【未完】オレ、異世界で偽装聖婚して恋愛小説家デビューすることになりました!

遊佐ミチル

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第四章

73.口の中で戦が起こっているみたいね

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 イナンナは「長くクルヌギアにいてあげてね」と何度も言い、ドゥムジは「いい毛布を作ってやろうか」と聞いてくる。
(牧神の手作り毛布ってすごそうだ)
 ドゥムジは羊がいかに大切な動物なのか力説してくれる。
「羊は雑草を喰み、栄養価の高い乳を出し、乳は加工すれえばバター、チーズ、ヨーグルトとなり、最終的に肉として神々の食卓を満たしてくれる最も重宝される生き物だ」
 小説のネタ作りのためにメモを取る森羅が真面目で好ましいらしい。
 ドゥムジとは男同士ということもあって仲良く慣れそうだった。
 同日、神々が次々とやって来る。
 もしかしたら、スエンと森羅を驚かせるために日を合わせて来てくれたのかもしれない。
 穀物の女神ニサバは、樽でビールを持ってきてくれた。
(ビールってこの時代からあったのか。そうか。大麦を発酵させて作るんだった。食探にいつもでてくる硬いパンも大麦。っってことは小麦はまだないのかな?)
 ドゥムジと同じ牧神のシャッカンは、大鍋にスムグという料理を。
「玉ねぎと豆を使った料理で、香辛料クミンが入ったヨーグルトソースと混ぜて食べるんだ」
と大量に森羅によそってくれる。
 正義の神様ツァルバニトゥは、ウルクのメルスという果実入の焼き菓子を持ってきてくれた。誰かに頼んで作ってもらったらしい。
 癒やしの神ダムは、にんにくや玉ねぎ、果実をマリネしたヒルツムという名の料理を。
 森羅がその度に聞きまくるので、さながらバビロニアクッキング教室のよう。
 他にも色々とまだ世に出ていないバビロニア料理を習った。
 ニンダというパン。
 カス―という牛肉と香り高い香辛料マスターシードを使ったスープ。
 ブトゥットゥムキシャ―ヌという舌を噛みそうなピスタチオとレンズ豆、ビールを使ったメインディッシュになる料理。
 スフルガルというクミン、マスタード、フェンネルといった香辛料を使った鮭料理。
 ウトゥはほとんどの神々は怠け者だと言っていたが、スエンの家にお祝いにやってくる神々は別のようだ。食事をしながら談笑中も、今、どんな動植物を交配しているか盛んに話している。
 美味しいバビロニア料理を教えてくれたお礼に、森羅は鹿肉に胡椒をふりかけごちそうする。
「うーん。口の中で戦が起こっているみたいね」
とイナンナは身体を震わせながら言い、ドゥムジは絶句。
 ツァルバニトゥは目を白黒させたのち、十回おかわりした。
「一体これは何?」
 興味津々に聞かれ、森羅は四つの実を使って説明を始めた。
 三つはショウの兄が森羅に向かって転がしてきたものだ。
「黒、白、緑、赤の実はどれも、原種の森にあったものです。色が違うと味も変わってきます。黒胡椒は完熟間近で地面に落ちたもので刺激的な味わいが、完熟しきった状態で地面に落ちると白胡椒になり刺激はより繊細に、緑のはオレが元いたところでは、オイル漬けや塩漬けにしていた記憶があります。赤いのは実の形が他と違うので種が異なるようです」

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