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第四章
91.僕がこの世で最後の半神です。
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「ち、違いますよ。確かに、ギガは僕の祖先ですが、スエン様と僕は直接の血の繋がりはありません」
「先生は違うって否定していたんだけどオレ、ディンさんは先生の子供だと思ってたんだ。だって神紋が似ている」
「これは」
ディンが自分の手の甲を隠すようにして撫でた。
「悪いことを聞いてしまったのかな、オレ?詳しくは先生に聞けってウトゥさんに言われてたんだけど、なんか色々あってきちんと話ができていなくて」
「スエン様とギガが聖婚していたのは事実です。ですがギガはクルヌギアから逃走し、辺境の地で土人形と再婚して子孫を残しました。その末裔が僕です」
「そうだったんだ。先生、嘘を言ってなかったんだ。うわあ。オレ、キ国から先生が戻ってきたら謝り倒さなきゃ」
森羅は一瞬しゃがみこんだ。
「本当に何も聞いてらっしゃらないのですか?僕が昔したことを」
「クルヌギアに迷い込んできたディンさんは、先生と一時期、一緒に住んでいたんでしょう?その後はウトゥさんの従者になったと」
「その間に重要なことが」
「まさか、寝た?」
「ありえません。逆ですっ!!」
「逆って、先生のこと、嫌いだってこと?」
「だったが正しいかと」
急にディンが背負っていた鞄を下ろし、中から鞘付きのナイフを森羅に向かって差し出した。
「どうか、罰を」
「話が読めない?!」
ディンが森羅を見上げる。
「森羅様が神紋を授かっている最中、見てしまったんです。スエン様の腰にある傷。あれは昔、僕が付けたものです」
「どうしてっ?」
「憎かった……から」
ディンの声は消え入りそうだった。
「先生に何かされた?」
「いいえ。僕は何も。半神だから居場所が無くてキ国や辺境の国を彷徨った後、こちらにやってきたとき、物凄く優しくしてくれました。だから、尚更憎かった」
「待って」
森羅は頭がこんがらがりそうだった。
「ディンさんの祖先はギガって人なんだよね。先生と聖婚した事実がある。先生はその人の寿命を変えてしまったことを悔やんでいた。ギガって人はその後、土人形を結婚したんだよね?そして、子孫がディンさん。じゃあ、寿命の長さって引き継がれる?」
「ええ。代を経るごとに短くなりますが、それでも土人形の何倍も長い。そして、確認できている限りで、僕がこの世で最後の半神です。土人形とは時を共有できない。かといって神々とは立場が違う。だからずっと居場所が有りませんでした。当時はスエン様に恨みしか無く、馬鹿なことをしてしまいました。あの場で殺して下さればよかったのに」
「先生は違うって否定していたんだけどオレ、ディンさんは先生の子供だと思ってたんだ。だって神紋が似ている」
「これは」
ディンが自分の手の甲を隠すようにして撫でた。
「悪いことを聞いてしまったのかな、オレ?詳しくは先生に聞けってウトゥさんに言われてたんだけど、なんか色々あってきちんと話ができていなくて」
「スエン様とギガが聖婚していたのは事実です。ですがギガはクルヌギアから逃走し、辺境の地で土人形と再婚して子孫を残しました。その末裔が僕です」
「そうだったんだ。先生、嘘を言ってなかったんだ。うわあ。オレ、キ国から先生が戻ってきたら謝り倒さなきゃ」
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「本当に何も聞いてらっしゃらないのですか?僕が昔したことを」
「クルヌギアに迷い込んできたディンさんは、先生と一時期、一緒に住んでいたんでしょう?その後はウトゥさんの従者になったと」
「その間に重要なことが」
「まさか、寝た?」
「ありえません。逆ですっ!!」
「逆って、先生のこと、嫌いだってこと?」
「だったが正しいかと」
急にディンが背負っていた鞄を下ろし、中から鞘付きのナイフを森羅に向かって差し出した。
「どうか、罰を」
「話が読めない?!」
ディンが森羅を見上げる。
「森羅様が神紋を授かっている最中、見てしまったんです。スエン様の腰にある傷。あれは昔、僕が付けたものです」
「どうしてっ?」
「憎かった……から」
ディンの声は消え入りそうだった。
「先生に何かされた?」
「いいえ。僕は何も。半神だから居場所が無くてキ国や辺境の国を彷徨った後、こちらにやってきたとき、物凄く優しくしてくれました。だから、尚更憎かった」
「待って」
森羅は頭がこんがらがりそうだった。
「ディンさんの祖先はギガって人なんだよね。先生と聖婚した事実がある。先生はその人の寿命を変えてしまったことを悔やんでいた。ギガって人はその後、土人形を結婚したんだよね?そして、子孫がディンさん。じゃあ、寿命の長さって引き継がれる?」
「ええ。代を経るごとに短くなりますが、それでも土人形の何倍も長い。そして、確認できている限りで、僕がこの世で最後の半神です。土人形とは時を共有できない。かといって神々とは立場が違う。だからずっと居場所が有りませんでした。当時はスエン様に恨みしか無く、馬鹿なことをしてしまいました。あの場で殺して下さればよかったのに」
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