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第三章

63.じゃあ、キス……接吻を

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 森羅は、中指以外の指もスエンに絡めた。
 グッと力強く。
 さらに空いている方の手をスエンのしっかりとした腰に回す。
 若い男神では無く、自分自身が精一杯の背伸びしているような感じ。
 スエンが素直に横に座った。
 抱きかかえるような格好になって、森羅は内心で悲鳴を上げる。
(ど、どうしよう?!)
「若い男神は強引にいくことにしたのでしょう?」
 スエンが見つめてくる。
「じゃあ、キス……接吻を」
「おや?もう」
 登場人物の欲望と書き手の欲望をごっちゃにしちゃダメですよ、というようにスエンがツンと額を突いてくる。
「年上の方は余裕めかした方がいいですか?」
 森羅は俯きながら頷く。
(ああ。このままじゃあ、本当に若い男神とその好きな相手の物語じゃなく、オレと先生の物語に突入だよ)
 意識すると余計恥ずかしい。
 顎にスエンの指が添えられ、上を向かされる。
 月を背負うような形で森羅の前にいるスエンは神々しい。
(いや、神様だから当たり前なんだけれど)
 以前、神紋を付けてもらうときにキスをしてもらったけれど、あの時は無我夢中で……あれ?
 スエンは森羅の目の前で黙っている。
「どうしました?シンラ。放置ですか?」
「え?」
「若い男神が背伸びしている設定ですよ?年上がするのはここまでです」
「じゃあ、続きはオレから?」
 スエンが軽く笑う。
 森羅は膝立ちになった。
 勇気を出して顔を近づける。なのに、
「待って」
とスエンは両手で顔を押さえてくる。
「少し顔は傾けましょう?鼻がぶつかる」
「経験のない若い男神なのですから、そっちの方がいいのでは?」
「そう。全くの未経験という設定なのですね。若い男神は」
「ええ。なので、こんな感じになっちゃう」
 森羅はわざとスエンに鼻をこすりつけた。
「じゃあ、せめて口は閉じましょう。最初から半開きの口でされる接吻は興ざめです」
「開いてました、オレ?」
「ええ。パカッとね」 
 スエンの両手が今度は唇の端を押さえてきた。
 森羅はスエンの腕を押し返すようにして、彼の唇に唇で触れる。
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