
頼らなければ出来ないことも多いので、リスト六はかなり背伸びした内容だった。
まあ、こっちにこいよ。
というように、海が真ん中に寝ている布団から少し端にずれる。
なので、紬季は足元に腰掛けた。
すると、海は違う違うというように、もっと上の部分を叩く。
そこまで移動すると、今度は、
『態勢辛くない?寝そべれば?』
「一つの布団に?」
『そんなに、おかしいことか?子供の頃、空とはよくこういうことをしてたけど?』
海は何を気にすることがあるんだという表情だ。
いや、だって、僕たちは二十歳の成人男子ですよ?
それに再三申し上げていますが、僕の恋愛対象は男です。
本当にそこんとこ分かった上で、気にしてないって態度を取ってんのかなあ?それとも、実際のところはよく分かっていないのかなあ?
まあ、いいや。
当人が寝そべればいいと言ったので、紬季はそのとおりにする。
悔しいが、ものすごく緊張した。
だが、命令した当人は満足そうだ。
『紬季さ。誰かの役に立つってリストを作っただろ?』
「うん。難しいかもしれないけれどね」
『また、そんなネガティブ発動する。泣かれるほどありがたがられることがあるから、やってみねえ?』
「僕で出来るの?泣かれるほどって、何か、高度なスキルが求められるような気がするんだけど」
『簡単、簡単。西城大学陸上部の後援会に入るだけ』
「は?はあ??」
紬季はたまげた。
「後援会って、選手の遠征のために車を出してあげたり、寄付をしたりするってあれ?」
『そういう役目もあるけれど、ちょっとした差し入れしたり、練習手伝ったりとか色々あるんだ。ボランティアスタッフって扱いで。大学近くのグラウンドでやっているから、紬季の足だと、そうだな一時間?いや、四十五分ぐらい歩いてかかるかもだけど。箱根駅伝の候補選手を間近で見られるぜ。当然、ヘラオもいるし』
「候補選手に赤星先生も!うわあ。そりゃすごい!」
興奮しきりな紬季だったが、そこでふっと冷静になった。
「だから、さっき、聞いたの?」
『何を?』
「アスリートの身体を触って妙な気分にならないかって」
『ちげーわ』
「……」
『本当だって』
その後、海が髪をかきむしる。
それが、言いたくないことを言う前の動作だと紬季は知っている。
『さっきのは個人的な興味』
「どういう意味での?」
「に……何?ああ、匂い。匂いね」
紬季が動揺してる最中、両手を握ったまま海が腹筋の力だけで起き上がった。
まるで、座位をされている気分になる。
その姿勢のまま海が紬季の首筋に顔を近づけてきて、鼻でちょんとうなじを突いてから、すうっ息を吸った。
その瞬間、ビリビリッと紬季の身体に甘い刺激が走る。
「ぎゃあっ!?」
その悲鳴に、『色気ねえな』とでもいうように苦笑しながら紬季の手を離し、またごろんと寝転がった海が身体を捻ってキーボードを叩く。
『仕返し。さっき、背中にされたから。俺、背中弱いのに』
紬季は、力の抜けた身体でなんとか海からどこうとする。
そんな紬季を海は黙って見ている。
視線がくすぐったいを超えて、なんというか、身体を刺激してきて困る。
「もう寝るね」
寝室に向かいかけると、
『紬季。紬季さん!』
と海が呼びかけてくる。
「寝るってば。寝かせてよ」
と熱い頬を両手で押さえながら、紬季は懇願する。
だが、海は強引で、
『リスト六の件』
とまだ話しかけてくる。
腹筋したり走ったりとリストの四をこなすだけで精一杯で、新規リストの方は滞っていた。
絞り出して書いたのは、
六.人の役に立ってみる。
頼らなければ出来ないことも多いので、リスト六はかなり背伸びした内容だった。
まあ、こっちにこいよ。
というように、海が真ん中に寝ている布団から少し端にずれる。
なので、紬季は足元に腰掛けた。
すると、海は違う違うというように、もっと上の部分を叩く。
そこまで移動すると、今度は、
『態勢辛くない?寝そべれば?』
「一つの布団に?」
『そんなに、おかしいことか?子供の頃、空とはよくこういうことをしてたけど?』
海は何を気にすることがあるんだという表情だ。
いや、だって、僕たちは二十歳の成人男子ですよ?
それに再三申し上げていますが、僕の恋愛対象は男です。
本当にそこんとこ分かった上で、気にしてないって態度を取ってんのかなあ?それとも、実際のところはよく分かっていないのかなあ?
まあ、いいや。
当人が寝そべればいいと言ったので、紬季はそのとおりにする。
悔しいが、ものすごく緊張した。
だが、命令した当人は満足そうだ。
『紬季さ。誰かの役に立つってリストを作っただろ?』
「うん。難しいかもしれないけれどね」
『また、そんなネガティブ発動する。泣かれるほどありがたがられることがあるから、やってみねえ?』
「僕で出来るの?泣かれるほどって、何か、高度なスキルが求められるような気がするんだけど」
『簡単、簡単。西城大学陸上部の後援会に入るだけ』
「は?はあ??」
紬季はたまげた。
「後援会って、選手の遠征のために車を出してあげたり、寄付をしたりするってあれ?」
『そういう役目もあるけれど、ちょっとした差し入れしたり、練習手伝ったりとか色々あるんだ。ボランティアスタッフって扱いで。大学近くのグラウンドでやっているから、紬季の足だと、そうだな一時間?いや、四十五分ぐらい歩いてかかるかもだけど。箱根駅伝の候補選手を間近で見られるぜ。当然、ヘラオもいるし』
「候補選手に赤星先生も!うわあ。そりゃすごい!」
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「だから、さっき、聞いたの?」
『何を?』
「アスリートの身体を触って妙な気分にならないかって」
『ちげーわ』
「……」
『本当だって』
その後、海が髪をかきむしる。
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