【未完】オレ、異世界で偽装聖婚して恋愛小説家デビューすることになりました！

第三章

70.……にゃーん

「母ニャーゴの乳を貰えないので、山羊の乳で代用します。放牧先に山羊の回収をしに行ってくるので、森羅は湯屋でこの仔を洗って下さい。目がもうすぐ開きそうなので洗ったら必ず目隠しを。最初に目にした相手を親と見做して物凄くの懐くので。私はこの仔の親になってくれる神々を早急に探しますので」
　ぬるま湯が張られた湯屋で生まれたての仔ニャーゴを洗う。
「姿が他の猫と少し違うだけで育児放棄されちゃうなんて、可愛そうだな、お前」
　仔ニャーゴは早くも猫の自覚が目覚めたのか、グゥッ、グゥッ、グゥッと喉を鳴らし始める。
　水滴が嫌なようで前足をバタバタさせはじめた。
　はらりと目隠しが取れ、目が合う。
「あ、ヤバイ」
と声に出す前に仔ニャーゴは猛然と森羅に向かって突進してきて、濡れた身体をこすりつけてきた。
「オレ、お前の親じゃないって」
と否定すると、
「……にゃーん」
とこの世が終わりかと思うほどの悲しげな声。
「先生が、育ての親を探してくれるから安心しろって」
　濡れた身体を布で拭き上げると、お礼なのか森羅の顔をザラザラの舌で舐めてくる。
「痛てて」
　スエンが山羊のミルクを絞って持ってくる頃には、すっかり森羅に懐いてしまっっていた。
　スエンが天を仰ぐ。
「すみません。目隠しが外れてしまって」
「親離れするまで大変ですよ」
　その日から、羽つきニャーゴとの生活が始まった。
　野草園や平原に行く森羅に始終、くっついてくる。鶏舎に入れば鶏を追い回し、山羊の放牧地では逆に追い回される。
　まだ飛べないが、小さな羽をパタパタと動かす仕草も見せ始めた。
　可愛いが成長は著しくもう森羅の身体を追い越し、最近ではスエンと見劣りしないほど大きい。
　でも甘えん坊は相変わらず。撫でろとねだり、森羅の姿が見えなくなると狂おしい声を上げて後追いする。ご機嫌なときのスリスリも本人は甘えているつもりなのだろうが、森羅にとっては体当たりに等しいので、一日が終わればぐったりだ。
　羽つきニャーゴの名前はショウとした。森の入り口まで弟に会いに来る兄の方はバン。
「三人合わせれば森羅万象。オレがいた世界では、宇宙に存在する全てのものって意味なんです」
　スエンに説明すると面白がってくれた。
　森羅には羽つきニャーゴの親になった以外にも変化があった。
　修正した原稿を読んだウトゥから返事があったのだ。