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第三章
62.若い男神は可愛く甘える?それとも?
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「偶然、好きな相手に思いが伝わっていざ初夜という若い男神の話なのですが、初夜を上手くこなせるかという緊張と好きな相手に触れられる喜びが同時並行で描かれています」
「ああ。『夜明けまでの物語』。恋愛の王道作品です。まだ、恋も知らない若い頃、胸を高鳴らせて読みました」
「先生の若い頃?」
「あったんですよ。そういう時期が。今じゃあ、すっかり年寄りですが」
こんなキラキラ輝く年寄りはいないと思うのだが。
昔のスエンを想像するのは、妙にこそばゆい気分だった。
(この人は、片思いや失恋を経験してきたんだろうか?)
(オレの目の前では完璧な大人なのに)
「ふむ」
少し考え込んでいたスエンが急に森羅の手を取った。
「腹ごなしに外に行きましょう」
と言って、家を出てドルアンキの方向に向かって歩いていく。
夜空から垂れる半透明の赤い幕の手前まで行くと、先に森羅を野原に腰掛けさせた。
着いてきた茶トラのニャーゴが真後ろにごろりと横たわる。
今夜も大きな月が出ていた。
スエンが魅惑的に微笑みながら屈んで言う。
「誘って下さい」
「何をっ?」
いきなりドキッとするようなことを言う。
偽神紋を付けるためにした行為は、情であり愛じゃないと物分りのいいふりをして振る舞っているくせに、内心では、できるなら今度は二人きりでもっと凄いことをして欲しいなと思っているのがバレてしまったのかと思った。
そもそも、もっと凄いことって何だ??
「シンラが任された作品は寝室が舞台?でも、彼らはいきなりそこから始めた訳ではないですよね。どこかで出会って話をして、きっと人目を避け二人きりにもなったことでしょう。そして、ようやく寝室までたどり着いた」
「その前段階を想像してみろってことですか?」
「はい」
「えっと、オレが若い男神の役?」
「はい」とスエンは再びにっこり。今の笑顔はちょっと意地悪だ。
森羅は急激に体温が上がるのを感じながら、スエンに向かって手を伸ばす。
スエンも同じように差し出してくる。
こうなると手すら握るのが恥ずかしく、森羅はスエンの中指に手を絡めるだけで限界となってしまった。
「ふふ。若い男神のお相手は少し年上だから、精一杯背伸びしているという設定にしましょうか?」
「原作では年下だったのですが、いいんですか?」
「多少の改変は現代版にするときによくあることです。むしろ、書き手の生々しさが伝わってくるとウトゥは喜びそうな気がします。で、この先はどうするのですか?若い男神は可愛く甘える?それとも?」
「ああ。『夜明けまでの物語』。恋愛の王道作品です。まだ、恋も知らない若い頃、胸を高鳴らせて読みました」
「先生の若い頃?」
「あったんですよ。そういう時期が。今じゃあ、すっかり年寄りですが」
こんなキラキラ輝く年寄りはいないと思うのだが。
昔のスエンを想像するのは、妙にこそばゆい気分だった。
(この人は、片思いや失恋を経験してきたんだろうか?)
(オレの目の前では完璧な大人なのに)
「ふむ」
少し考え込んでいたスエンが急に森羅の手を取った。
「腹ごなしに外に行きましょう」
と言って、家を出てドルアンキの方向に向かって歩いていく。
夜空から垂れる半透明の赤い幕の手前まで行くと、先に森羅を野原に腰掛けさせた。
着いてきた茶トラのニャーゴが真後ろにごろりと横たわる。
今夜も大きな月が出ていた。
スエンが魅惑的に微笑みながら屈んで言う。
「誘って下さい」
「何をっ?」
いきなりドキッとするようなことを言う。
偽神紋を付けるためにした行為は、情であり愛じゃないと物分りのいいふりをして振る舞っているくせに、内心では、できるなら今度は二人きりでもっと凄いことをして欲しいなと思っているのがバレてしまったのかと思った。
そもそも、もっと凄いことって何だ??
「シンラが任された作品は寝室が舞台?でも、彼らはいきなりそこから始めた訳ではないですよね。どこかで出会って話をして、きっと人目を避け二人きりにもなったことでしょう。そして、ようやく寝室までたどり着いた」
「その前段階を想像してみろってことですか?」
「はい」
「えっと、オレが若い男神の役?」
「はい」とスエンは再びにっこり。今の笑顔はちょっと意地悪だ。
森羅は急激に体温が上がるのを感じながら、スエンに向かって手を伸ばす。
スエンも同じように差し出してくる。
こうなると手すら握るのが恥ずかしく、森羅はスエンの中指に手を絡めるだけで限界となってしまった。
「ふふ。若い男神のお相手は少し年上だから、精一杯背伸びしているという設定にしましょうか?」
「原作では年下だったのですが、いいんですか?」
「多少の改変は現代版にするときによくあることです。むしろ、書き手の生々しさが伝わってくるとウトゥは喜びそうな気がします。で、この先はどうするのですか?若い男神は可愛く甘える?それとも?」
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