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第三章

60.あ、そうなんだ。偽装聖婚だもんね

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「受取人が神紋をかざせば、ニャーゴの背中から荷物を取ってかまいません。神紋をかざす前に取ろうとすると、盗人と間違えて思いっきり引っ掻かれるので注意が必要です」
 スエンが神紋をかざし終わると、荷物を運んできたニャーゴは玄関前で香箱座り。
(神紋てQRコードみたいだな。ニャマゾンさん?いや、ハチワレヤマトさん?もしくはニャーゴパック?)
「じゃあ、オレもウトゥさん宛にこれで送ることができるんですか?」
 森羅は自分の手の甲の神紋を指差す。
「森羅のは偽紋なので無理ですよ」
「あ、そうなんだ。偽装聖婚だもんね」
 思わう卑屈っぽくなると、スエンが森羅の頭を軽く撫でてくる。
 言葉はないけれど、労りを感じる。
「送りたいものがあったり、逆にキ国から取り寄せたいものがあれば言って下さい。私がニャーゴ便を用意します」
 森羅が箱を外し中に運び込んでいると、家猫ニャーゴたちが次々にやってきて、外の世界の匂いをかぎ始める。
 スエンが運送ニャーゴにささみ肉をあげ始めた。お礼らしい。
「開けていいですよ」
と言われたので、一段目の箱を開けてみる。
「先生。プラムみたいなのが百個ぐらい入っています」
「それは、ウトゥが何か交換して欲しいときによく送り付けてくる手です。元は酸っぱい味なのですが、キ国で品種改良され甘いですよ。市場でも売っています。で、ウトゥの要求は何ですか?ただでこんなの送ってこないはず」
「『黒い粉よこせ』だそうです」
 感情のままに書かれた粘土板に森羅は笑う。
「じゃあ、二段目の箱は。あ、オレが書いた粘土板だ。え?数字の旗付き?」
 鋭い金属が粘土版に刺さっており、
「下に粘土板がもう一枚。数字の旗ってもしかして別注ってこと?」
「シンラ。オレの書いた粘土板とは?ウトゥと何かやり取りを?」
「仕事を貰えたんです。舞台脚本の」
 なんと、きっかけは神紋を得る最中に、ウトゥに命令されて言わされた卑猥なフレーズ。
 オレの乳首、固くなってますとか、また味わいたくて自分で掴んでいますとかあそこら辺。
 今、思い出しただけでも赤面ものだ。
「それはすごい!」
 スエンの声が弾んだ。
 これはウトゥから聞いたことなのだが、キ国はとても演劇が盛んな国らしい。常時で一日百舞台。神事ともなれば、倍になるそうだ。新作もそのペースで出せればいいのだが、舞台作家の数は限られている。だから、最近は大昔の作品を現代版に直して上演することも多いそうだ。
 文書保管が生業のウトゥの副業で、頼まれれば役者もやると言っていた。
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