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第四章

75.珍しい。先生が自慢したがっている

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「はい?」
「先日、あなたがウトゥからもらった謝礼金だって力の一種です。権力だってそうでしょう」
「じゃあ、土人形が神々に勝る力があるってことですか?うーん。分かりません」
 森羅はショウの身体を撫で回す。甘えん坊猫は、グルグルと喉を鳴らして喜び始めた。
 スエンが焼きたてパンのニンダを見せた。
「これは穀物の神が土人形に大麦の栽培を許可して作らせたものです。そもそも、土人形誕生のきっかけは、農耕が面倒だった神々の代わりをさせたかったからなので。神々の奴隷じゃなくなった後も、土人形は穀物の神に毎月謝礼を払うことになっています」
「毎月?!じゃあ、神々は働かなくても暮らしていけますね」
「ええ。権利収入で暮らしている神々がほとんどです」
 イナンナが整った顔を盛大にしかめる。
「その耳障りのいい単語ができたあたりから神々の堕落は加速したわね。大昔は権利収入は年に一回だったんだけど、ついこの間、二千年ぐらい前かなあ。月払いに変わってからはさらに」
「シンラだったら、神々が作った世界を乗っ取るにはどうしますか?」
 急に聞かれて森羅は焦った。
「え、ええ?神様を目の前にしてそれはちょっと言いづらいというか」
 だが、スエンはちょっと得意げだ。
「彼らに貴方が優れた土人形であことを見せて上げてください。何かあった時、手を取って助け合えるはず」
(珍しい。先生が自慢したがっている)
 森羅が咳払い。
 神々は、お手並み拝見というような感じでこちらを見ている。
「オレだったらまず軍、医療、食料を押さえようとします」
「軍はねえ、もう押さえられているの」
とイナンナが言い、要の一つをすでに押さえられていたことに森羅は仰天する。
「権利収入ってさっき仰ってましたよね。神々が作り出してくれたものに対して土人形は使用料を払わなければならない。軍が押さえられてしまったのはひょっとして過大な権利金を戦の神々が貰えるようになったからでは?」
「そうよ。その通り」
 イナンナは愛の女神であり戦いの女神でもある。だから、不服そうだ。
「もっと権利収入の額を上げるから軍に関わらせて欲しいって土人形共が言ってきて、最初は小さな役職を偉い戦神達が与えてしまったの。そうしたら、さらにもっと権利収入を上げるからと、もっと軍に関わらせろと土人形共が。関わらせたらその分、権利金が上がって神々は贅沢ができるから、どんどん軍に食い込んできたわ。最近じゃあ、司令部まで乗っ取られた形になってしまっていて」
「医療や食料も危うそうですね」
「ええ。だから阻むわ」
 穀物女神ニサバがちょっと得意げに鼻を鳴らす。
 皮を敷いた机の上に、茶色から白色までの粉を四種類並べ始めた。

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